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そしてそこで見つけた物は
キラリと光っていたのは、小さなペンダントだった。 緑色の石をトップにしたルーン文字のような物が彫ってあった。 もしこの石がエメラルドだとしたら、それ以上の硬い物質でないとここまで 完璧に文字入れする事は出来ないんじゃないかと思う程、それは美しく そこに存在していた。拾いあげると、シャランと音がして、月の光を反射して それは一筋の光を放った。ある一定の方向を目指すように。 僕は、今まで歩いてきた道のりが間違ってなかったと確信を持って頷いた。 ───大丈夫だよ、ちゃんと辿りつくから─── 何処までも続くと思っていた旅も少しずつ進歩の兆しを見せ始めた。 それは、もうすぐ終わりが近づいているのを暗示してくれているのか? 僕は、そのペンダントを自分の首に落とさないように付けてみた。 時折、美しい光を放つベンダントは僕を導いてくれているかのように 僕の胸の上で軽く揺れていた。 じっと見ていると、そのルーン文字の意味が不意に心の中に浮かんできた。 ───導く者─── そう心に浮かんできた。 このペンダントの持ち主の事なのだろうか?それとも? 「君は、ずっと誰かを待っていたの?」 答えるはずもないのに、不意に話かけながら歩き始めた。
ふと気付いた事があった。あんなに姿、形、場所を変えなかった月が・・・。 満ち始めているのが、日に日に目に見えて解ってきた。 最初からペンダントを見つけたその日までは、ずっと三日月のままで僕の歩調に 合わせて着いてきているように見えていたのが、今はほぼ満月になろうとしていた。 あの月が丸く満ちた瞬間に、僕の旅が終るのだろうか? あと何日かで僕は君に出逢えるんだろうか? 石碑に詩を刻み、ペンダントに想いを託して置いていった君に。
その日が来た事は風が教えてくれた。 それまでとは違う強い風が、僕の耳元に歌を運んできた。 それは聴いた事もないほど綺麗な音楽だった。 オカリナの音色に似たその音色は段々近づいてくるのが解った。 僕が歩みを強めると、音はますます大きく聴こえてきた。 そしてそこには・・・。
落ちていたのは小さな縦笛が一つだけ。風がその口元に吹きつけて、音色を 立てていた。風が、音を覚えて故意に吹いていたとしか思えなかった。 僕はその笛を広い上げた。周りを見回してみた。月だけが、丸く形を変えて 僕の姿を影と一緒に浮き上がらせている。 小さな変化があった───影が出来ていた─── 今まで、実態があるようでなかった僕の影、これが意味する事は?
(Cry For The Moon ──ナイ物ネダリ── )
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