成人肺非結核性抗酸菌症化学療法ガイドライン~2023年改訂

日本結核・非結核性抗酸菌症学会 / 日本呼吸器学会 合同発表

2023年6月に改訂された本見解は、2020年の国際ガイドラインの動向を踏まえつつ、日本の実臨床に即した極めて重要な指針です。最重要ポイントと具体的な治療レジメンについて解説します。

1. 2023年改訂の最重要トピックス

2. 【菌種別】具体的な治療レジメン

肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)は、原因となる菌によって治療薬が異なります。日本で特に多い3つの菌種について解説します。

① 肺MAC症(Mycobacterium avium / M. intracellulare)

日本の肺NTM症の約9割を占める最も重要な病型です。「3剤併用」が原則となります。

病型・重症度 投与方法 具体的な薬剤と投与量
空洞なし・非重症
(軽~中等症のNB型)
A法:連日投与
または
B法:週3回投与
【連日(A法)】
・CAM 800mg(またはAZM 250mg)/日
・RFP 10mg/kg(最大600mg)/日
・EB 10~15mg/kg(最大750mg)/日

【週3回(B法)】
・CAM 1000mg(またはAZM 500mg)/回
・RFP 10mg/kg(最大600mg)/回
・EB 20~25mg/kg(最大1000mg)/回
空洞あり・重症
(重度のNB型など)
A法:連日投与

初期アミノグリコシド
上記の連日投与(A法)に加えて、治療初期(3~6ヶ月)に以下のいずれかを併用する。
・ストレプトマイシン(SM)週2~3回筋注
・アミカシン(AMK)連日または週3回点滴(TDM/血中濃度測定が必須)
●高齢者などへの配慮(2剤治療の容認)

原則は3剤ですが、副作用(リファンピシンの胃腸障害や肝障害など)でどうしても飲めない高齢者の場合、例外的にマクロライド(CAMまたはAZM)+エタンブトール(EB)の2剤治療も選択肢として認められました。

② 肺M. kansasii(カンサシ)症

結核に非常に性質が似ている菌ですが、お薬が非常によく効くため、しっかり治療すれば治りやすいのが特徴です。

③ 肺M. abscessus(アブセッサス)症

非常に薬剤が効きにくく、NTM症の中で最も治療が難しいとされる難治性の菌です。

2023年の見解では、「初期強化期間(最初の数週間?数ヶ月は複数の注射薬+内服)」と、その後の「維持期間(内服や吸入)」に分けて長期間治療を行う考え方が明記されました。医療機関の専門的な管理必要不可欠です。

3. 治療の開始時期・期間・終了の基準

治療を始めるタイミング

「診断されたからといって、全員がすぐに薬を飲み始める必要はない」というのが日本独自の慎重なスタンスです。

治療期間(いつまで続けるか)

4. 副作用の注意点(特に注意すべき2大症状)

長期間複数の強い抗生物質を飲むため、副作用のモニタリングが極めて重視されています。

  1. エタンブトール(EB)による「視力障害(球後視神経炎)」
    ものが見えにくくなる、霧がかかったようになる、色が変わって見える(特に赤や緑)などの症状が出ます。
    対策: 治療開始前と、治療中も定期的に眼科を受診することが義務付けられています。おかしいと思ったらすぐに休薬します。
  2. マクロライドやアミノグリコシドによる「聴力障害・耳鳴り」
    キーンという耳鳴りや、高音域の難聴が起こります。これは一度進むと戻らない(非可逆的)ことが多いため、初期の耳鳴りを見逃さないことが大切です。

これら以外にも、定期的な採血で肝機能障害や血球減少がないかをチェックしながら、「1剤ずつ1~2週間遅らせて慎重に開始する」といった工夫も推奨されています。

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