秋と虫の話?2003926 徳島新聞「視点」

 

台風が秋を運んできたようだ。ちょっと前までムシムシしていたのに、もう虫の音が聞こえる季節。あれは鈴虫か松虫か…秋の夜を彩る虫はいい。でも虫のいい話には虫ずが走る。

 

アメリカがまた、身勝手なことを言い出した。根拠薄弱な「大量破壊兵器」の一掃を口実に始めたイラク侵略戦争がますます泥沼化してきたため、新たな国連安保理決議に打開の道を求め始めたのだ。その内容は、「米英軍主導のイラク占領体制」のままで他の国に軍隊もカネも出せというもの。

 

開戦当初から、国際世論の多くは米英暴走に批判的だった。だから今回の虫のいい英米決議案に対して、さっそく仏独修正案が提出されたのは至極当然。欧と米の対立が再燃し、当分厳しいせめぎあいが続きそうだ。

 

英紙は、「米主導に国連のラベルを貼り付けるだけ」ではダメで、占領軍の全責任を国連事務総長に移管せよと強調している。そしてイラクの真の主権回復を念頭に、ますは国連平和維持軍を編成して復興支援に道をつけよと主張している。どちらに道理があるかは明白だ。独紙もまた、イラクでの失敗の原因にも言及しないまま、国際社会に援助を求めようとするのは図々しい、と手厳しい。

 

私はもちろん純米酒は好むが、小泉首相のような「純米」派ではない。米国民主主義の歴史や、快活さ・率直さを感じさせるアメリカ人が好きであっても、世界の銘酒ならぬ盟主であるかのような傲慢不遜なふるまいは虫が好かぬ。これまでの日本への度重なる無心も、露骨で高飛車。まるで属国扱いだ。

 

虫の居所が悪そうな米高官の一言一言が容赦なく突き刺さった。最近では、「お茶会じゃないんだ。逃げるな」という一喝も効いた。もちろん、その前からわが高官は、虫の知らせとばかりに自衛隊出兵を着々準備中だけど。

 

ただ、早々に「戦死者」でも出たら対米従属批判が蒸し返されるだろうから、むしろ兵より先にカネを出したいのではないか。いずれにしろ、来るべき総選挙では、「自民党をぶっ壊す」どころか国民の生活を壊して虫の息にさせた小泉改革の「実績」とともに、自衛隊派遣問題が大きな争点になるはずだ。

 

時あたかも、支持率が急降下し、各国の非協力・不追随に腹の虫が納まらない米大統領が来月来日する。出迎える新幹事長もまた、「ちぎれるくらいに尻尾を振る」のだろうか。爽快であるはずの秋なのに、きな臭さはアキアキで、誰もがムシャクシャ気分だ。新内閣も、この国民の心を蝕む「ふさぎの虫」は無視できないと思うのだが…。

 

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