僕は孤独じゃない

 

 石碑を見つけてからの足取りは速かった。何か、目的を持って始める旅って

言うのは唯漠然と歩く旅とは全然違っていた。

ある目的地点に向かって、その一歩一歩が近づいていくのが解った、

明日はたどり着けるかもしれない、そう思うだけで心も軽くなるし、重かった

足取りさえ軽々と進む。心なしか、ステップさえ踏んでいるような気がした。

たとえ、この砂漠が永遠に続こうともだ。

 僕は明日を信じられるし、この世界が僕が創り出した世界ではないと、

確信を持ってこうして歩いて旅を続けていられる。

遠い夜明けを待つように、登る月を見つめながらまっすぐ僕は白い砂漠を

歩いていく、小さな足跡を残しながら。振り返って、そのずっと先から続いてきた

僕の足跡を確かめる。本当にまっすぐ歩いてきたのか?

もう全て消えてしまっているのではないか? 

時々、休みたくなって砂の上に腰を下ろす時がある。

その瞬間が、向こうの世界に帰る時刻になる。

不思議な事にそれはほんの少ししか歩いていなくても、休みたいとそう思った時には

もう覚醒している自分に気付く。夢の長さなんて、人それぞれだ。

悪夢だと魘されてとてつもなく長く感じるし、反対に楽しい夢だとあっという間に

時間は過ぎて、目が覚めて溜息を吐く朝もある。

 

 遠くずっと先をみつめて歩く事にした。何か違う視点に気付くかもしれないと

思ったからだった。ここに来てから、気付いた事が一つあった。それは僕の視力は

現実世界ではほとんど眼鏡なしでは歩けない程悪かった。

この世界を歩く内に、ずいぶん遠くの物さえ見る事が出来るようになっていた。

それは、現実世界でもそうなんだからこれは奇跡と言っても良かった。

下手な視力矯正センターに通うより、ずっとこっちの方が効率が良かった。

なんたって、眠っているだけでいいんだから(実際は、歩いてだが)

遠い砂の中に何か光る物を僕は見逃さなかった。

あの石碑を見つけてからどれくらい時間が経ったのか、とにかく何かの手がかり

となる物かもしれない。僕は、走ってその場所を目指した。 

      (ソシテソコニ見ツケタ物は?)

 

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