イラク、いくら、くらい 2003.7.15掲載 徳島新聞
防衛庁の組織に暗い私でも、局長クラスというのはどのくらいの位かくらいは想像がつく。新潟県加茂市の市長さんは元防衛庁教育訓練局長だったというから、けっこう「偉い」人だったようだ。その人が、イラクへの自衛隊派遣に反対して「イラク特措法案を廃案とすることを求める要望書」を全国会議員と閣僚に送った。一瞥してポイというくらいが関の山だろうが、首長としての意見を毅然と表明することに、元の位はどうあれ偉い人だと思った。
今の延長国会で、国民が詳しく知らないままに「イラク復興支援特別措置法」という名の、「自衛隊海外派兵法」あるいは「占領軍支援法」もしくは「憲法九条ないがしろ法」が成立しそうだ。毎度おなじみの「粛々」自公保路線に腹が立つやらあきれるやら…。
国会延長にはいくらかかるか。一日二億円だって。もったいない話だが、お金以上の問題が大きい。ブッシュ政権の度重なる要請「ショー・ザ・フラッグ(日の丸部隊の派遣)」を受け入れ、続いて先月の日米首脳会談で約束したのだろうが、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上部隊の派遣)」に懸命だ。問答無用で一気呵成に、という感じ。
そんな姿を見て口さがない私の友人たちは、かの政治家たちのことを「餌目当ての忠犬」だとか、くっついては捨てられ消える「金魚のフン」「下駄の雪」だのと、飲み放題の言いたい放題。もちろん私も同席、同感だ。
同感・共感できるのは、先の加茂市長さんの要望書も同様。「終戦」後も毎日のように米英軍兵士が殺されているのだから、今のイラクに「非戦闘地域」などあろうはずがない。そこへ日の丸を付けて乗り込み、憎悪増幅中の占領軍を支援するのだから、たとえ戦火を見なくても火を見るより明らかのは、親日的だった中東全域に反日感情を広げるだろうということ。悲しいことだ。
自衛隊OB・加茂市長さんは言う。「これは明確な海外派兵であり、憲法違反だ」と。そのとおりだ。自衛隊員は「イラクで命を危険にさらすことを決意して入隊してきた人たちではない」とも…。しかし政府は、「戦死者」が出るのを想定し、早くも「手厚い賠償」と「遺族との後腐れのない決着」を準備しているようだ。一度尋ねてみたい。イラク死傷者にはいくら?
今日は、「位とイラクといくら」の「三位一体」論になった。その結論は、自衛隊員のみんなもやはり同胞、君死にたまふことなかれ。一人も殺すな、殺されるな。