見たくない昼夢2003521徳島新聞夕刊 

 

 

 選挙違反で妻と共に逮捕された県議は、「つまらんケンギだ、潔白だ」と言いたげだった。しかし我らシロウトは、彼の否認の言葉を白々しく受け止めがち。明白な買収供応が白日のもとにさらされるのは、お白州でしかないのかなあ、それまで白状しないのかなあ、って。これって薄情?

 

 といった「白づくし」のマクラから「白づくめ」の話に移ろう。例の白装束集団のこと。その動向が連日報道されている。降って沸いたようなワイドショーねただ。「パナウエーブ研究所」という妙な集団が、二十台もの白いワゴン車を連ねて、あっちへ行ったりこっちへ来たり。新型ウイルスならぬ新型電磁波?の「スカラー波」から、代表の女性を守るため転々としているのだとか。

 

 かつてミカエル大王妃と自称した彼女は霊界と交信でき、近々巨大惑星の接近で大惨事が起こると予言しているそうだが、いまや本人が末期がんで余命いくばく状態とか。それも「共産ゲリラによるスカラー波攻撃を受けているから」だって。現代物理学では正体不明のその電磁波は、「地球温暖化を招く左翼勢力の陰謀」ときた。こうなると、「バルタン星人が地球人に姿を変えて人類抹殺を狙っている」といった、私の好きな三流SF映画の類で荒唐無稽ぶりでは甲乙つけがたい。彼らによると、スカラー波は電線の余りを丸めて電柱に留めているその輪からも出ているそうだ。電力会社もNTTも苦笑していることだろう。

 

 ほとんどの視聴者も一笑に付するだろうが、居座られた地の住民はそうもいくまい。平穏な暮らしを自衛するために、村民会議を開き「迷惑防止条例」の検討を始めたところもある。いくら同好会的でおとなしいカルト集団とはいえ、オウムによる上九一色村騒動と、続く弁護士一家殺害や地下鉄サリン事件の悪夢を思い起こすのは当然で、必ずしも「地域エゴ」とは言えないかもしれない。

 

 警察庁長官も、「オウムの初期に似ている」と警戒警報発令。いずれにしろ法に則った適切な対応を願いたい。左巻きか右巻きか知らない渦巻きステッカーをフロントガラスにべたべた貼っているのや、交通妨害になる駐停車はただちに検挙できるし、十分取り締まれるはずだ。

 

 だから私は、時代のあだ花として早晩消え去ると見ているのだが、25年も前に設立され10年ほど前からキャラバン行を続けていたのに、なぜ今ごろマスコミが飛びついたのか不思議でしょうがない。将来にわたってずっと恐い有事立法が、不十分な審議のまま共産・社民を除く与野党一致で成立しそうなのに…。「右翼勢力の陰謀」でもあるまいが、白けてばかりではいられない。 斜体部分は徳島新聞で削除された部分

 

 

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