Cry For The Moon ──無いものねだり──

          

         これは夢なのか?  

 

  月が今夜も、空高く昇り始める。歩き出す準備を始めないと。

昼間の暑さを避けないと、身体を壊しそうな熱砂の砂漠(普通なら)

歩き続けても見つかる保障はない、あるのかすら証明されていない

オアシス(それとも、他の何か?)を探して、今日もまた、唯歩き始める。

 一体、何を探しているのか?自分でも解ってないから笑える話。

気が付いたら、ここに立っていたから、ここは夢なのか?現実なのか?

昼間は、多分普通の世界の中にいて生活をしているらしい自分の暮らし。

疲れた身体をベッドに横たえた瞬間、もうこちら側に来ている。

 白い砂と銀色の月と漆黒の空、この三色だけがこの世界の色。

いきなり、広大な砂漠に放りだされてとまどったのは最初の数日。

三日も続けて、同じ場所に立っている夢(ココガホントウニ夢ナノカ?)

を見たら、誰だって何かをしなければと言う気になるぞ。

確かに夢なのだろう、例えば喉が渇いたなとかふと感じると次の瞬間には、

その渇きが収まっているし、何か食べたいとか思うともう空腹感は消えていたから。

唯、不思議な事に五感は起動しているらしかった、寒い、暑い、眠気も感じるし

痛みすら現実感を持って、降りかかってくる。(これって夢なんだろう、だったら

痛みなんか感じなくったって)誰に対してなのか文句も言いたくなる。

最初の一日目、不安になって大声で人を呼んでみた。こんな風に。

「誰かいませんかぁ?おーい、すみませーん」

シーンとした中、自分の声の振動だけが飲み込まれていく。

幸い、月の灯りが信じられない程の明るさで周りを照らしているから、

暗闇に対する恐怖は微塵も感じられなかった。

風が、耳元を駆け抜けていった瞬間、何の音も運んでは来ないのに気付いた。

何の匂いすらその風の中にはなく、ここが何の生物も存在していない砂漠であるらしい

事は、解ってきた。(少なくともここ数キロ範囲には何もない事は感知出来た)

二日目、気が付くと同じ場所に立っていた。

「またこの夢か・・・」

 夢だって言う事は、不思議な事に自分でも理解は出来てはいたからまだ救われる。

(だって、夢なら覚めるじゃないか?そうだろう、普通は)

唯、この夢が覚めるその瞬間を座って寝転がって待つ事にした。

三日目、やっぱり同じ場所に立っていた。同じ目線の高さに、月が位置していたから

今が秋だって云う事は解ってはいた。そろそろ、これは何か意味があるんじゃないかと

気付き始めた。幾ら、僕が鈍感野郎だからってそれ位は解る。

前の二日間は、歩きもしなかったから、だから同じ場所に帰ってくるんじゃないか

と思い始めた。(実際 、そうだったから実によく出来た夢だ、試しに歩いてみたら

次の日はその続きからだった。ちゃんと昨日の夢の続きから始まっていた)

三日目にして、やっと僕は自分の置かれている

状況に気が付いた。(コレハ、タダノ夢ジャナイ)

 

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