| 下山第2鑑定 19/1/25 |
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| 2018年8月30日、弁護団が万年筆インクに関わる下山第2鑑定を提出。 |
| 弁護団は、下山進・吉備国際大学名誉教授による 「Mini‐X非破壊分析装置によるインク成分の元素分析」(下山第2鑑定) と 意見書 (下山意見書)
を提出した。 |
| 2016年8月、下山第1鑑定が提出された後、10月に弁護団の証拠開示請求により、石川さん宅から発見されたという万年筆で書かれた数字が添付された調書が開示された。 |
| 弁護団は、この数字のインク、YNさんが使用していたインク瓶のインク、YNさんが事件当日に書いたペン習字のインクなどについて、下山博士に蛍光X線分析による鑑定を依頼した。 |
| 蛍光X線分析は、物質にX線をあてると、含まれる元素に固有のエネルギーの蛍光X線が発生することを利用し、物質に含まれる元素を分析すること。 |
| 下山博士は、Mini‐X非破壊分析装置を使って、検察庁において各証拠の蛍光X線分析を行った。その結果、インク瓶のインク、ペン習字のインクからはクロム元素が検出された。しかし、発見万年筆の数字からは検出されなかった。 |
| 事件当時のパイロット社のジェットブルーインクにはクロム元素が含まれ、ブルーブラックには含まれていなかった。 |
| つまり、YNさんが事件当日まで使っていたのはジェットブルーであり、発見万年筆のブルーブラックではなかったということである。これは、既に分かっていたことではあるが、今度は、インクの成分分析から相違を明らかにした。 |
| 第2鑑定では、仮に、ジェットブルーのインクが入っていた万年筆にブルーブラックを入れた場合も分析している。その際も、ちゃんとクロム元素が検出されるのである。これにより、「ジェットブルーのインクにブルーブラックのインクを補充したかもしれない」
などというふざけた暴論を封じた。 |
| 下山第2鑑定は、発見万年筆はYNさんのものではないということを、インク成分の元素分析から明らかにした決定的な新証拠である。 |
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| 2018年の動き |
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| 2018年5月11日 弁護団、補充書提出 |
| 5月11日、弁護団は、自白に関する再審請求理由補充書を2通提出した。 |
| 1通は、公判での自白について、石川さんが1審段階で否認せず自白を維持した要因を、開示された取り調べ録音テープなどをもとにして明らかにしたものである。 |
| もう1通は、やはり録音テープから、石川さんの自白に任意性も信用性もないことを明らかにしたものである。 |
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| 5月14日 第36回三者協議 |
| 検察側は、堀江鑑定に対する反論・反証を検討している、また、自白関連についても反論を検討するとした。 |
| 弁護団は8月ごろをメドにスコップ関係などの新証拠を提出することを伝え、5月11日提出の補充書について説明をした。 |
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| 6月11日 袴田事件、東京高裁再審開始取り消し・棄却決定 |
| 6月11日、東京高裁第8刑事部(大島隆明裁判長)は、袴田事件の即時抗告審で、静岡地裁の再審開始決定を取り消し、再審を棄却するという理不尽極まりない決定を行った。 |
| 2014年3月27日、静岡地裁 (村山裁判長) の決定、 |
| 「 最も重要な証拠が捜査機関によってねつ造された疑いが相当程度あり・・・捜査機関の違法、不当な捜査が存在し、又は疑われる。国家機関が無実の個人を陥れ、45年以上にわたり身体を拘束し続けたことになり、刑事司法の理念からは到底耐え難いことといわなければならない。 |
| ・・・袴田に対して死刑判決が確定していることを考慮しても、袴田に対する拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する状況にあると言わざるを得ない。一刻も早く袴田の身柄を解放すべきである。」 |
| との落差に慄然とする。 |
| 新たな手法のDNA鑑定を否定する大島裁判長の言に従えば、新たな方法を用いて導き出した新証拠も否定されてしまう。狭山事件とて、対岸の火事ではないのだ。再審の闘いは全て連動していると言える。 |
| 弁護団は、6月18日、最高裁に特別抗告を申し立てた。 |
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| 7月10日 スコップに関する新証拠提出 |
| 7月10日、弁護団は、平岡義博立命館大学教授(元京都府警科捜研技官)の2通の鑑定意見書、開示された捜査報告書を新証拠として提出した。これで提出された新証拠は211点になった。 |
| 事件当時、埼玉県警鑑識課の星野技官によるスコップ付着土壌についての鑑定が行われていた。この鑑定の誤りについては、このサイトでも既に検討している。 |
| 弁護団は、2012年にも大橋意見書を提出、星野鑑定の誤りを指摘した。今回さらに、科捜研で長年土壌分析を行ってきた鑑定人の鑑定が提出されたのである。 |
| 星野鑑定は、発見スコップの土壌との比較試料について、そもそも死体発見現場の土ではなく、現場付近に穴を掘り、そこの土壌と比較し類似するとしていた。平岡鑑定は、まずこの手法そのものが誤っていると指摘した。 |
| その上で、星野鑑定の分析結果を検討し、その結論が間違っていることを明らかにした。 |
| もう1通の意見書は、発見スコップに付着していた物質に関する星野・阿部鑑定についてのものである。星野・阿部鑑定は、付着物として、「油脂、アミノ酸類、澱粉、豆類様半球物、筋肉繊維、糖類、植物片、昆虫等」 が検出されたというものである。 |
| これだけで ID養豚場のスコップとされたのだが、そもそもこのスコップ以外に何も比較対照されていない。星野・阿部鑑定は、ただ付着物があったというだけで、それ以上の意味はない。これをもって
ID養豚場のスコップだというのは暴論以外の何物でもない。平岡意見書は、このことを明らかにした。 |
| また、弁護団は、狭山市長名で弁護団に回答された「狭山市の養豚について」という書面を新証拠として提出した。 |
| これによると、1963年当時、狭山市には豚を飼っている家が948軒あった。飼育頭数も4040頭で、全農家の45%が豚を飼っていたのである。スコップに「油脂」が付いていたからと言って
ID養豚場のスコップとは断じて言えないのである。 |
| 更に、弁護団は2012年に開示された捜査報告書を新証拠として提出した。これによると、発見スコップが養豚場のものであるとの鑑定を捜査当局が求めていたことを示している。 |
| また、5月21日の時点で、「この豚舎にはかつて・・・石川一雄・・・が手伝いとして住み込んでいた」と書かれた調査報告者があった。早い段階で、犯人は
ID養豚場の関係者、そして石川さんだと決めつけられていたのである。 |
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| 8月30日 下山第2鑑定提出 |
| 上述。これで新証拠は217点となった。 |
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| 9月14日 第37回三者協議 |
| 弁護団は、下山第2鑑定、平岡鑑定について説明、今後、指紋関係や自白関係の新証拠などを提出することを伝えた。 |
| 検察は、福江鑑定についての反論を近く提出、平岡鑑定についても反論ないし反証する、下山第2鑑定についても何らかの反論、反証を準備するとした。 |
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| 12月26日 第38回三者協議 |
| 検察は、下山第2鑑定に反証を提出するとしていたが、実験も行うので数カ月かかるとした。更に、平岡鑑定についても、メドははっきりしないが年度内に専門家の反証を提出するとした。 |
| 弁護団は、検察側の反証が出されれば全面的に反論するとした。 |
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| 石川さんを先頭に高裁前のアピールが行われる。映画「SAYAMA]に続いて昨年末完成した映画「獄友」、全国で上映運動が行われている。さらに、5・23と10・31を中心にした全国集会と各地区での集会。狭山の闘いは続いている。 |
| しかし、三者協議のなんとも歯がゆい展開であることか。これだけ証拠がそろっているのだ。東京高裁も検察の悪あがきを封じ、再審開始を決定してもいいころだ。というか、断固としてそうすべき時期に来ていると思う。 |
| しかし、東京高裁をしてかくあらしめるのは・・・闘いあるのみである。 |
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