許してちょんまげ 2003・6・3 徳島新聞 

 

 

 まだ辞めてなかったのかと、ふと気が付いた。アメリカの戦争支援をやりそうな有事立法や、生保や「りそな」に気をとられていたが、選挙違反で逮捕された二人の県議の話題から、松浪健四郎議員のことを思い出したのだ。

 

 あってはならない「暴力団組員による秘書給与肩代わり」と、政治資金規制法に抵触する「無届け」が、一ヶ月も前から問題にされてきたもの。「法律を理解するにつれ政治資金報告書を修正すべきと思う」ようになりながら、マスコミ取材まで隠していたのだから確信犯といえよう。

 

 さらにもう一件。ある刑事事件で指名手配中の被疑者(元組員)から依頼され、大阪府警に捜査状況を照会したこと。これもまた、暴力団とのひどい癒着だ、国会議員の地位利用だと、そしりを受けた。国会では以前から建前上も暴力団取締りのための法制強化がなされたきたのに、率先して抵抗・逆行しているようなものだ。

 

 それらの弁明とみそぎの場にすべく「政治倫理審査会」に気負って臨んだものの、望んだ結果とはほど遠く、「やぶの中」にもならずにヤブヘビになった。「他の暴力団関係者とはいっさい関係を持ったことがないと語った舌の根も乾かぬうちに、別の暴力団系企業から献金を受け取っていたことが新たに表面化したのだ。

 

 自民党議員でさえ、「弁明には不自然な部分がある」と不愉快そうに批判せざるをえなかった。保守新党の扇千景「同志」も何度も暗に辞職を求めた。しかし、「暗に」では、蛙の面になんとか。かつて国会本会議場で野党議員にコップの水をぶっかけたくらいだから、当人も小水をかけられたくらいでは動じまい。だがもう、「水かけ論」はやめてほしい。

 

 元組員に疑惑の清算を申し入れたそうだが、その場で返却できず給与明細書を焼却されたという。「無かったことにしよう」と。こんな乱行を「反省&おわび」せ済ませるわけにいくまい。「後頭部の余分な毛髪」を切り落としたたものの、大昔の流行語(許してちょんまげ)を思い出させただけ。国民はこぞって、松浪辞職を待つのみ、なのだ。

 

 だがしぶとい彼は、野党こぞっての追及もものかわ、「次の選挙で信を問う」と辞職を拒否している。「ネバー・ギブアップ」も時と場合によりけり。彼の好きな格闘技やスポーツは別として、今回の不祥事ではただちにギブアップすべきだろう。

 

 いつまでも議員のいすにしがみ続けるようだと、以前ここのコラム「新党滅却するか」で書いたとおり、また「保守新党は保身党」とか、まだ「後ろ髪」を引かれているのかと、ヤユされ続けるにちがいない。

 

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※辞めなかった松浪議員は、とうとう03年11月総選挙で落選。かっこ悪いな〜。

 

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