秋祭り(4)

「……どーしてくれるんだよぉ……」
 そう言った伶奈のオーバーオール、その右膝には大きな穴が空いていた。
「どーしてくれるわけ?」
 そう言った美紅のジーパン、その左膝には大きな穴が空いていた。
 そんな二人が、屋台が並ぶ参道の端っこ、大きな桜の木の下に座る穂香を追い詰める。彼女の右膝には大きな擦り傷、つーっと血の跡が一筋垂れているのが痛々しいが、少女達は余り意には介していなかった。
 怒りの方が大きい感じ。
 特に伶奈は自前のお小遣いで買った奴で、しかも、来て外出するのはこれが初めてなんだから、怒らなきゃ嘘って奴だ。ちなみに七千五百三十八円、税込み。割と勇気のいる買い物だった。
「とっ、とりあえず、お金はない」
 冷や汗を浮かべてる穂香がそう言うと、伶奈と美紅はほぼ同時に声を上げた。
「「知ってるよ!!」」
「じゃっ、じゃあ、あれだよ、ほら、伶奈チの方は穴の所につぎあてしたら良いと思うよ、皮でさ、ダークブラウンの奴。合皮で良いから、大胆に大きめのパッチを貼り付けたらちょっと格好良くなると思うんだよね。後、ミクミクの方はいっそのこと、カットオフに加工しちゃうとか……ね? ちょいエロで良いと思うんだよね! 私がするから! 許して!」
「なんで二人で対応が違うのよ?」
 尋ねたのは一人他人事の妖精さん、伶奈の頭の上に乗っかってくつろぎながらの発言だ。その妖精が居るであろう頭上をちらりと一瞥した後、伶奈が通訳したら、穂香はあっさりと言ってのけた。
「二人のキャラ」
「どう言うキャラだよ……あと、片っ方だけカットオフって、なんか、中二病っぽい……」
「良いじゃん、半年で中二だよ? 私たち」
「……まあ、確かにそうだけど……後、寒いよ?」
「おしゃれは我慢だって、テレビで言ってたし……」
 そう言って穂香が一端言葉を切れば、美紅は鸚鵡返しに尋ね返した。
「言ってたし?」
 そして、ミニ気味のキュロットスカートに生足、よく見れば太ももに鳥肌が立ってる少女が言った。
「私は今現在、寒いのを我慢してる」
 座ってる少女が控えめな声で言った次の瞬間、田んぼの稲穂がざざざ……とこすれる音が響く。
 左の膝に鉤裂きを作った少女はぶるっとかすかに身震いをさせた。
 そして、震えた少女は言う。
「……ああ、実践してるんだね……」
 と、そんな話をしている穂香と美紅を横目で見つつ、伶奈はすーすーしている膝をどうした物かと少女が考えていた。すると、そこにひょこっとアルトが頭の上から顔を覗かせ、伶奈に尋ねた。
「それで良いの?」
「……なんか……気が抜けた。北原さん、あれで意外と器用だし、直してくれるんなら、それで良いや……って、ことにする」
 尋ねるアルトに軽く肩をすくめて答えると、アルトはクスッと軽く頬を緩めて言った。
「……自分も手芸部なんだから、自分でやれば良いのよ」
「アルト」
「何? また、暴力に訴える気?」
「……私をなんだと思ってるんだよ……違うよ。私は最近解ったんだよ」
「何が?」
「好きな事と上手な事って違うんだなぁ〜って……」
「…………一つ、大人になったわね…………」
 あきれかえっている妖精の声は聞こえないふりをしつつ、少女は遠くへと視線を向ける。古いけど大きな本殿の方には人が集まってきてるようで、そろそろ奉納舞が始まりそうな雰囲気。
 そろそろ急いだ方が良いと思うのだが……
 思いながらも、少女はぽつりと呟いた。
「急がば回れ……」
「……生き方が雑な貴女の友達に言いなさいよ」
 頭の上でアルトが呟いたけど、やっぱり、聞こえないふりをした。

 結局、破れたズボンは月曜日から手芸部で穂香が手直しをするという事で一件落着……なんだろうか? 伶奈は生地も穂香が捜してくれるって言うから、ひとまず納得しているけど、カットオフされる運命の美紅はイマイチ納得がいかない感じ。
「私もつぎあての方が……」
 破れた膝小僧を見ながら、美紅が言ったら、実は朝からミニのキュロットスカートは失敗だったと後悔しきりの穂香が応える。
「えぇ〜カットオフが良いよ、カットオフ。そして、一緒に真冬に生足出して震えようよ!」
「伶奈ちゃんも一緒に出すなら、良いよ」
「飛び火させないでよ! だいたい、ストッキングかタイツ履けば良いじゃん……寒いなら」
「男受けを狙うならニーソも良いわよ、ニーソ」
「……――ってアルトも言ってるけど……あざといし、ニーソックスってそんなに暖かくないじゃん」
 美紅の言葉に伶奈も苦笑い。そして、伶奈がその苦笑いを崩さないままにアルトの言葉を伝えれば、穂香はきっ! と伶奈の方へと体ごと顔を向けて言った。
「生足魅惑のマーメイドだよ!?」
 ほとんど怒られるような感じ。なんで怒られてるのか、不思議に思う伶奈の頭の上で、アルトが静かに言った。
「……寒くなったらマーメイドだって冬眠するわよ……魚類なんだから」
 と、そんな感じの話をしながらやっているのは、穂香の足の治療だ。擦り傷程度ではあるが、消毒くらいはして絆創膏くらいは貼っておこうって話になった。美紅が持っていた消毒薬のスプレーを吹いて、美紅が持っていた大判の絆創膏を貼り付ける。幼い頃、走り回っては素っ転ぶ子供だった美紅に親が持たせて以来、なんとなく、鞄の中に入ってないと不安になるそうだ。
 ちなみにやってるのも美紅で、やられてるのは穂香。
「貴女は?」
 アルトが尋ねた。
 そして、少女は、足下、治療を受けてる穂香から、真っ青な空へと視線を上げて答える。
「見守ってるんだよ……」
 そんな少女にアルトが言う。
「……黙れ、役立たず」
「うぐっ……」
 そんな感じで貴重なお時間を潰す事十分少々。もうヤバいんじゃないかと思うけど、慌ててまた転んだら冗談ではすまないので、のんびり、慌てずに参道を本堂へと向かう。
 参道のどん詰まりには数段の階段。それをトントンと駆け上がったら、結構広い境内だ。そこにもいくつかの屋台が立っていて、それを見て歩く人たちで結構な人混みが出来ていた。はぐれそうなほどとまでは言わないが、まっすぐに歩くのは難しい程度の人混み。その中を縫うようにさらに奥へと進む。
 蓮の母から聞いた話だと、巫女舞は境内の一番奥、本殿の中で行われるらしい。
 人混みを縫うように一番奥にまで進めば、そこにはまた、短い階段があった。
 そこをトントンと四人は一気に駆け上がる。
 一番上にまで上がると、すでに巫女舞は始められているようだ。雅楽の特徴的な笛――龍笛――の音が本殿の外にでまで聞こえていた。
 本殿の中にはご近所の人か氏子の人達だろうか? ちょっとおめかしした感じの人たちが椅子に座って厳かに座っていた。その人々の中には先ほどまで伶奈達の対応をしていた蓮の母も見える。
 そして、そのさらに奥では……
「あっ! 蓮チだ!」
 めざとい穂香の声に伶奈は反射的に顔を上げる。
 観客(と言って良いのか悪いのか解らないけど、ともかく、見ている人)が座る椅子の向こう、鏡や榊なんかが飾り付けられている祭壇との間で踊っている巫女服姿の女性が二人。少し年かさの女性と共に見事な舞を披露しているのは、見まごう事なき南風野蓮だ。
 棒状のハンドルに沢山の鈴が付いた物――神楽鈴と言うらしい、後で聞いた――を右手に、金色の扇を左手に持って、ゆったりとした雅楽の調べに会わせて、彼女らは踊る。
 動き自体は単純な物だ、と伶奈は思う。
 雅楽の音に合わせ、二人が円を描くようにくるくると何回か回ったら、動きを止めてる。そして、左手に持った扇子をまずは左から右へ扇ぐように動かしたら、神楽鈴を二回しゃんしゃんと鳴らす。それから今度は扇を右から左に動かし、また、鈴を二回。そして、今度は先ほどとは逆回りに何回か回って、動きを止める。また、扇を左から右に動かし、鈴を二回、右から左に動かして鈴を二回。
 これを何回も繰り返す。
 だけど……と言うべきなのか? それとも、だからこそ……なのか? 二人の動きは優雅で洗練されていて、歩の足の出し方、扇を振るう指先、鈴を鳴らす手、視線の動きまで神経が行き届いているようで、一分の隙も見当たらない。その隙のない動きが二つ、一切の狂いもなく、ぴったりと合わさり、動き続ける。
 それだけでも緊張感に息を忘れるほどの物であった。しかし、何よりも伶奈の目を捉えたのは、舞う度に揺らめく二人の髪だった。
 蓮の髪は色素が薄くて細く、ぱっと見は茶色っぽく見える。その色素の薄い髪は大きく撮られた入り口の開口部から差し込む秋の光を受けて、まるでその光の中に溶け込むかのように美しく流れていく。
 もう一人の方は緩やかにカールしている黒髪。その黒髪は入り口から差し込むまぶしい秋の光を受けながらも、はっきりとした存在感を示して美しく流れる。
 対照的な髪質の二人が、くるくると立ち位置を変えて踊る姿は、光と影が優雅に戯れているようにも見えた。
 その緊張感と美しさに、伶奈達三人、アルトまでもがギュッと手を握りしめ、息をすることすら忘れて、二人の姿を見つめ続ける。
 そして、あっと言う間の十数分が終わった。
 最後は祭壇の方に向かってしゃんしゃんしゃんと三回鈴を鳴らして、その鈴と扇を祭壇に返す。そして、二人が深々と祭壇に受かって頭を下げると終わり。
 ぱちぱちと控えめではあるが打たない者の居ない拍手に見送られて、二人は祭壇の裏側へと消えていった。
 心地よい余韻が、鈴の音の残響のようにその場に漂っていた。
「凄かったね!!」
 余韻から最初に蘇ったのは穂香だった。
「うん……奇麗だったね」
「うん、凄かったね……蓮ちゃんがあんなに奇麗だとは思わなかったよ」
 穂香の言葉に伶奈と美紅もぼんやりと、未だ夢見心地のまで答える。
 未だ中では神主らしき初老の男性が出てきて、なにやら難しい言葉で祝詞を上げている。椅子に座った列席者達が立ち上がる事もないが、伶奈達にとってはただのつまらない儀式に過ぎないから、パス。
 さっさと人混みから抜け出したら、待ち合わせの場所へと移動する。
 待ち合わせの場所は解りやすい所って事で、神社の入り口、一つ目の階段の下。ズボンのお詫びってほどでもないが、たこ焼き一舟を穂香の奢りでごちになる。もっとも、十個を三人で山分けだから、寂しいっちゃー寂しい。
 行き交う人並みから一歩外れて、三人でたこ焼きを突っつき、突っつき。時々はアルトにたこ焼きからほじくり出したタコだけを与えてみたりしながら、三人は適当に時間を潰していた。
「こう言うとき、ケータイ、持ってない人が相手だと、不便だよね」
 オーナー……購入主の穂香はすでに食べ終わった後ではあるが、最初にたこ焼きの船を持つ役目を買って出たせいで、未だに、それを支えたまんま。他の二人が食べてるのを若干物欲しそうな目つきで、そのたこ焼きの船を眺めていた。
「着替えてる最中に電話かけても、迷惑なだけだよ……っと――あつっ! あつっ!」
 少々大げさに熱がりながら、美紅が三つ目のたこ焼きを口の中で咀嚼し始める。
 そして、伶奈も最後の一つを口の中にぽい……トロトロの中身が口の中一杯に広がる。火傷しそうなほどの勢い。それを「ほふほふ」と口の中で転がすように咀嚼する。
「後で綿菓子も買いなさいよ」
 なんて、タコをストローに刺してるアルトが言ってるけど、今はそれに答える余裕はない。
「コクン……ふぅ、熱いね、これ」
 ようやく飲み干して一息吐いたら、伶奈はひょいと空っぽになった発泡スチロールのトレイを穂香の手から取り上げた。
「ごちそうさま、捨ててくるよ……」
「あっ? 良いの? 一緒に行こうか?」
「ううん、入れ違いになったら困るから……」
 美紅の言葉に軽く首を振って伶奈はその場を後にした。
 どこにゴミ箱があるのだろう? と思いながら、とりあえず、社務所らしき建物の方へと歩く。あるとしたらこっちだろうと思う。最近はテロ対策だとか色々あって、こう言うイベントでゴミ箱を探すのも大変……最悪、ないかも……なんて思いながら、少女は人混みを外れて、玉砂利の中の踏み石を踏んで歩き始めた。
 その右肩にはアルトがちょこんと腰を下ろして座っていた。そのアルトが伶奈の髪をちょいちょいと軽く横を引っ張って言った。
「奇麗だったわね。普段のぼさーっと空を見上げる蓮と同一人物とは思えないほどだわ」
「ぼさーっと空を見上げてるって……ひどいよ……まあ、凄く奇麗で普段の南風野さんとは印象が全然違ってたけど……」
「だから、別人みたいだって言ってるのよ」
「……まあ、そこは良いけどさ……」
 話をしながら社務所へたどり着くも、あいにくとゴミ箱は見当たらない。
 田舎の神社にしては大きめの社務所、こっちでは特に何かをしているような様子はなくて、純粋な事務や受付の業務なんかをやっているだけのようだ。『新車のお祓いはこちらで』なんて言う看板も見える。もっとも、今日はお祭りだからか、『受け付けは終了しました』の紙が張ってあった。
 人も出払っているのか、気配もしない。
 そして、ゴミ箱も見当たらない。
 きょろきょろしながら社務所の周りをうろうろ。右の方に乗ってるアルトと話をしながら、少女はゴミ箱を探した。
「やっぱり、ゴミ箱ないのかなぁ……」
「その立派なナップザックに入れて持ち帰りなさいよ」
「アルトも一緒に入る?」
「中をソースでべったべたにしてやるわよ……」
 ぴたり……足が止まる。
「なに?」
 アルトが横から顔を覗かせ、尋ねる。輝くような笑顔はとても愛らしい物なのだが、それには毒がたっぷり含まれていることを少女は理解していた。
(なんて言ってやろう?)
 そんなことを思う背後、そこにカチャリ……と小さな音が聞こえた。
 聞こえたのは建物の向こう側、伶奈の方から見て右の方。ひょいと何気なく少女が壁から顔を覗かせたら、ちょうど一人の女性が出てこようとしていたところだった。
 どこにでも居そうなごくごく普通のお姉さん、多分、高校生くらいか? ジェリドとは逆方向のお隣さん、女子大生のアマナツさんよりかは背は高いようだが、顔つきは少し幼く見えた。その顔……と言うか、顔を覆う髪、特徴的な緩やかにカールしたボリューム感のある黒髪……見覚えがあるような気がして、何処かで会ったっけ? と一瞬考える。それが服こそロングスカートにトレーナーとスカジャン姿に着替えて居るが、先ほどまで蓮と一緒に巫女姿で踊っていた女性だと言うことに思い至った。
 その彼女、部屋の中からなにやら重たい物を引っ張り出そうとしていたところのようだが、伶奈に気づくと彼女はその手を止めた。そして、こちらへと視線を向け、尋ねた。
「あっ……何か用事? 今、神主さんも事務員さんもいないよ、それとも迷子?」
「いいえ! って、迷子になる年じゃないです! ゴミ箱を探してて……」
「ああ、ゴミ箱ね。悪いけど、置いてないと思うから……持って帰ってくれるかな?」
「はっ、はい。ごめんなさい」
 ぺこっと頭を下げて詫びると女性の方も「いえいえ」と軽く頭を振って答えた。
「ほら見なさい、だから、ナップザックに入れて持ち帰れば良いのよ」
 そして、なぜかアルトが勝ち誇った。
 その言葉に伶奈のほっぺたがプーッと膨らむ。
 仕方ないから、回れ右、待ち合わせ場所へと帰ろうとした背後、女性の少しいらついた声が聞こえた。
「ほら、蓮、帰るよ! 友達、待ってるんじゃないの?」
「えっ?」
 その声に伶奈はもう一度回れ右。ひょこひょこ……っと彼女の方へと近づき、ドアの中を覗き込めば、そこにはぐったりと力尽きた蓮の姿があった。ニットのワンピースを着ているみたいだが、腕を引っ張られてるせいで着崩れて台無し。生足魅惑のマーメイド状態である。
 巫女舞をやって疲れ果てて、服を着替え終わったところで力尽きてしまったのだろう……と言うことがすぐに解った。
 まずいところに来たな……と少女はとっさに思った。
 伶奈の存在に気づいた蓮がむくりと体を起こして、四つん這いでかさかさと近づいてくる。まるでゴキブリである。
 そして、この後に来るのは――
「あっ……にしちゃ〜ん、だっこ〜」
 ――これしかないことはこの半年の付き合いでよく解っていた。
 そして、蓮が伶奈の足にすがりついた。
「あれ? もしかして、友達? よかった! それじゃ、後、よろしくね?」
「あっ、いや、よろしくって……――ちょっと!? 抱きつかないでよ!! てか、それだけ、元気があったら立って歩けるって、いつも言ってんじゃんか!?」
 一人で歩きたがらない蓮が誰かにすがりついて、おんぶをねだるいつもの風景。お隣にいる女子高生(多分)のお姉さんも全く驚かない程度に日常の風景だ。
「……別人になったのかと思ったら……相変わらずで安心したわ……」
 一足先に宙へと逃げたアルトが嘯き、その声が祭り囃子と共に秋の高い高い空へと消えていく。
 そして、伶奈はこの後、皆の待つ鳥居の所まで、蓮を負ぶっていくことになった。

 そして……
「おっ!? なんだ、一緒だったんだ?!」
 伶奈とその背の蓮を見つけて、穂香が元気いっぱいに手を振った。
「あは、相変わらず、蓮ちゃんは誰かに寄生しないと移動できないんだね?」
 そう言ったのは比較的いつも寄生される立場の美紅。
 大きな朱色の鳥居で二人は人混みの流れから離れ、手持ちぶさたな様子で待っていた。
「つっ、疲れた……死ぬ、マジで……」
 その二人の元へ……最後の力を振り絞って伶奈は到着……とんと、背中から蓮が下りる気配を感じたら、直後にパン! パン! と、二つの破裂音。
 くるりと振り向けば、両手を顔の高さに挙げた蓮とその両手に平手をたたき込んでる穂香と美紅の姿が見えた。
 だから、伶奈も振り向いて、少し勢いを付けたら、力一杯、蓮の両手に自身の両手をたたき込む。
 パパン!
 ひときわ大きな音が二つ、ほぼ同時に響いた。
 そして、少女達は大きな声で言った。
「「「お疲れ!!」」」
 そして、いたわられた少女が言う。
「……皆、痛い……」
 そして、宙を舞っていた妖精は言った。
「……だから、なんで、そこまで力一杯ハイタッチするのよ……貴女たちは……」
 そんな少女達を晴れ上がった真っ青な秋空が見守り、祭り囃子がはやし立てていた。

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