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これは唯の夢じゃない
現実の世界での僕が真実なのか? 夢の中の僕との違いがあるのか? 僕は、二つの世界を行ったり来たりしている、そんな気がしていた。 それくらい、二つの世界はリアリティさを持って僕と共存していた。 夢の国(何か名前を付けようと思った僕は、いろいろ考えてみたけど浮かばなかった から、そう呼ぶ事にした)漂流三日目にして、やっと事の重大さに気付いた僕は、 一体ここで何をやらなければいけないのかを考えてみた。 きっと何かの意味があるからこそ、僕はここへ呼ばれたんじゃないかと。 少なくとも、ここにいたって何も始まらないから、とりあえず歩き出す事にした。 砂漠なんて歩いたのは初めてで(それは、当たり前の事なんだけど、普段の文明生活 に慣らされた身体には、歩くのでさえやっとだった)海の砂浜しか知らない僕は、 まったく違う砂漠に果てしない孤独感を感じた。 とにかく、歩くしかする術もなく白く光る砂の上をゆっくりと一歩を踏み出した。 サラッと、足の下で誰も足跡を残したことのないような砂が小さな音を立てる。 歩きながら振り返ると、僕の足跡だけが小さくテンテンと続いていた。 白い月と僕と砂漠。 あとは風だけが僕がここにいる事を知っている。 一人で歩く砂漠は、広い大海で小さな小船に揺られているのと同じ位不安感がつのる。 どっちに歩いていけばいいのか、方角すら解らないから自分の感覚通りにまっすぐに (多分まっすぐなはず) 歩くしか仕方がなかった。 しばらく歩くと、少しは砂の柔らかさに足が慣れてきたから、目をつぶって歩いてみたりしてみた。 時折、ジャンプしてみたり、走ったり、寝転がったり、疲れるとしゃがみこむの繰り返し。 この僕の姿を誰かが見ているんじゃないかと想像して、後を振り返って アッカンベーをしてやった。ここの砂は信じられない程の肌理の細かい粒から成り立っていた。 手に取ると、「サラサラッ」と零れ落ちていく。 四日目、昨日の目が覚める瞬間に立っていた場所に再び戻ってきた。 僕の足跡は、風にも消える事なく存在していた。永遠にずっと・・・。 白い月は、形を変える事なくここに存在していた。ここでは、時間の流れなんて 在って無いような物だって事が、ようやく僕にも解り始めていた。 もう何日こっちに居たんだろう?歩き続けるのに何の意味があるんだろう。 こんなに歩いてるのに、変化はまだ訪れない。不思議な事にここでこんなに歩いているのに、 現実の世界で目覚めても疲労感は少しも残ってはいなかった。 と言う事は、これはやっぱり唯の夢なんだろうか? 長く歩き続けて、僕が夢の国から現実に戻る瞬間は不意に訪れる。 風が吹きはじめて、一瞬砂煙が砂漠に変化を起こす。 僕はその煙の中で目を閉じたら(もちろん防護のつもりで)いつものベッドの中だった。 そして、ある日小さな変化が訪れる。 砂漠の中に埋もれていた、小さな石碑に僕は出会った。 ほとんど、埋もれかけて危うく見落として通り過ぎる所だった。 「何だ?石碑がなんでこんな所にあるんだ?」 とにかく、その石碑が埋まってある砂を僕は一生懸命に掃った。 そこには、見た事もない不思議な象形文字でこう書かれてあった。
──月の砂漠を旅する人は 心を探す永遠の旅人よ その寂しさを知っている その宇宙に存在して 白い月は私を照らし出す あなたが辿りつくその日まで──
不思議だけど、僕には意味が解った。 (ココニキタ理由ヲ見ツケタ )
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