| 手拭い・タオル、血液型 05/2/23 |
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| 寺尾判決において、「自白を離れて客観的に存在する証拠」 としてあげられているもののうちの残りの 「血液型、手拭い・タオル」 について紹介する。 |
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| 手拭い・タオル |
| YNさんの死体を後手に縛るのに使われていたのが手拭いで、目隠しに使われていたのがタオルである。 |
| タオルは、東京の月島食品工業が1959年~1962年に得意先に配布した8434本のうちの1本である。手拭いは、五十子米穀店が1963年の正月の年賀用に配った165本のうちの1本だった。 |
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| 1審で、検察側は <石川さんが勤めていた東鳩製菓保谷工場にも配られ、ここで野球親善試合の参加の賞品として配られたことがあり、石川さんは選手であった> と主張した。 |
| 1審内田判決は、「目隠しするのに使われたタオル1枚につき、被告人は入手可能の地位にあった」 と認定したが、手拭いにはふれなかった。 |
| しかし、寺尾判決は 「捜査当局は・・・その配布経路を追及し、第2次逮捕のころにはほぼ被告人方にも手拭い・タオルが存在していたことに確信を持っていたことが窮われる」 として、手拭いも石川さん宅にあったと推認した。 |
| 2審段階での話はこうであった。<165本中155本が回収され、3本が使用中を確認された。犯行に使われたのは残りの7本のうちの1本である。> |
| 石川さん宅からも1本が回収された。問題はここからだが・・・検察は、<石川さんの親戚のSI からも1本が回収されたが、実は2本配られている (SI は1本と主張)。また、石川さんのとなりのSMは、配られたことになっているのに配られていないといった> と主張した。 |
| 寺尾判決は、なんと・・・ |
| 「当審 (第14回) における滝沢直人検事の証言によれば、手拭いは五十子米屋から被告人方へ1本配布されたが、警察では被告人方から1本回収した、ところが被告人の姉婿SI は五十子米屋から2本配布を受けたのに1本しか貰わないと主張し、 |
| 被告人方の隣家のSMは五十子米屋から貰っていないと主張したので、被告人方でSI 方かSM方から都合をつけて警察へ提出したか、5月1日以前にどちらかの手拭が偶然被告人方へ紛れ込んでいたかのどちらかであると推測したというのである。 |
| ところで、被告人が家人と相謀って5月1日のアリバイ工作をした事実があること、家人も、関源三警察官が万年筆をあらかじめ勝手出入口の鴨居の上に置いておき、そこから万年筆が発見されるような工作をしたと主張していることなどを考え合わせると、手拭いについても家人が工作した疑いが濃い。 |
| 被告人が五十子米屋の手拭いを入手し得る立場にあったことを否定する事情は認められない。」 |
| つまり、<石川さん宅から回収した手拭いは、SI かSMから都合をつけてもらって提出したもので、石川さんの家にあったものが犯行に使われた> というのである。 |
| アリバイ工作などといえばいかにも犯行をごまかすために、なんらかのトリックを使うか、綿密な工作をしたかのような感じがあるが・・・何のことはない。 |
| 5月1日に仕事をさぼったためにアリバイがはっきりせず、ID養豚場関係者があらわれて行く中で心配になった父親が、「兄と一緒に働いていたことにしておけ」 と言ったというだけのことなのだ。当然、すぐにばれている。何がアリバイ工作か! |
| さらに、万年筆を巡る関の疑惑について、「おかしい」 と言っていることが手拭いに関する 「工作」 (?)
の根拠とされる。石川さんの周辺だけが 「工作」 ・・・もっとはっきり言えば、うそつきだというのである。 |
| タオルをもらっていないと主張した人は他にもいた。また、4人は既に使って捨てたと言っているのである。これらは、なんの疑いもなく受け入れられている。この違いはなんであろうか・・・分かりきってはいるが・・・。寺尾差別判決といわれるもう1つの所以である。 |
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| 五十子メモ |
| 最高裁・上告審において、1976年8月30日に13年を経て、五十子米店の配布メモ (便せん4枚) が開示された。 |
| 弁護団はこのメモと回収された手拭いを徹底分析し、その結果、回収・確認されたのは158本ではなく157本であったこと、SI およびSMの主張が正しかったことを確認し、補充書 (77年4月26日) として提出した。 |
| また、東鳩保谷工場長の、「自分は盆暮に1・2本もらった」 「野球の賞品で配ったかどうかは分からない」 という証言をもとに、検察側の主張がまったくもって想像にすぎないことを明らかにした。 |
| しかし、最高裁は77年8月9日、上告を棄却。手拭いに関する補充書を全く無視した。 |
| 「・・・被告人が、本事件発生当時本件の手拭及びタオルを所持していたと直接認めることはできないが、それらを入手することが可能な立場にあったといえるのである。 |
| このことと、全く異なる経路で配られた右の手拭とタオルとを二つとも入手する可能性をもつ者は極く限られるということとを併せ考えると、原判決が右の手拭及びタオルの存在を被告人と犯人とを結び付ける証拠の一つとして挙げたのは、正当である。」 (上告棄却決定) |
| ちなみに、第1次再審請求において、検察側も手拭いが1枚足らないことを認めざるを得なかったが、「警察に保管中紛失した」 と開き直った。高裁・四ツ谷裁判長はこれを追認、再審請求を棄却した。だが、手拭いについては、今もなお争点の一つである。 |
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| しかし・・・ |
| 石川さんの 「自白」 では、YNさんを雑木林に連れ込み、手拭いで松の木に後手で縛り付け、タオルで目隠しをし、一度、松の木からはずし、再度後手に縛った、ということになっている。 |
| タオルで目隠し?・・・普通に考えると、車でどこかに連れ去るとか、見られてはならない人物がそこにいたというなら話は分かる。しかし、もう、既に顔は見られているのである。なぜ、目隠しをする必要があるのか。必要 (?) というなら騒がれないように猿ぐつわをして口を塞ぐことだったはずである。 |
| 手拭いで松の木に後手に縛り付ける? 手拭いでそんなことができるだろうか。それに、人を縛り付けるというのだからもっとましなものがあるのではないかと思ってしまう。たとえば、自転車に付いていたであろうゴム紐とか・・・。 |
| しかも、手拭いで後手にというが、手拭いの片方の端で片手を縛り、もう一方の端で残りの片手を縛り、それを真ん中で結び合わせるというおそろしく複雑な縛り方がなされている。ちょっとでも抵抗されれば絶対にできない。死後に縛られたとしか思えないのだ。 |
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| このような不自然さは、死体の状況に合わせて石川さんの 「自白」 が誘導されたからとしか考えられない。真犯人の意図がどのようなものであったかは分らないが、仮に捜査の行方を真犯人からそらせることであったなら、まんまと成功したと言わなければならない。 |
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| 血液型 |
| 1審内田判決では、「被告人の血液型は、B型で、被害者Yの膣内に存した精液の血液型と一致する」 とだけなっている。 |
| しかし、2審寺尾判決では、ID養豚場関係者への見込み捜査を追認し、石川さんにたどりついたのは自然な流れと断定した。曰く・・・ |
| 「・・・ID豚屋関係者21名について、5月16日から同月23日にかけて血液型の検査が行われた、・・・、被告人以外にはB型の血液型のものが1人もいなかったことが認められる。・・・ |
| ・・・捜査官は、被害者の膣内に残された精液の血液型がB型であることを重視していたところ、ID豚屋で5月1日の夜盗まれたスコップが5月11日に死体発見現場付近で発見されたことから、 |
| ID豚屋の従業員や出入業者に捜査の綱を絞り、それらの者の筆跡・血液型・アリバイなどを捜査した結果、被告人に嫌疑をかけるに至ったもので、その経過は極めて自然であると考えられる。」 |
| だが、養豚場関係者で調べられたのは21人ではない。アリバイについては27・8人は対象とされたのである。血液型だけ21人を調べたというのはふに落ちない。日本人の25%がB型なのだから、21人中B型は石川さんだけというのは出来すぎた話だ。 |
| 本当だとすると、もしかすると、この21人に入れられなかった人たちがB型だったのかもしれない。実際のところ、2審において、21人に入れられていないFI が自分もB型であると証言している。 |
| 捜査は恣意的に石川さんを犯人とする方向で行われ、それ以外の情報は切り捨てられていったのである。 |
| だが、仮に緻密に捜査が行われていたとしても、B型だということをもって、犯人であるという情況証拠とはならない。日本人の4人に1人はB型なのだから。 「自殺」 したとされるGOだってB型だったのだ。 |
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| 「おもて試験」 「うら試験」 |
| この血液型を巡る問題は、第2次再審請求から新たな争点として浮上した。弁護側の主張を要約すると・・・ |
| <血液を用いてABH(O)式血液型を判定するに当たっては、赤血球表面の細胞膜のABH(O)の各凝集源 (抗原) の存否を調べる血球側からの試験 (「おもて試験」) を行うとともに、 |
| 血清中の抗A、抗B、抗H(O)の各凝集素 (抗体) を調べる血清側からの試験 (「うら試験」) を実施し、両試験の検査結果に矛盾がないことが明らかになった場合にはじめてその血液型を判定すべきである。 |
| 五十嵐鑑定は、「おもて試験」 を実施しただけで 「うら試験」 は行っておらず、しかも、「おもて試験」 の判定用血清に要求される凝集素価をはるかに下回る凝集素価8倍の抗血清を使用しているなどの点で、適切でなく、重大な欠陥がある。 |
| 五十嵐鑑定では、YNさんの膣内の精液の血液型はB型と断定できない。また、YNさんの血液型もO型と断定できない。したがって血液型を 「自白を離れて存在する、客観的な積極証拠の一つ」 とすることはできない。> |
| ・・・・・だが、以上の話は、こういう知識のないボクにとっては専門的過ぎてよく理解できないというのが正直なところだ。今の段階では、五十嵐鑑定には重大な欠陥があることが指摘され、これまで話の前提とされてきた血液型には疑問が提出されているということの紹介にとどめる。 |
| そのうち、分りやすく説明できるようにしたいとは思っているが・・・。 |
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