Medical Update 2026
咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2025 改訂要約
実臨床で押さえておくべき主要ポイントと新戦略
2025年に改訂された第2版ガイドラインでは、遷延性・慢性咳嗽に対するアプローチがより具体化されました。特に「咳嗽過敏症」という概念の導入と、新薬の立ち位置が明確になったことが大きな特徴です。
1. 診断の基本フローとRed Flags
咳嗽が続く期間により、診断の優先順位を整理します。
- 急性(3週未満): 感染症が主体。対症療法が中心。
- 遷延性・慢性(3週以上): 胸部XP撮影を必須とし、重大疾患を除外。
★注意: 見逃し厳禁!Red Flags
血痰、呼吸困難、著しい体重減少、夜間盗汗、持続する発熱がある場合は、速やかにCT検査や専門医への紹介を検討してください。
2. 咳嗽過敏症候群 (CHS) の概念
CHSとは:
気道炎症が消失した後も、迷走神経の感受性が亢進し、わずかな刺激(会話、冷気、匂い)で咳が出る状態を指します。「原因不明の咳」の一部は、この神経学的な過敏性が主体であると定義されました。
3. FeNO測定による治療戦略の層別化
呼気一酸化窒素(FeNO)は、好酸球性炎症(咳喘息など)の診断とICS(吸入ステロイド)の反応性予測に不可欠です。
| FeNO値 |
主な病態の示唆 |
推奨治療 |
| 35 ppb以上 |
強い好酸球性炎症 |
ICS / ICS+LABA |
| 20-35 ppb |
軽度の炎症あり |
臨床症状によりICS検討 |
| 20 ppb未満 |
非好酸球性(CHS, GERD等) |
原因に応じた治療・新薬検討 |
4. 難治性慢性咳嗽への新薬:P2X3受容体拮抗薬
既存治療(ICSやLAMA、抗ヒスタミン薬等)で改善しない症例への選択肢です。
ゲファピキサント(リフヌア)
- 適応: 難治性慢性咳嗽、原因不明の慢性咳嗽(8週以上)。
- メリット: 末梢の咳反射を直接抑制する新しいメカニズム。
注意:味覚障害のインフォームドコンセント
高頻度(30~60%程度)で味覚異常が報告されています。投与開始前に「味が変わる可能性があるが、休薬で戻る」ことを説明することが継続の鍵です。
5. 明日からの外来チェックリスト
- ● 3週を超えた咳嗽には、まず胸部XPで肺癌・結核・心不全等を除外したか?
- ● FeNO測定を行い、「ステロイドが効く咳(咳喘息)」かどうかを評価したか?
- ● 胃食道逆流症(GERD)や後鼻漏(SBS)の随伴症状を聴取したか?
- ● 標準治療で改善しない場合、「咳嗽過敏症」として新薬の適応を検討したか?