二研(2)
 次に直樹が大学に出てきたのは、事故から五日後の事だった。もちろん、まだギブスは外れてもいないし、松葉杖は標準装備、それどころか歩く度に鈍痛が足に走る。
「もうちょっと入院してたら良かったのに」
 退院する直樹を貴美が迎えにきたとき、彼女はそう言った。が、実際にはそう言った彼女こそが直樹に四日目での退院を決意させた要因その物だった。
 話は入院二日目、月曜日に遡る。その日、貴美は朝――
 起きてこなかった。大学にも来ないし、喫茶アルトのバイトにも出てこない。美月とアルトに半ば脅されるように良夜は、昼休み、部屋を訪れた。すると出てきたのは、彼女はボサボサの頭、すっぴんの顔、パジャマのままという出で立ちの貴美だ。彼女は訪れた良夜を出迎え、こう言ってのけた。
「……ごめぇん、今まで寝てた……」
「……なっ、何? 体調、悪かったとか?」
 心底眠そうな顔、着崩れたパジャマの肩口に手を突っ込むと彼女はボリボリとそこを掻きはじめる。寝起きのオヤジみたいな姿、そんなものは一年半以上の付き合いの中でも初めて見る光景だ。それに良夜も貴美の事が心配になって尋ねたのだが、それに対応する答えはあまりにも意外なものだった。
「ううん……なお、起こさなくて良いんだぁ〜と思ったら……目が覚めなかった。今まで」
「おい!」
 玄関口での盛大なツッコミだった。そのツッコミを無視するように彼女は自室へ……ツッコミを無視されてしまった良夜は、どうしたものかと立ちつくしたが、それも数分。出てきた姿は、普通のワンピースだった。
「って……美月さんがバイト出てくれないと泣くって言ったけど……」
「……あっ、ごめぇん、忘れてた」
 のっけから不安をかき立てられること夥しいイベントから始まり、一事が万事これだった。寝てても仕事が出来るという万能別人格営業モードも、注文は間違う、料理は別のテーブルに運ぶ、水はこぼす、グラスは割る、人の話は上の空……とまあ、誤作動しっ放し。
「貴美ってヤンデレ体質よね? ちょっぴり」
 良夜の頭の上、貴美がミスする度、指折り数えて心のメモ帳に書き留めていたアルトがつぶやく。
「あぁ? ヤンデレって斧振り回したりする奴か? そういうの嫌いだから、やったことねーけど」
 基本的に『泣けるゲーム』が好きな良夜は興味もなさそうにフロアへと視線を向ける。そこではまた貴美が何かドジを踏んだらしく、見知らぬ客相手にペコペコと頭を下げていた。これもかなり意外な光景、てか、奴が頭を下げてるところなんて見たことがない。
「……一応、彼女がいるのにそうじゃないゲームはしっかりやっちゃうあたりが、良夜のだめな所よね……って話はともかく。直樹がいないからあの調子でしょ? 依存してるのよ」
「ふぅん……じゃぁ、直樹が吉田さん振ったら、鉈とか斧とか振り回すのかな?」
「楽しみよね!?」
 頭の上から降り注ぐのは、アルトの弾む声と天地逆さまになってぶら下がっている彼女の顔。喜色満面の顔を手で払いのけながら、良夜はうんざりとした声を上げる。
「……お願いだから、楽しみにするなよ。お隣さんの身にもなれ」
「まず第一に我が身可愛さの発言をする方もどうかと思うわよ」
 チョコンと良夜の鼻をストローで叩いて、彼女は髪を伝って頭の上に戻っていった。そして、言葉を続ける。
「まあ……美月もそういう所あるから、似たものカップルなのかしらね?」
「んっ? まあ……あの人も、優先順位が変な人だ――」
 ぱーん!!
 他愛のない会話は陶器が割れる澄んだ音によってかき消される。それはアルトと良夜の会話だけではなく、喫茶アルトフロア全体への空気を凍りつかせるに十分なものだった。
「ああ……ヤバ……ついにやったわね。良い値段するわよ、あれ……」
「こんなところから良く判るな?」
 アルトに促され、音の方へと視線を向けたものの、彼我の距離は数メートル以上、砕けたカップなんて大きめの米粒程度だ。そもそもカップとか良く判らない良夜だから、まともに見えていたとしてもその判断がついたかどうかは怪しい。
「ここで使ってるカップ、全部ブランド物よ。良夜のだけは中国製百円ショップ、鉛入り」
「……嫌過ぎるぞ、それ」
「嘘よ……さて、美月がキレるわよ」
 アルトがそう言うや否や、キッチンで調理に勤しんでいた美月がフロアへと出てくる。そして、貴美相手に二言三言、何やら話をし始めたが、残念な事に良夜にはそれが聞こえることも、また美月の表情を見ることもできはしなかった。ただ、やっぱり貴美が非常に恐縮して美月にペコペコと頭を下げていること、そして、その場を離れようとする美月を貴美が血相を変えて追いかけていくシーンだけは見ることができた。
 で、次に良夜が美月と顔を合わせた時には、直樹の翌々日退院が決まっていた。
「何をどうすれば、赤の他人が無理矢理退院させられるのか……凄く不思議よね?」
「……知りたくねえ、知りたくねえ……」

 こんな感じで無理矢理退院させられちゃった直樹君。まあ、授業の方も決して余裕がある取り方をしている訳でもないし、二年も十月を過ぎるころには専門的な授業も増えて、休んでるとついていけないくなるのもまた事実。退院してきた翌日には、痛む足を引き摺りながらも彼は授業に出ていた。
 午前の授業が終わって、アルトへの道すがら、松葉杖装備の直樹を中心に三人はのんびりと喫茶アルトへの道を歩いていた。十月と入っても日差しはまだまだ厳しく、いつもよりも遅い足取りに三人の額にはじっとりと汗がにじみ出す。今年も残暑は厳しそう。
 そんな中、全行程のようやく半分といったところで、ふと貴美が話題を変えた。
「あっ、なお、なおの事故、事故調が動くってさ」
「えぇ!?」
 貴美の話題に直樹は大きな目をまん丸く見開き、大声を上げる。それは持っていた松葉杖も落としてしまうくらいの勢い。彼の苦い顔の半分は折れた足から駆けめぐる激痛のためだったに違いない。
「なんだ? その事故調……って?」
 直樹の落とした松葉杖を拾い上げ、彼に手渡し、良夜は尋ねる。それに答えたのは松葉杖を突き直している直樹ではなく、その直樹を片手で支えていた貴美だった。
「二研事故調査委員会。建前的には『事故の原因を究明し、事故防止を啓発する』っていうのが、趣旨なんやけどねぇ〜」
「本音は『書くことのない会報を埋めるためのネタ作文』になってるんですよ……しかも、これが地味に人気で」
 ニヤニヤと底意地の悪い笑みを浮かべる貴美に対し、直樹はウンザリとした顔を彼女へと見せる。そして、直樹が松葉杖を装備し直すと、再び三人はのんびりとした歩調で喫茶アルトへの道を歩み始めた。
「って、悪趣味だな……」
「前に一つ上の田上さんが事故って、靭帯切って二ヶ月入院した時は、凄く真面目な文章でしたよ……でも、全般的に自爆事故で怪我の程度が大したことなくて、バイクの被害が悲惨なほど、エスカレートするんですよ」
 良夜が呆れた声を上げると、朝からテンションが低めだった直樹はさらにそのテンションを下げていく。がっくりと落とした肩は松葉杖がなければ、地面にへたり込んでしまいそうなほどだ。
「あの人の場合、茶化すにはちょっとシャレになってない事故だったしね、全身麻酔かけられて手術六時間だっけ? でも、なおの場合、高々四日だし、何より……やるの、テツゥ〜だから」
 貴美が言う「テツ」とは同じ工学部の学生で、二研にも所属している宮武哲也という男の事だ。ちなみにここでの「テツゥ〜」は関西方面在住の某じゃりん子が父親を呼ぶのと同じアクセント。
「何で宮武だとまずいんだ?」
 それに良夜は軽く小首を傾げる。むしろ、この手の事で一番悪ノリをするのは、ここで松葉杖に指を絡めている貴美だろう。
「前に宮武くんが自爆でバイクを廃車にしたとき、吉田さんが嘘八百の報告書をでっち上げて、紙面で笑いものにしたんですよ……タチの悪いことに、それがバカ受けで……」
 それを聞いて良夜は「ああ」と納得。きっと、メダカのような小さな事故を立派なカモメに成長させたに違いない。もはや、魚類どころか水の中にもいない。直樹はその意趣返しにおびえているのだ。
「文責はなおだけどね。私はネタ提供しただけ。文章書くのはワードとかでも苦手なんよ」
「ぼっ僕は吉田さんが書けって言ったとおりに書いただけです!」
「なおだって、ノリノリだったやん? 女子中学生のパンツ見てて自爆の下りはなおっしょ?」
「その後、アスファルトに投げ出されながらも女子中学生のスカートに頭突っ込んだ! の下りは吉田さんです!」
 やいのやいの……タカミーズがもめごとを起こして、良夜が笑いながらそれを眺める、いつものパターン。喫茶アルトは既にランチ客でいっぱい、美月はフロアで客をさばきつつ、キッチンで料理を作ってと半泣きだと言うのに、三人の歩みはちっとも早まらない。結局、三人がアルトのドアベルを鳴らしたのは普段よりも十五分以上遅くなってからのことだった。
 から〜んとドアベルが晩夏の空に消え去り、直樹不在時には動作不良を起こすと言うプロパティが明かになった貴美の営業人格にスイッチが入る。それを見送り、良夜と直樹はいつもの席――
 には向かえなかった。
「よっ! 直樹、退院おめでとさん、んじゃ、話を聞かせてもらおうか?」
 平々凡々割と普通の男子大学生と言った風体の男――噂の宮武哲也が彼に片手を上げて声をかけたからだ。

 さて、そんな一連の話を聞いて、黙っていられないのがこの店に住まう妖精さんだ。彼女は良夜からの話が終わるや、トンと彼の頭を一つ蹴ってフロアの上空へと飛び立った。目指す先は国道側の席。フロアでくつろぐ客の頭をとんとんと数回蹴っ飛ばし、彼女は直樹や哲也とともに座っている女性の頭に着地を決めた。
 麦秋を思わせる美しい髪とその髪を覆い隠すように被った野球帽、そしていつもノリノリハイテンションがトレードマークの女性は名前こそは知らないが良く見知った顔だ。特に、室内だろうが雨が降ってびしょ濡れだろうが絶対に脱がない野球帽は、一度引っぺがしてやりたいと狙っているのだが今まで出来ずにいる。
「マンホールでスリップだっけ?」
「ええ、濡れてたんでツルンと行っちゃって」
「ああ、怖いよなぁ、マンホール。側溝の網とか……そろそろ落ち葉も怖い季節だなぁ」
「そうですねぇ……」
 会話が止まる。その隣では当人知らぬ間にアルトの椅子と化している女性がキョロキョロと二人の間を何度も見比べ、次の言葉を目を輝かせて待ちつづける。
 その期待が叶うまで、約一分の半分ほど。再び、哲也が言葉を紡ぐ。
「足回りは?」
「僕は見てませんが、大丈夫らしいです。西山さんちのお父さんが」
「ああ、あそこのおっさんに見てもらってたら間違いないよなぁ」
「そうですねぇ……」
 で、また会話が止まり、女性はその間でキョロキョロとまわりを見渡す。注文の品が届くまでの十数分、二人の会話プラス見物客二名の様子はずっとこうだった。
 訂正、注文の品が届いてもこうだった。食事中もこうだった。三人プラス一人が囲むテーブルはずっとこうだった。
「……何なのよ、この退屈な会話は……」
 三人の前から食事が消え去り、食後のコーヒーが興じられるころ、アルトは全身の気だるさを隠しもせずにつぶやいく。全身には妙な疲労感、こんなことなら良夜の席で奴を刺してれば良かったと後悔しきりだ。
 そして、食後のコーヒーも消え去りるころ、ようやく、事態はアルトの期待通りの方向へと動き始める。それは、アルトの椅子が勢いよく立ち上がる所から始まった。
 がん! と椅子が大きな音を立てると、ランチタイムで混み入っているフロアにあっても注目を集めるに十分だ。その注目に気づいているのか、気づいてないのかは知らないが、彼女は「哲也さん!」と大声を上げる。もちろん、その後には言葉が続き、その声も大声だった。
「今日は例の『哲也さんが女子中学生のパンツ見てたら、飛び出してきた子ぎつねに驚いて、転倒。アスファルトに投げ出され血だらけになりながらも女子中学生のスカートの中に頭突っ込んで、バックプリントの下着を堪能してたら、警察に連行されて今は既に前科持ち!!』よりもおもしろい話を考えるために来たんじゃないんですか!!! せっかく大人しくしてたのに!!!」
 彼女が一気にまくし立てれば、ほぼ満席の喫茶アルトフロアは一気に静まり返る。チュンチュンと和明が沸かしているお湯だけ存在を主張するように声を上げ、他の誰もが声を殺す。殺した声で囁くのはこんな言葉ばかりなり。
「変質者……」
「ロリコン……」
「何て羨ましい……」
「見ちゃ駄目だって……! 妊娠しちゃう!」
 二十人を下らぬ客達、全員が哲也の顔を一斉に見るが、哲也が見ようとすると一斉にそっぽを向く。誰も目を会わせはしないが、誰もが彼を汚物を見る目をしていた事は確認の必要すらない。
「ちょー! 嘘! 嘘だって!! 吉田が作った作り話!!! ボケだぬ! 貴様、言うに事欠いてこんな所でどんな核爆弾炸裂させやがる!!!!」
「……えっと…………もしかして、これ、秘密でしたか?」
 とっさに哲也が掴みかかっても“ボケだぬ”と呼ばれた女性はキョトンとしたまま。それどころか、「言っちゃいけないことでしたか?」などと、聞きようによってはさっきの話を補強するような――そして回りはそうとしか聞かない――事をほざいて見せる。
「秘密とか秘密じゃないとかじゃなくて、出まかせ!!!」
 アルトが“ボケだぬ”の上から見下ろしていることも知らず、哲也は目に大粒の涙を浮かべてガッツンガッツンと彼女の頭を前後に揺らす。それは揺らされている当人よりも上に座ってる方が被害に会う強さ。てかむしろ……
「にゃぁ〜〜てつやさぁん、よっちゃいますよ〜〜〜」
 むしろ、彼女は喜んでいた。全身から力を抜いて揺らされるままに揺らされ、ヘラヘラと笑いつづける。まるで大きなこんにゃくみたい。彼女の代わりにアルトだけが一方的な被害に会う有様。人よりも三半規管が弱めにできてる妖精さんにとって、座布団代わりの彼女が何を喜んでいるのかさっぱりだ。ともかく一刻も早くここから逃げ出さないと、淑女としては決して許されざる事をやってしまいそうな予感だけがふつふつと沸いた。
「……うっ、生まれる……半固形の苦い物体が」
 フヨッと帽子の頭から転がり落ちて、直樹の頭に飛びつき、しがみつく。未だ余韻収まらぬ頭を癒すため、直樹の頭の上でぐでーっと大の字。撫で心地が良いと評判の頭は寝心地も抜群。
 アルトが直樹の頭に達するのとほぼ同時、まったく懲りることのない“バカだぬ”に、哲也も業を煮やす。彼は彼女の首根っこを取り押さえてズルズルと引き摺って店外へ……それもまた『口封じ』と見られちゃったりして、彼の汚名をさらに高める結果になったりする。
 一方、一人――実際にはアルトがついてはいるのだが、ともかく、一人、席に取り残された直樹はひとまず危機がさったことに一安心だ。大きめのため息を一つついて、グーッと大きく背伸びをする。伸ばした背とともに首が背もたれの向こう側に落ちると、その額をペチンと白い手が叩いた。
「いやぁ〜笑った笑った、相変わらずたぬきっちゃんは攻撃力は高いやね」
 ペチペチと直樹の頭を叩きながら、貴美は自身がでっち上げたフィクションが事実として浸透し始めることに笑いっぱなし。趣味が悪いなとアルトも思うが、面白いので良しとする。
「て、だれだ? 今の女……すげーな、大声で宮武を性犯罪者呼ばわりだぜ?」
「良夜もロリじゃない。似たようなものよ。対象年齢がもう少し下方修正されちゃう分、良夜の方がタチが悪いわ」
 良夜の顔を見上げて言えば、彼は苦い顔だけを見せてそっぽを向く。最近、どうも反論しても無駄だと思っているらしく、ロリという単語にあまり食いついてこない。そろそろ新しい罵倒語を考える時期なのだろう。
 そんなアルトの思いを無視して話は進む。
「ミヤテツの彼女……かな? たぬきっちゃんはそう言い張ってるけど、ミヤテツ本人は認めてないって感じの子。男ツンデレは見苦しいやね、さっさと付き合っちゃえば良いんよ」
「って、余計な事してやんなよ。話、こじれんだから」
 実際に経験がある上に、しかも貴美に『私は愛のキューピッド』を主張されている良夜は苦虫をダースで噛んだように顔を歪める。けど、貴美は知ったことではないとばかりに、直樹へと手を差し出していた。
「雨降って地固まるってね……――なお、立てる?」
 ギブスで固められ稼働範囲が非常に狭くなった足、それで立ち上がる直樹に貴美が手を貸し、良夜と貴美のお話は一旦終了。アルトは直樹の頭からトンと飛び降り、無人となったテーブルにごろ寝。良夜たちが出かけたらお昼寝、と心に決める。
 決めた心に忘れ物一つ。
「あっ、名前なんて言うのかしら?」
 深い意味はないけど、せっかくなので聞いてみる。
「……――ってアルトが聞いてる」
 良夜がその言葉を通訳すると、タカミーズはお互いの顔を見合わせうーんと首をかしげた。
「名前……聞いた覚えないんよねぇ〜」
「そうですね。みんな、あだ名でしか呼びませんからね」
 そもそも、大学の学生でもないらしく、単に哲也の友達ということで二研の部室に出入りしているだけの女性らしい。だから、彼女のことはタカミーズも他の部員たちも良く知らない。が、「面白い子だから、まっ良っか」と半ば公式メンバー化してしまうのが二研というサークルの空気らしい。
「で、あだ名って?」
 そう尋ねたのは良夜、その良夜の疑問には貴美が答えた。
「丸顔、タレ目、ペちゃっ鼻、たぬき顔のたぬ吉」

 追伸。
 高見直樹事故調査報告書、要約。
「前日、恋人の吉田貴美とあんなことやこんなことをやりまくった挙句、その日が土曜日であることを良いことにさらにやりまくった結果、極度の疲労と睡眠不足がたたり、居眠り運転。そのまま、ひっくり返って病院に担ぎ込まれることに。読者諸兄、バイクに乗る前は十分な睡眠を取るように心がけましょう」
 原文には「あんなことやこんなこと」のあたりが微に入り細に入り書き上げられていたのだが、それはさすがに校正の段階で削除されてしまったそうだ。
「残念ですっ! 大作だったのに!!」
 自分の名前で長編エロ小説を提出された哲也が、その作者相手にマジギレしたのは余談である。
 なお、これを読んだ吉田貴美が――
「うん、大体この通り」
 と、言っちゃったものだから、高見直樹が二研及びその周辺で『絶倫男』と密かに呼ばれ始めた。しかし、直樹が可哀想なのであまり公にはされていない。

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