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佐々木宏子の絵本研究室
プロフィール
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 佐々木 宏子 ( ささき ひろこ )
 鳴門教育大学 名誉教授
学 位
1998.03 博士(教育学)
「絵本の主題分析にもとづく絵本心理学の構築」
職 歴
1983.05 アメリカ合衆国ジョ−ジア大学家政学部
家族発達学科准講師
1984.04 鳴門教育大学学校教育学部助教授
1987.10 鳴門教育大学学校教育学部教授
2000.04 鳴門教育大学学校教育学部附属幼稚園長(2004.03まで)
1987.10 鳴門教育大学幼年発達支援講座教授(2006.03まで)
鳴門教育大学附属図書館児童図書室長(2006.03まで)
2006.04 鳴門教育大学名誉教授(現在)
2006.09 北京師範大学珠海分校教育学院教授(2007.02まで)
2007.04 環太平洋大学次世代教育学部乳幼児教育学科教授
(2009.03まで)
2009.04 鳴門教育大学社会連携課非常勤研究員(2011.03まで)
2011.12 首都師範大学(北京)就学前教育学部専門委員会委員(2014.08まで)
研究・専門分野
(1)絵本の主題分析による乳幼児の新しい発達理論の構築。絵本の主題分析を通して発達心理学の中に 「絵本の心理学」 を構築する
 現代社会における子ども文化の状況は、ニューメディアの発達とともに公教育としての幼稚園教育や小学校教育を上まわるほどの影響力をもっています。私の主たる研究テーマは、絵本と乳幼児の発達に関すること−とくに絵本というメディアが乳幼児の発達にどのような影響を与えるかの質的研究です。
 絵本を通しての読者論、乳幼児の心理発達論、コミュニケーション (とくに言葉) 発達論、親子関係論、発達観の変遷、発達観の比較文化的研究、子ども文化論、子どもの発達とメディア論などです。→『絵本の心理学−子どもの心を理解するために−』 2000/新曜社
(2)乳幼児への絵本の読み聞かせとコミュニケーション能力の発達
 最近の赤ちゃん絵本の発達はめざましく、伝統的な「ものの絵本」ではなく抽象的な絵とユーモアやナンセンスのリズム・メロディにあふれたテキストをもつものが増えています。これら後者のタイプの絵本は、伝統的な知識カタログ型の赤ちゃん絵本ではないために3ヶ月くらいの赤ちゃんから受け入れられ、親子のコミュニケーション回路を開発するものとして注目を集めています。
 そこで、A「コミュニケーション開発型絵本」と伝統的なB「知識カタログ型絵本」を選択・分類し、それらの二つのタイプの絵本が0・1・2歳の赤ちゃんにどのように受け入れられるのか、また受け入れられないのか。それは、親子関係や読み手と赤ちゃんの資質によって変化するのか、しないのか。そのことは、その後の赤ちゃんのコミュニケーションスタイルや言葉の発達、読書傾向にどのような影響を及ぼすのかなど、従来一言で「読書」と言われているものの実態を、より厳密に検討する基礎研究として詳細なデータを収集しています。この研究は、現在、科学研究費の助成を受けていました。 →『絵本は赤ちゃんから −母子の読み合いが開く世界-』2006/新曜社 A 「コミュニケーション開発型絵本」が好きで、早くから読みあいを楽しんだ赤ちゃんは、それ以降も人間関係を切り拓いてゆく力が強いように思います。友達作りもうまく第2言語の習得も早く、誰とでもそつなく仲良くなりますが、書く力へとそのまま結びつくものではありません。
 逆に、認知型でB「知識・カタログ型絵本」から入る赤ちゃんは、必ずしも早くから絵本に反応を示してくれません。対象が認知でき理解できるまで絵本に興味を示しません。しかし、書き言葉への興味が強かったり、自分の感じたことを正確に表現する力はむしろ優れている場合もあります。
 それゆえ、一概に絵本を通しての反応は、何に反応しているのかを正確に見極めないと、単純に絵本が「好き」とか早くから「読みあい」が出来ることが「良いこと」とは言えません。
 これは私が長年赤ちゃんと絵本の研究の中で獲得した印象であり、とくに大規模なデータがあるわけではありません。最終的には、あくまでも子ども一人一人の発達の筋道の違いに注目すべきだと考えます。
(3)乳幼児期の遊び(Play Literacy)が子どもの発達に及ぼす影響について
 鳴門教育大学附属幼稚園の実践を踏まえた共同研究の中で、遊誘財(Play Resource)という概念を創出しましたが、遊誘財とは伝統的な教材(Teaching Material)とはまったく異なり、子どもたちの遊ぶ能力(Play Literacy)を育むための環境作りであり精神的・物質的財産です。
 保育環境が子ども自身の長い時間をかけた遊びの伝承により構築され、保存されていれば、その環境は子どもの遊びを強く導く力を持っているということです。附属幼稚園では、このようにして歴史的に伝承・保存された環境と、その環境を通して行われる遊びがセットになって継承されているものを遊誘財と命名したのです。
 遊誘財とは、長年の鳴門教育大学附属幼稚園の追跡研究から幼稚園教育における「教育的に価値のある環境」として発見された概念です。
 子ども達の遊ぶ能力(Play Literacy)とは、「自分たちで目標を決め、自分たちで必要な知識を集め考え、遊び活動の中で自分たちの可能性を発見・発達させることです。また、遊ぶことの能力は効果的に社会に参加するために、子ども同士がお互いの人格を理解し、協力する能力を育むものである」とも考えています。→「保育者のための遊誘財データベースづくりから見えてきたこと -保育の質を語るための新しい保育専門用語の開発-」/2009/鳴門教育大学研究紀要 第40号 鳴門教育大学附属幼稚園
(4)幼小の連携教育
 附属幼稚園長 (平成12年度〜平成15年度)時代に 「幼小の連携」 について精力的に研究を行いました。その間、附属幼稚園年長組と小学校一年生の合同保育/授業の実践を試み、同じ課題に基づく保育/授業を幼稚園児と小学1年生が協同で取り組むことにより、両者の思考方法・発想・興味の視点・手続きなどの違いが鮮やかに浮かび上がりました。その後、幼稚園の 「環境を通して行う教育」 の長所をより深めるために、「遊誘財」 という概念が共同研究の中で提起され、環境の概念の中でもっとも重要な要因は保育者の質と、目には見えない文化的・教育的遺産の継承であることが分かりました。
→「教科の学びの萌芽に満ちた遊び」『幼児教育の方法』(小田豊・青井倫子編著)(共著)/2004(改訂版2009)/北大路書房。 →『なめらかな幼小の連携教育 −その実践とモデルカリキュラム−』共著/2004/チャイルド本社。
(5)遊誘財とは、「教育的に価値のある環境」をもっと具体的に目に見えるようにして語り合うための概念として開発されました。
 わが国では、平成元年から幼児教育は「環境を通して行う」と明言されましが、残念ながら実践の場では定着しないままに廃れようとしています。どうしてこのようになってしまったのでしょうか。一つには「環境を通して」という言葉の環境が具体的には何を意味するのかが問われないままに過ごされたこと。その結果、教育的に価値のある環境が保育現場で整備されないまま、30年が流れてしまった結果だと考えられます。  鳴門教育大学附属幼稚園では、1980年代半ばから幼稚園教育・保育にとって必要な「基盤型環境」を整備し続け、その環境の中で子ども達が多様な遊びと人間関係を創造し続けてきた歴史があります。その具体的内容は『遊誘財・子ども・保育者』(郁洋舎)として出版しましたのでご覧ください。
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© 2005 Sasaki Hiroko