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ここに来た理由を見つけた
二日間は、ずっとそこにうずくまっていた。進まなきゃいけないのは解ってはいた。 でも、僕はこの石碑が何故か淋しがっているような気がしてならなかった。 白い(多分地球上には存在しない成分で出来ているんだろう)その石碑が、全部姿を 現すまで僕は穴を掘り続けた。たとえそれが無駄な行為だとしても。 汗が自然と流れ落ちる(夜でも動くと汗が流れるんだ)変な事に感心してしまったり していた。一メートル足らずのその石碑を、僕は着ていたシャツを脱ぐと磨き始めた。 綺麗に磨きあげると、少し休むためにそこに座り込んだ。 「綺麗になったじゃないか」 僕は誰にともなく話しかけた。 ──ありがとう── 風の中に、そう聴こえた気がしたけど、少しも驚かなかった。 「これから、僕はどうすればいいのかな?」 答えなんて帰ってくるはずもないのに、聞いてみた。 その次の瞬間、僕は現実の世界に帰っていくのを感じた。
そして、その石碑に別れを告げる瞬間になった。僕は、そっと石碑を抱きしめて 暫く、じっとその冷たい感触を素肌に感じていた。 「もう行くね、君が僕を待っていてくれて良かったよ」 その石碑に残された誰かの概念に向かって僕は喋りかけた。 僕は、そっと石碑に小さくキスをして歩き出すために立ち上がった。 僕の後姿を、暖かく見舞ってくれているだろう誰かに向けて手を振った。 相変わらず続く漆黒の夜と白い月灯りだけが存在する世界。 僕に変化を示してくれた唯一の存在だった。また何もない道は続く。 でももう迷わずに行ける。僕の歩く道が正しいって事を自信を持って知っていたから。 風が僕の背中を押してくくれるから、僕は足を速めて先を急ぐ。 何の音さえ存在しない、草木一つ育たない真夜中の砂漠で恐ろしい程の孤独が 満ち満ちていく。この孤独間をずっと見てきたのか? 誰かが、見つけてくれるのをずっと待って、あの石碑に思いを託して。 僕なら、とっくに気が触れてしまっている恐ろしい沈黙の世界。 自然と口笛が僕の口元から零れる。泣きたくなるようなセレナーデ。 白い月と砂漠の中の口笛。僕は一人だけど孤独じゃなかった。
(僕ハ孤独ジャナイ)
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