福江鑑定                             18/3/25
 2018年1月15日、弁護団が筆跡に関わる新証拠・福江報告書を提出。
1月15日、弁護団は新証拠6点 (後述) を提出した。その中に、福江・東海大学教授による 「脅迫状と上申書間におけるコンピュータによる筆者異同識別」 という報告書2通がある。
第1報告書は、脅迫状と石川さんの書いた上申書 (1963年5月21日、5月23日) との異同識別、第2報告書は、脅迫状と石川さんの手紙 (63年9月6日、10月26日) との異同識別についてである。
これは、脅迫状と上申書、手紙にくり返しでてくる 「い・た・て・と」 を対象に、コンピュータに画像として取り込み、それらを重ね合わせてズレ量 (マッチング残差) を計測したものである。
この結果、脅迫状と上申書や手紙では、同一人物が書いた場合のズレ量をはるかに上回り、99・9%別人であることが明らかとなった。
福江報告書は、コンピュータ解析を行う事により、人が行う筆跡鑑定の陥る主観を排し、客観的に結論を導き出している。石川さんの無実を証明する画期的な新鑑定がまた一つ加わった。
 2017年の動き
 2016年12月28日
弁護団は2通の筆跡・識字能力に関する鑑定書 (森鑑定、魚住第3鑑定) を提出した。
森鑑定は、森実・大阪教育大教授による 「狭山事件取り調べ音声記録の検討~国民の読み書き能力調査 (1995) との対比から」 と題した鑑定書である。
鑑定では、1955年に政府文部省が、当時15歳から34歳までの国民を対象に行った読み書き能力調査と対比させながら、石川さんの識字力を分析している。調査当時、石川さんは16歳だから調査対象の年齢にある。
その結果、石川さんの識字力は、4段階に分けられた55年調査の最も低いレベルにあるとされた。
さらに、石川さんが取り調べで書かされた供述調書添付図面の説明文字と、書かされた時の取り調べ音声記録 (録音) をもとに当時の石川さんの識字能力を分析。
促音や拗音の表記ルールが習得できていないから、警官の指導を受けながらも正しく書けていないことを明らかにし、非識字の状態にあった石川さんが脅迫状を書くことはありえないと結論づけた。
魚住第3鑑定は、取り調べのテープを分析。石川さんが警官の指導で、国語能力は徐々に発達していくが、しかし、取り調べで書かされた図面の説明文字などの筆跡が脅迫状とは異なることを明らかにした。
 2017年1月31日
弁護団は川窪第3鑑定を提出した。川窪鑑定人は、2009年に、石川さん宅から発見された万年筆は細字のペンポイント、脅迫状の訂正に使われたものは中字のものという鑑定書を提出している。
2016年10月に開示されたYNさんの兄の供述調書に添付されていたのが、石川さん宅から発見された万年筆によって書かれた数字であった。川窪鑑定人は、この数字と脅迫状を訂正した万年筆が同じものかどうかを鑑定。
その結果、数字は細字のペンポイントのもので、脅迫状の訂正に使われたものではないことが分かった。つまり、発見万年筆は偽物であり、YNさんのものではないということだ。
 1月23日 検察意見書
弁護団は、財布・手帳関係、脅迫状の宛名の <少時> 関係、5月21日付け上申書の作成過程、犯行動機、自白の変遷や経過に関わる証拠開示を求めてきた。第30回三者協議では検察は検討中としていた。
だが、1月23日、財布・手帳関係の証拠開示は関連性・必要性がないという意見書を提出してきた。これに対しては、2月6日、反論の意見書を提出。
2月1日、5月21日付の上申書に関わっていた警官の捜査報告書1通を開示。これで、開示証拠は187点になった。
しかし一方で、自白の変遷に関わるものは 「不見当」、<少時> 関係などは関連性・必要性がないとしてきた。
 2月8日 第31回三者協議
弁護団が証拠開示を要求し、検察は 「不見当」「関連性・必要性がない」 をくりかえすという攻防が続いてきた。
第31回三者協議では、財布・手帳関係について、弁護団から検察意見書に対する更なる反論書面を提出し、検察が回答することになった。
また、検察は川窪鑑定に対する反論・反証、森鑑定や魚住鑑定にも反論の方向で検討しているとした。さらに、下山鑑定にも年度内の反論・反証の見通しを示すとした。
 3月2日 流王土地家屋調査士報告書
弁護団は、流王調査士の調査報告書を新証拠として提出、これで第3次再審の新証拠は191点になった。
2015年1月に開示された証拠リストで、1963年5月5日の現場一帯を撮影した航空写真112枚が存在することが分かった。弁護団の開示請求により3月18日に開示された。
流王調査士はこの写真を分析、狭山現地での測量を行い事件当時の地形を調べた。そして、石川さんの自白調書、カバン発見時の警察官作成実況見分調書、カバン捜索報告書、取り調べ録音テープなどをもとに、自白のカバンの放棄場所、警官が最初に捜索した場所、実際の発見地点を航空写真上に特定した。、
その結果は、石川さんの自白した場所と発見場所は違うということが明らかになった。このことは、これまでもさんざん指摘されてきた。カバンの発見過程は、そのカバンが本当にYNさんのものかどうかも含めて、極めて怪しい、はっきり言えば証拠のねつ造の疑いがあった。
流王報告書は、これらを専門家として明らかにしたものである。
 5月10日 第32回三者協議
4月7日、手帳・財布関係の証拠開示を必要がないとする検察に対し、弁護団は開示の必要性についての意見書、証拠開示勧告申立書を提出。
4月27日、検察はまたもや必要性がないとする意見書を提出。5月9日、弁護団は、必要性があるという意見書を提出。
また、<少時> 関係、犯行動機、自白に至る経過関係の証拠開示を必要がないという検察 (2月1日意見書) に対して、4月24日に反論の意見書を弁護団は提出。
こうして第32回三者協議を迎えた。
財布・手帳関係について、弁護団は証拠開示を要求、裁判所は検察に検討を求めた。また、4月24日の弁護団意見書に対し、検察は、<少時> 関係、自白経過関係の開示については検討中とした。
さらに、検察は、下山鑑定、川窪鑑定、森鑑定、流王報告書などについて反論するとして、下山鑑定については反証を準備していることを明らかにした。
 7月24日 第33回三者協議
7月3日、検察は下山鑑定に対する反証の意見書を提出した。
そして迎えた第33回三者協議。
植村裁判長は、犯行動機関係の4点の証拠開示を勧告した。しかし、この間弁護団が要求してきた、手帳・財布関係、<少時> 関係、自白経過関係については開示勧告をしなかった。
 10月13日 第34回三者協議
10月9日、第33回三者協議で開示勧告された犯行動機関係の証拠3点が開示され、さらに10月30日に1点が開示された。これで191点が開示されたことになる。
弁護団は、下山鑑定提出にあわせて、荏原鑑定当時の鑑定資料や写真ネガなどの開示を求めていた。これに対し、33回協議で検察は口頭で 「不見当」 と回答。弁護団は、いかなる調査によって不見当なのかを書面で回答するように求める証拠開示申立補充書を10月11日に提出していた。
植村裁判長は34回協議で、検察に対し回答するように求めた。しかし、検察が必要性がないと開示に応じない他の証拠関係については開示勧告をしなかった。
 12月22日 後藤眞理子裁判長に交代
 2018年1月15日 堀江鑑定提出 (上記)
 1月22日 第35回三者協議
弁護団は堀江報告書、魚住意見書などの新証拠の意義について説明した。検察はこれらについて反証、反論を検討しているとした。