帰ってきた女

 同じ地獄の中で殺された二人の女がいた。
 一人は最後の一瞬が過ぎた後までも『絶対に殺されてやるものか』と思っていた。
 一人は最後の一瞬が過ぎた後までも『絶対に殺してやる』と思っていた。

 女が目覚めたのは深夜の公園だった。
 繁華街から少し離れた住宅街にある公園だ。
 深夜の公園は静かで虫の鳴く声一つ聞こえはしない。
 しかし、血の腐ったような匂いに満たされていた。
 そんな寂しい公園の片隅、公衆トイレの前で女は目を覚ました。
 女性側の入り口の所、コンクリートの土台の端にちょこん……と彼女は座っていた。
 目の前に両手を掲げてみる。
 長く細い指先、丁寧に整えられた爪、白い肌、たわわに膨らんだ胸元、長く伸ばした髪は丁寧に染色されて綺麗な栗色。くびれた腰、それから少しだけ減らしたかった無駄なお肉、几帳面に整えている陰毛が飾る女性器は、誰彼かまわずに開いてきたわりには奇麗だ。
 全てが自分の物であることに間違いは無いはずなのに、ぬぐい去れぬ違和感を彼女は覚えた。
 もしかしたら、こんな所なのに素っ裸だから、そんな事を感じるのかもしれない。
 どうして自分がこんな所にいるのか? どうしてこんな格好なのか? 彼女にはさっぱり理解出来なかった。
 思い出そうとすれば頭が痛む。
 痛みの中、半ば無意識のうちに彼女は唇とその周辺を手で拭った。
 ぬるり……とその手の甲に“何か”が着いた。
 芳しい香りを放ち、性欲とも食欲とも付かぬ、根源的な欲求を彼女に与える“何か”が手の甲にべったりと付いた。
 それをぺろり……と舐めてみれば、ゾクゾクとした快感と共に口内に甘美なる味が広がった。今までに食べたことのない味だ。なんと表現すれば良いのかすら解らない。ただただ、もっとこれと同じ物を食べたい。その欲求だけが彼女の心を満たした。
 唇の周りに着いた“何か”を手で拭い、“何か”が着いた指を必死で舐める。
 ピチャピチャ……
 奇妙な水音が無人の公園、その片隅に静かに響く。
 そんな時間がどれくらいすぎたのか? それを計る時計はどこにもないし、女自身、そんな事は全く意識してなかった。
 ただ、気づけば、彼女の口の周りには彼女の唾液しか付いてなかったし、指を舐めてもあの甘美なる味わいが口の中に産まれることもなくなっていた。
 その時、ザク……とむき出しの赤土を靴が踏む音が聞こえた。
 顔を上げればそこには驚いた顔の男が立っていた。
「なっ……なんだ?」
 間の抜けた声で、ありがちな声を上げる男。年の頃は三十を超えるか越えないか……こざっぱりとしたスーツをそつなく着こなす彼は、人は良さそうだが女には縁が無さそうな顔。
 春まだ浅い夜、風が一陣吹いた。
 その風に素肌を撫でられた女が、男の顔を見上げたまま、呟く。
「寒い……」
 ふわりと掛けられるスーツの上着。
 男の残した体温が暖かい。
「えっ、えっと……あの……」
 上着を掛けた男が言葉につまる。顔が赤い。
 女はそのコートの襟元を掴むと、自身の身体を包み込むかのように、強く身頃を会わせた。
 男の残りが女の鼻腔をくすぐり、あの欲求を彼女に思い起こさせる。
「……欲しい」
「えっ?」
 間抜け面で男が聞き返せば、女は先ほどよりも少しだけ大きめの声で答えた。
「……あなたが、欲しい」
 女がするりと立ち上がり、男へと体を向けた。
 そして、細い腕が男の首に巻き付き、有無を言わせず、唇を奪った。
 クチュリ……
 水音が公園に響く。
「んっ……くぅ……」
 真っ赤な顔で男は苦しそうに吐息をこぼす。
 そして、女は唇を男の唇から離して、言った。
「……早く……」
 ぼんやりと熱に浮かされたかのように、男は女の胸元に手を滑り込ませた。
 柔らかな乳房が男の少し乱暴な愛撫に形をゆがめる。
「あっ……」
 女が朱色に染まった吐息を一つこぼした。
 抱き合う股間に男の熱い物を感じ始めれば、女の欲求はますます強く激しくなっていく。
「欲しい……」
 また、女が呟いた。
 その言葉の瞬間、まぶしい光が生け垣越しに二人を照らした。
 どうやら、近くの民家に帰ってきた車が車庫入れを行っているらしい。おかげで通常とは違う角度でヘッドライトが公園を照らしているようだ。
 その光が男に理性を呼び戻させたらしい。
 心地よい痛みを与えていた手はその上着の中から抜け去り、恥ずかしそうな表情の頬を撫でる。
 そして、彼は言った。
「あっ、いや……あの……その……それじゃ、ホテル……行こうか?」
 その言葉に軽く頷く。
 そして、女は男の手を引き、夜の道を歩いた。
 人気の無い寂しい夜道、それは彼女にとって歩き慣れた道だった。
 毎日のように通っていた道、“あそこ”にはまだ知り合いがいるのだろうか? と、女はけばけばしいピンクのネオンを横目に見ながら裏路地を急ぎ足で歩く。
 表通りから一本細い路地に入り、更にもう一本細い道へと入ると、その建物はあった。
 ぱっと見、雑居ビルのような建物ではあるが、入り口の横に『HOTEL COOL9』の看板。
 利用したことはないが、ここにあると言う事は聞いたことがあるラブホテルだ。
 その真っ黒なスモークフィルムが貼られた自動ドアをくぐれば、そこには空き部屋を示すパネルが据え付けられてあった。
 その中から、男が開いてる部屋を一つ選んだ。
 その部屋は、ごくごく普通のシティホテル風の部屋だった。
 ラブホテルらしいところと言えば、広いベッドの上に掛かっているシーツが薄ピンクである所とその枕元にコンドームやらローターやらの自販機が置かれている事くらい。
 その部屋に入ると、女はその広いベッドの上に男を押し倒し、その腰の上にまたがった。
 驚く男の顔を女は頬を緩めて見下ろす。
「……欲しい」
 また、呟いた。
 そして、女は男の股間へと手を滑らせると堅く反り返った物をズボンの上から優しく撫で回し始めた。
 ズボン越しにも解るほどに熱を帯びた怒張、トクントクンと脈打つそれは男の生命力を感じさせた。
 そのあふれんばかりの生命力に女の下腹部が熱く疼く。
 それをジッパーの中からとりだし、女は借り物のジャケットを脱いだ。
 上気した肌に、うっすらと汗すら浮かぶ。
「ああ……奇麗だ……名前は?」
 男がうっとりとしたような声を上げた。
「名前……? 私の? 私は……ああ……そうだ……あゆ……って、呼んで欲しい」
 答えて女はペニスを握りしめたまま、腰を浮かした。
 うっすらと生えそろった陰毛、その奥ではすでに濡れそぼったヴァギナから、とろりと匂い立つ愛液が滴り落ちていた。
「……あゆ……」
 男が女の名前を呼んだ。
 それに女は頬と唇だけを緩めて見せた。
 そして、ゆっくりと腰を下ろす。
 熱い肉棒が女の媚肉を押し広げ、冷たい身体に温もりを与える。
「あっあっあっ……」
 男が間の抜けたあえぎ声を上げ、壊れた人形のようにカクカクと腰を上下に振り始める。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 その動きに合わせて、女は男の胸に手を突いて、腰を上下に動かし、応えた。
 今まで、自分が死んでいたんじゃないのか? と思うほどに、女は自分の身体が熱を帯びていくのを感じていた。
 それは、気持ちが良いとか、気持ちよくないとか……そういう物を越えた感覚だった。まるで、欠けていた物が埋められていくような充実感。
「はぁ……はぁ……」
「くぅ……んっ……んっ……あっあっ……」
 互いに言葉を交わしもしない。
 互いの荒い吐息を耳で感じ、互いの熱を性器で感じるだけのひととき。
 ろくな愛撫もなしだというのに、十二分に濡れていたそこは、男の大きく熱いものに突き上げられる度に、新たな蜜を分泌させる。
 二人の繋がっている部分からネチネチという水音が響き始め、女は口角からとろりとした唾液を一筋、細い顎へと流して落とす。
 滴った唾液が男の胸元へと落ちて弾けた。
「うっ!」
 瞬間、男が苦しげな声を上げた。
 その短い言葉が合図になったかのように、男のペニスが女の膣内なかで弾け、女の中に熱い生命の塊を吐き出した。
「くっ……ああっ……」
 女も短い声を上げた。
「はぁ……はぁ……」
 荒い吐息を上げてるのはどちらなのか? おそらくは二人とも。
 男の方はぐったりとベッドの上に寝転がったまま、けだるそうにしているだけ。
 しかし、女は身体を身もだえさせ、男の上からゆっくりと下りた。
 そして、彼のズボンとトランクスを慣れた手つきで引き下ろすと、ぽいと床の上へと投げ捨てた。
 露わになるのは彼の萎えた逸物。
 それをそっと握りしめ、女はチュッ……と軽い口づけを与えた。
 ぴくん……と脈打ち、中に残っていた物がその鈴口からあふれ出す。
「おっ……おい……」
 男が顔を少しだけ上げて、声を上げた。
「……足りない」
 女はそう応えると、パクリと、ペニスをくわえ込んだ。
 口内にたっぷりと唾液を溜めて、園田駅の中で舌をうごめかせ、彼のペニスを愛撫する。
 ジュルジュル……クチュクチュ……口角からあふれ出る唾液。あふれ出ればそれ以上に新しい唾液を口の中に滲ませて、女はペニスを攻め立てた。
「出したばっかりだし……つかな?」
 男の声と唾液の水音だけが薄暗い部屋の中にこだまする。
 そして、指先は男の陰嚢を捕らえ、優しく撫で回し始める。
 壊れ物のガラス細工に触れるような優しさと繊細さ。
 一方、お口の方は次第に激しさを増していく。
 未だ力なく垂れ下がった物を、強く吸い上げると、その竿を細めた唇で扱くように顔を上下に動かす。
 ジュルジュル……ジュブジュブ……
「はぁ……はぁ……ああ……すっ、すげぇ……でッ、でも……俺……」
 男が少し苦笑い気味の表情でそう言った。どうやら、一度抜くと、賢者タイムという奴に入るタイプの男らしい。
 聞きもしないのに、男は勝手に女に教えた。
 どうでも良い。
 亀頭から竿、そして、ふぐりへと唇を動かしたら、今度はその中に入っている小さな玉をゆっくりと口に含んだ。柔らかな袋に包まれた小さくて敏感な機関を口内でゆっくりと転がす。
「あっ……ふわぁ……こんなの……始めて……だ……」
 男が甘い声を上げた。
 それが嘘ではない事を教えるかのように、先ほどまで柔らかかった物がむくむくと再び、力を取り戻していく。
 大きく張ったカリ、先っぽからは先ほどの残り汁なのか、それとも新たにあふれ出した我慢汁なのか、それともそれらが混じった物なのか、よく解らない液体がとろりとあふれ出し、女の鼻腔をくすぐった。
「勃った……」
「あっ……ああ……あゆの愛撫が……すげーから……」
 男の声を聞きながら、女は彼の陰部から唇を離した。
 唾液に濡れた唇をぺろりと舌なめずり。そして、男の下腹部にまたがると、再び、ペニスを握りしめ、自らのヴァギナに受け入れる。
「ふわっ……ああ……」
 甘ったるい声を男が上げた。
 ゆっくりと……また、腰を動かし始める。
 男も同様に腰を突き上げ始めた。
「はぁ……はぁ……」
 甘く切ない吐息が薄暗い部屋の中に響く。
「あゆ……すげぇ……おまんこ、最高すぎる……ああ……」
 男が何かを言っていた。
 しかし、女は何も聞いては居なかった。
 女を満たしているのは男のペニスとそれが女の身体に与える熱だけ。
 冷えきっていた体に熱が戻ってくる。
「あっあっあっ……」
 腰を動かす度、女の口から甘い声がこぼれる。
 男の胸の上に手を突き、腰の動きをますます速くすれば、その声のトーンも激しさを増していく。
 クチュクチュ……ネチャネチャ……二人の身体が繋がった部分からますます濃厚な蜜の音。それは女の中からあふれ、男のペニスを伝って流れ落ち、薄ピンクのシーツの上にシミを作るほど。
 そして、また、男が切な声を上げた。
「うっ!? くっ!!」
 どくん……どくん……二度目の射精。
「はぁ……はぁ……こんなにいいセックスは始めて……」
 男が寝言のような口調で呟いた。
 しかし、女は小さな声で首を振った。
「……もっと……」
「えっ?」
 素っ頓狂な声が聞こえた。
 それを無視するかのように男の上から下りて、女は今度はたわわな乳房で男のペニスを包み込んだ。
 柔らかな巨乳がペニスを包み、その谷間に濃厚な唾液を女は流し込む。
 クチュクチュ……先ほどまでとは違うトーンの水音が響き始める。
「おっ……おい……三回目は無理だって……」
 男の言葉を無視して、女は乳房での奉仕を続ける。
 柔らかな乳房を両側から押さえつければ、それは彼女の位のままに形を変え、男のペニスの弱い部分を的確に刺激する。それはたとえ、男の物が力なく垂れ下がり、そのサイズを半分以下にまで小さくなってしまっていたとしても……
 小さく萎えたペニスを両側から乳房が包み込み、そのカリの先端にこりこりに勃起した乳首がこすりつけられる。
 女が滴らせた唾液が潤滑油となって、女が手に力を込める度に柔らかな乳房の中でにゅるにゅるとペニスを滑らせる。
「あっあっ……」
 男が切なそうに声を上げる。
 それを無視して、乳房による奉仕を女は続ける。
 乳房で愛撫しただけでは足りないのならば、手も使い、舌も使い、口も使う。
 竿を乳房で扱いて、亀頭を口で吸い、尿道を舌で舐め、指先で袋を撫でる。
 次第に力を取り戻していくペニス……
「……勃った……ね?」
 女はそう言うと再び、男の上にまたがった。
 力を込めてペニスを握り、その上にまたがる。
 膣穴からは先ほど出された男の物が、とろり……と一筋の糸を引いて滴り落ちた。
「あ……ゆ……」
 男の声に微かな恐怖が混じった……ような気がした。
 その怯えが女に更なる興奮と快感を耐えた。
「ふふふ……素敵な表情……溶けちゃう……」
 そう言ってぺろりと女は舌なめずりをして見せた。
 そして、また、ペニスをくわえ込む。
「ふわっ!?」
 甲高い声で男が鳴いた。
 また、女が腰を浮かし始める。
 悲しいかな、いくら男が女に言いしれぬ恐怖を感じていようとも、柔らかく、熱く、そして、蜜をたたえた媚肉に包み込まれれば、男の物は主に甘い快感を与え、その快感に反応するかのように腰が蠢き始めてしまう。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 荒い吐息はどちらの物とも付きはしない。
 そして、先ほどよりも長めの時間が過ぎた。
「うっ……!!」
 また、男の短い声と共にペニスが彼女の中で弾ける。
 今度は女は声も上げず、ぶるっと数回身体を振るわせただけ……
 余韻に浸るかのように女は静かに目を閉じる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 男は相変わらず、荒い声を上げていた。
 そして、女はまた、男の上から下り、ペニスを咥える。
「まっ、また……?! やっ、休ませて……」
「……私もあの時、そう言ったの……」
 少しだけ何かを思い出した……ような気がした。
 そして、また、頭が痛む。
「えっ?」
 女の告白に、男は素っ頓狂な声を上げた。
「……うふふ、どーでもいいかぁ……? そんな事……」
 少しだけ笑って、パクリ……と女はペニスを咥えた。
 その痛みをごまかすかのように笑みを浮かべ、女は精液が着いたままのペニスをパクリと咥える。
 口の中に精液特有の香りと味が広がっていく。
 男の顔にチラリと見やる。
 何かを感じ取ったのか、その顔には先ほどよりもはっきりとした恐怖の色が浮かび上がっていた。
 四度目は無理だろうか? そもそも、男の方が怯えてしまっているのでは、勃つ物だって勃ちはしない。
 立たせる事は諦めるも、女は男の上へとまたがる。そして、濡れそぼったヴァギナを彼の萎えた物の上に押し付けた。
 もちろん、それが中に入ってくることはない。
 入り口、濡れて広がったラビアに柔らかい物がこすりつけられるだけ。
 そのような行為にすら女は甘い快感を得ていた。
「はぁ……はぁ……あっあっあっ……」
 女の腰の動きが次第に早さを増していく。
「うっ……つっ……さっ、あゆ……ちょっと……辞め……かっ!? あっあっ、ぐぅ!!」
 一方、男の方は硬い恥骨に局分全体をこすりつけられているからだろう、女が腰を動かす度に、顔をしかめ、苦しそうな吐息を漏らす。
 その顔を見下ろして、女はにまぁ……と頬と目元を緩めた。
 じわっと自身のヴァギナから愛液があふれ出るのも感じた。
「……ああ……いい……凄く……」
 夢見心地に女は呟き、ますます、腰を強く振り始めた。
 男の胸に押し付けていた手を離し、自身の胸へと押し付ける。
 先ほど垂らした唾液に濡れた乳房、それを強めにもみほぐす。
 しびれるような快感が女の乳房と股間から全身へと広がる。
「あはは……可愛い顔……ねえ、怖いの?」
 うっとりとした表情で男を見下ろし、女が呟く。
 男は怯えきった表情で首を左右に振った。
「あはは……怖いんだ? そぉ? 私も、怖かったなぁ……でも、もう、今は何も怖くないの。あなたも怖くないの……ねえ? 気持ちいいよぉ……? 柔らかいおチンポがクリに当たって、それに、あなたの顔も……凄く素敵……どうしてかは解らないけど、見てるとゾクゾクする」
 男の上で腰を振りながら、寝言のような口調で女は囁く。
 その声に男の顔はますます恐怖に歪む。イケメン……ってほどでもないが、比較的整っていた顔は涙に濡れ、額には冷や汗、涎まで垂らして、ずいぶんと間抜けな物に変わっていた。
 そして、その身が女の下でくねくねと蠢く。
 足は掛け布団を蹴り、手はシーツを握りしめる。
 その手を女が握りしめる。
「ああ……逝きそぉ……逝く……いっ、逝く……くっ……あっあっあっ!!!」
 絶頂……その瞬間――
 ゴキンッ!
 嫌な音がした。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
 同時に響く間抜けな悲鳴。
「あっ……折れちゃった」
 正確に言えば、握りつぶしてしまったようだ。
 彼の手首は二本の骨も腱も筋肉もひとまとめになって、女の拳の中に納まっていた。
「あががっ、がががっ、がっ、おぉぉ……腕、腕が!!??」
 叫ぶ男を見ていると、不思議と笑えてきた。
「あはは……いい声……その声だけで逝っちゃいそぉ……」
 滑稽な男の泣き顔を嘲笑いながら、女は握りしめた腕を無造作に捻った。
 ブチン!
 軽い音と共に手首から先がちぎれて落ちる。
「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「くんっ!?」
 ぷしゃっ!!!!
 男の悲鳴と共に女の膣穴が収縮し、中に溜まっていた愛液を男の腹の上に吐き出した。
「あはっ……あはは……逝っちゃったぁ……」
 うっとりとした表情でそう言うと、女は自身の下で暴れる男の首を無造作に掴んだ。
 ぐいっ! と軽く力を込めただけで、骨がミシミシと軋む。
「かはっ!?」
 男がうめき声を上げた。
 そして、ぴゅっ! ぴゅっ! と二度ほど、男のちぎれ飛んだ腕から血がほとばしる。
 薄ピンクのシーツの上に射精したかのようなシミが刻みつけられた。
 芳しい血の香。
 子宮が疼き、心臓がドクドクと脈打ち、全身から汗が噴き出す。
 頬は朱に染まり、乳首とクリトリスは痛いほどに勃起して、ヴァギナは壊れた蛇口のように新しい愛液をあふれ出させていた。
 そして、女は無意識のうちに手にしていた男の手首を囓っていた。
 がぶりっ!
 皮膚が破れ、血が口の中、一杯に広がった。
 男の喉を掴んだ手に力がこもる。
「がっ!!??」
 男がまた悲鳴を上げた。
 女の手が男の首からするりと離れた。
「かはっ!? ぐぇっ!? げっ! げほっ!! ごほっ!!」
 男がむせる。
 そんな事はお構いなしに、女の手が彼女自身の股間へと伸びた。
「はぁ……はぁ……」
 甘い吐息が女の唇からこぼれ落ちる。
 男との交わりであふれんばかりに濡れていたそこは、男手を囓る度にヒクヒクと痙攣を繰り返し、小さな絶頂の細波さざなみを全身へと広げていた。
「美味しい……気持ちいい……美味しい……気持ちいい……」
 あむっ! ごりっ! ぐちゃ……ピチャ……
 血は甘く、肉には旨味がたっぷり。かじる度にパキパキと口の中で骨が砕ける度、骨髄の旨味が口いっぱいに広がる。
 その全てが媚薬のように女の身体を熱くさせた。
 男の手をみながら、しとどに濡れた股間をまさぐる女……
「ひっ!?」
 それを見上げる男には悲鳴を上げることすら出来ない。
 もちろん、逃げることも出来やしない。
 彼に出来るのは、血をあふれ出させて止まらぬ右腕を握りしめて、カタカタと歯を鳴らすことだけのようだ。
 否、もう一つ、彼には出来ることがあったようだ。
「あはっ、勃っちゃったんだぁ?」
 ぺろり……と男の手首を完食してしまった後、女は自身の股間の下で男の物が堅く怒張していることに気づいた。
「いやっ、違う……嘘だ……そんな事……!!」
 涙と涎と鼻水と、それから女が食ってるうちにまき散らした血を顔に受けたのだろうか? 食欲を誘う赤い色の液体を滴らせながら、男は首を何度も左右に振る。
 その顔に女は屈託のない笑みを浮かべて見せた。
「いいよ〜愛しながら、食べてあげる。だぁいすき」
 そう言って女は腰を浮かせる。
 何度の絶頂を味わったのか、数えることすら億劫なほどに絶頂を繰り返したヴァギナに女は男の萎えないペニスを押し付けた。
 そして、女はふと、思いだしたかのように言った。
「名前……なんて言うの?」
 カタカタと震える男に、答えることは出来ない。
「そっ? まっ、イッか♪」
 そして、女はペニスを握って、自身のそこに押し付けると、ゆっくりと腰を下ろしていく。
 ぬぷぬぷ……
「ひっ!? ふわぁぁぁぁぁ!!!!」
 今までは快感神経がその機能を止めていたのではないのか? と思うほどの圧倒的な快感。悲鳴にも似た声を女は上げながら、びくびくと身体を振るわせる。
 そんな女とは対照的に男はガタガタと震える唇と合わない歯の根で声を絞り出す。
「嫌だ……辞めて……許して……殺さないで……食べないで……」
「はぁ……はぁ……はぁ……凄いの……溶けちゃうの……頭の神経が、焼き切れたかと思ったの……」
 うわごとのように女は言った。
 そして、男の顔を見下ろして、彼女は言葉を続けた。
「食べながらするのがこんなに気持ちいいなんて……始めて知ったよ、ありがとう。そして、頂きます」
 そこまで言うと、女は男のペニスを受け入れたまま、ゆっくりと、男の身体を抱き締める。
 体温調節とは違う意味で流れる汗で男の身体は、ねっとりとナメクジのように濡れていた。
 火照った身体を冷ますために流れる汗で女の身体もまた、ねっとりとナメクジのように濡れていた。
 クチュクチュ……と言う水音は二人が繋がった部分ではなく、全身から響き始めていた。
 そして、大きく口を開くと――
「あむっ♪」
 ――女は男の首をパクリ……と囓った。
 半分ほどの太さになる男の首、噛み跡からはひゅーっひゅーっと食う気の抜ける音……そして、首の太い動脈からはドビュッ! ドビュッ! と脈動に合わせて、鮮血がほとばしり、女の真っ白な肌を真っ赤に染め上げた。
 それでも、彼のペニスは硬く怒張したままであり、女が男の上半身を食い終わるまで、それが萎えることはなかった。

 男の身体を奇麗に処理したら、女は日が昇るよりも先にホテルを後にした。
 エントランスからではなく、窓から。
 窓の内側には目張りがなされていたが、クレセント錠を外せば、簡単に開いた。
 窓の外は夜明け前の薄暗い空。
 ひんやりとした風が火照った身体に心地が良い。
 五階建ての最上階だったが、真下は駐車場で、車も皆無だから飛び降りられるような気がした。
 実際、トーンと飛び降りたら、足首まで群青色のアスファルトにめり込むほどだったが、どこも痛くなかった。
 人を殺して、食ってしまった事、ついでに使用者のいなくなったズボンとジャケット、オマケにお財布を持って出て来た事への罪悪感は不思議と抱く事はなかった。
 ただ……
(掃除するの、大変なんだろうなぁ……)
 って事への不思議な罪悪感だけを、部屋を血まみれにしてしまった女は覚えていた。
 男が残したズボンと上着、それから靴を履いて女はふらふらと街を歩く。
 ズボンも上着も靴もぶかぶか。
 しかも、シングルジャケットの下は全裸。
 ちょっとした痴女の格好、夜明け前のこの時間帯だから良いような物の、後、二−三時間もすれば人通りも増えてくる。
 しかし、着替えるにしても、この時間帯に開いてる服屋なんてのもない。
 そこで女は自宅アパートへの道を歩み始めた。
 女のアパートはここらからバスで三十分ほど行って、更に十五分ほども歩いたところにある、郊外の小汚いアパートだ。安さだけで選んだ物だから、便利の悪い事この上ない。
 普段ならバスを待つところだが始発までにはずいぶんと時間があるし、この格好で待つのもはばかられる。
 仕方ないから、歩いて帰る。
 どのくらいの時間が掛かるのだろうか? と思うと、それだけで、足が痛くなる気がした。
 しかし……不思議と足は痛くならなかったし、時間も思ったよりかは掛かっていない。
 夜明け直前、微かに明るくなり始めた光の中、女は自宅のアパートを見上げていた。
 築三十年、鉄板作りの外階段はサビだらけで、ヒールで上がると恐ろしく大きな音がする。だから、バイトに行くとき等はヒールのないパンプスやスニーカーで出掛けることも良くした。
 そんな自宅アパートを女は久しぶりに見上げていた。
(久しぶり? どうして……? あれ?)
 考えると、ズキン……と頭の奥が痛くなった。
 何かを思い出そうとしている……そんな気がした。
 思い出そうとすれば頭が痛む。
 しかし、思い出せないままだと、不安。
 女はくらくらと痛む頭を抱えながら、さび付いた外階段をゆっくりと上がり始めた。
 階段を上がりきった一番手前が女の部屋だ。
 そのドアノブを掴んで、少し強めに力を込める。
 バキンッ!
 ドアノブがねじ切られ、鍵の掛かったままのドアが開いた。
 長らく締め切られていたのだろうか? 部屋の中がやけにカビ臭い。
 薄暗く狭い部屋。フローリングの上に置いてあるのは、小さめのパイプベッドとテレビ、大きな姿見、それから本棚……分厚い靴下や冬物のセーターなんかも無造作に打ち捨てられていた。
 懐かしい我が家、パイプベッドの端っこに座ったら、ホッと一息ため息を吐いた。
「やっと帰ってこれた……って……あっ……れ……?」
 無意識のうちに呟いた言葉に、女自身が首を傾げる。
 いつから家に帰ってないのだろうか? そもそも、今日はいつ? どんな服を着て出掛けてた? 夜明け直後だというのに、ずいぶんと暖かい。こんなに暖かかったか?
 疑問がわき上がる度に頭がずきずきと痛む。
 誰かとっていた気がする……それも嫌々……
「いたっ!!!」
 そのザマを思い出したとき、女の頭が割れるほどに痛んだ。
 ブンッ! と頭を振って、疑問とそれに付随する痛みを女は追い出す。
 そもそも、彼女が嫌々セックスするのは珍しいことじゃない。
 バイト先はいわゆるファッションヘルス。建前上本番行為セックスはしないことになっている。しかし、チップの上乗せがあれば“こっそり”やるのが公然の秘密になってる、そう言う店だ。
 ろくな物じゃないのは解ってはいたが、生活のためという奴。
 両親は離婚済みで、女は母親の方に引き取られた。
 父親はいくらかの金を定期的に振り込んでいるようだが、その大半は母親の遊興費だ。大学への学費すら、自分で手続きを取って、学資ローンを組んだ。そのローンすら、危うく母親の酒代と男に貢ぐ金に化けるところだった。
 そんなクズから逃げるために始めた一人暮らしではあるが、もちろん、仕送りはゼロ。父親からの養育費も高校を卒業した時点で止まってしまった。
 金は全く足りていない。
 そこで、手っ取り早く稼ぐために始めたのが、このアルバイト。
 だから、セックスを楽しいなんて思ったのは数えるほどしかない。
(今日のは楽しかったな……あんな凄いのは始めて……)
 男の間抜けな顔と悲痛な叫び声、食む度に広がる血の味はとろけるほどに甘美、最後の生命力その物のような精液が子宮を満たし、絶命してもなお勃起し続けるペニス……それを思い出しただけで頭がくらくらするような快感。
「はぁ……ああ……したい……」
 トロン……と膣から熱い液体があふれ出るのを感じ、女はベッドの上に倒れ込んだ。
 無造作にジャケットの中へと手を滑り込ませれば、そこには素肌の乳房。つんっ! と勃起した乳首を指先でこりこりと弄びながら、女は自らの乳首を強めに鷲づかみにした。
「くっ……んっ……」
 そして、股間に手を滑り込ませる。
 男物のズボンは女にはずいぶんと大きめ、一杯に占めたベルトを少し緩めれば、その中にするりと手が滑り込んだ。
 丁寧に整えたヘアー、その奥にある“商売道具”は情事の熱を未だに残して、触れれば熱いほど。
 そこをゆっくりと上下に撫でているだけで、内側からとろり……と熱い物があふれ出てきた。
「はぁ……はぁ……」
 パイプベッドの上に突っ伏して、女は身をよじる。
 指が蠢く度に心地よい快感が下腹部から脳みそへ、脊髄を取って駆け上っていくのを女は感じた。
 しかし、その快感もあの時のそれに比べれば児戯以下の代物に過ぎない。
 優しく弄れば物足りない。
 激しく弄っても快感よりも痛みの方が強くなる。
 それでも女は強くするしか術を持っていなかった。
 男を良くする方法は知ってても、自分で自分を慰める術を知らない女だから。
「はぁ……はぁ……足りない……足りない……」
 呟きながら、何度も身体をまさぐる。
 乳房を潰れるほどに強く鷲づかみしても、膣が裂けるほどに強く指を押し込んでも、快感は高まらず、痛みと切なさだけが募るばかり。
 そして、同時に同じことを誰かにされた記憶が、頭痛と共に蘇る。
 ぎぃ……
 軋む音を立てて、ドアが開いた。
「えっ?」
 顔を上げる……と、茶髪姿の青年の姿があった。見覚えのない顔。幼く見えるから……高校生か、大学一年位だろうか? 玄関スペースと寝室兼用の居間とを繋ぐドアの所に彼は間抜け面を晒して立っていた。
 どうして……? と思ったが、同時に自身がドアノブをねじ切った事を思い出した。
「……警察……呼ばれたくなかったら……こっちに来て……」
 女の口がそう動いた。
「あっ、いや……ドアノブがねじ切られてたから……ちょっと、気になって……」
 震えるような声になってるのは、罪悪感だろうか?
 どうやら、ドアノブがねじ切られてる事に興味を覚えて覗き込んだら、奥から女のあえぎ声が聞こえてきて、いても立ってもいられずに覗きに来てしまったらしい。
 慌てふためき説明をする男に向けて、ひと言、女は言う。
「……座って……」
 青年にそう命じると、彼はベッドの下、床の上にぺたんと正座をした。
 説教でもされるとでも思ったのだろうか?
 バツが悪そうにうつむいてるのが可愛らしい。
 それでも、女の裸が気になるのか、彼はパイプベッドの端っこにちょこんと座ってる女に向けて、ちらちらと控えめな視線を何度も投げかけてくる。
 そんな青年を、女は――
(美味しそう……)
 ――と思う。
 一見、遊んでる風に見える彼は、しようと女が言えば喜んで抱きついてくるだろう。後は昨夜の男同様にすれば、あの得も言えぬ快感を得られるはず……部屋が汚れてしまうのは困るけど……かと言って、今からホテルへ……なんて言い出すのも、不自然か……? そー言えば、実家はいつも汚れてたっけか……? 母は何にもしないし、女が何かをすれば、なぜか怒られたし……
 とりとめの無い事を女は考える。
 その間も男を求めて彼女の膣は濡れ、甘美なる血を求めて喉は渇く。
 そして、やおら、女は口を開いた。
「この辺に……住んでるの?」
「とっ、隣の部屋……引っ越してきて、ずっと無人だったから、てっきり……誰も住んでないと思ってた……」
「隣? どっち? 左はサラリーマンで……右? 右隣は今年卒業するって……女の人で……」
「だから、その人の後だと思う……俺、今年、大学に入って……」
「アレ……卒業式、あった?」
「卒業式って……もう、四月だよ……二十四日……」
「……うそっ……」
 履修表を出してない!
 最初に心に浮かんだのはそれだった。
 次に思ったのは自身がいままで何をしていたのか? と言う疑問。
 年度末の認定試験を受けたのは覚えてる。それの結果が出て、一応、必要な単位は全て取れてた事に安堵した事も覚えてる。
 それから春休みは毎日バイトをしてて……それで……それで……
「痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ!!!!!」
 そこまでで頭痛がまた女を襲う。
 今までにはない痛み。頭をハンマーで何度も、何度も、何度も、殴れてるような痛みが女を襲う。
 女は目の前に見知らぬ男が居る事も忘れて、ベッドの上でのたうつ。
 頭をひっかく。
 茶色く脱色した髪が抜けて、頭皮から血が滲む。
「だっ! 大丈夫!? きゅっ、救急車、呼ぶ!?」
 男の慌てた声が聞こえた。
 そして、同時に男の暖かな身体が女の身体を包み込む。
「いっ、今、救急車呼ぶから……」
 そう言って、男はポケットからスマートフォンを取り出そうとしているのが見えた。
 少し、切羽詰まっている顔が可愛い。
「だいじょう……ぶ……」
 そう言って、女は男の身体を抱き締め返した。
 暖かい体温、芳しい雄の香り。
 そして、カタン……と音を立てて、スマホが落ちた。
「このまま……で、いて……」
 女が囁くと男の両手に力がこもった。
「あっ……ああ……」
 そう言って貰えると、少しだけ心が落ち着き、頭痛も和らぐ。
「ああ……楽になってきた……ありがとう……」
「……ううん……」
「いただきます」
「えっ?」
 カプッ……女が男の首に噛みついた。男の首に噛みつき、その肉を半分ほど喰らえば、男の首がぽろりと床の上に落ちた。
 どうして……?
 大きく見開いた目とぽかんと開いた口がそう言ってるような気がした。
 ぴゅっぴゅっと血を吹き出しながら、青年の頭がコロコロと転がった。そして、崩れ落ちる男の身体……
 その体を床の上に寝かせて、女は彼の上にまたがった。
 目の前には愛しい男がきょとんとした顔で女の顔を見ていた。その顔を横目で見ながら、女は男の首からあふれ出る血をすすり始める。
 残念な事に、この男のアレは最後に勃起するような事はなかった。
 それでも自分で自分の割れ目をまさぐりながら食事をすれば、普通に自慰をするよりかは遙に強い快感を得る事が出来た。
 そして、その頭痛と快感と血肉の甘美なる味の中、女はゆっくりと思い出していく。
「……そうだ……私、レイプされて……殺されたんだ……」
 もう、頭痛は消えた。
 そして、チラリと横目で捉えた姿見に、白い肌に返り血を浴びた自分の姿が映っていた。
 その額には太く長い二本のねじれた角……
 その横顔を見やり、女は思う。
(……そっか……私は犯されて、殺されて、喰われて、殺して、喰らって……鬼になったんだ……)
 そして、女は男の肉を食み、骨をかみ砕き、血をすすりながら、呟いた。
「まっ……イッか……」
 それよりも彼女にとって大事なのは、この男がばらまいた血の後片付けであり、それよりも大事なのは彼のとろけるような血肉を味わう事だった。
 それと、もう一つ……
「あの子……大丈夫だったのかなぁ……?」
 あの時、最後の瞬間を看取ってくれた彼女、せめて命だけは助かっていて……屍肉を食む鬼はそう祈らずには居られなかった。

 そして、厳はこの日から数日後、藤乃から驚くべき話を聞く羽目になる。
『あの人! ほら、風俗で働いてて、行方不明になってた三年生! 帰ってきてるって!!』
 

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