うどん屋訪問記2


 讃岐うどんは奥が深い。1つとして同じうどんは存在しない。そんな個性豊かな讃岐のうどん屋の訪問記・第2弾をお届けします。旨いうどんを喰って喰って喰いまくろう!!


第11回 木村(綾歌郡飯山町)

 店構えとは対照的に店内は活気であふれかえる木村。57番札所。格別特徴はないものの、トータルバランスで勝負する、ある意味オーソドックスなお店。県外客は、「こしがどうだ」とか「珍しいうどん屋」を求めてやってくる場合が多いが、木村はそんな観光うどんは最初からお断り!という雰囲気を持っている。したがって常連客に人気のある、讃岐の人たちが認めるうどん屋なのだ。結構地味な印象があるが、私はそんな木村のうどんに惚れ込んでしまった。
 かけをいただく。いわゆる「そのまま大」だ。「そのまま」とは麺を温めずに、ゆでた後に入れる水の中から、そのまま出てきた麺をいう。木村はいわゆる製麺所タイプで、出汁はテーブルの上の土瓶をかけていただく。この土瓶が非常に紛らわしい。お茶と間違えるのだ。初心者には戸惑ってしまう。実際に出汁がなくておろおろ店内を見渡している人や、湯飲みに出汁を注いでしまっている人たちを見かけた。このへんが「地元の讃岐うどん」らしい。いいシステムだ。 

 旨いと評判のちくわの天ぷらをのせていただいてみる。食欲をそそるカツオ風味の出汁のにおい。最高だ。まずは出汁。これはいいぞ!そのままの麺によくあう。かなり私の好みである。これは期待できる。いよいよ麺へ。一口いただく。旨い!!これは旨いぞ!強すぎないこしと喉ごしがちょうどいい。讃岐うどん=強いこし と思っている人は大間違い。このほどよいこしがまさしく讃岐うどんなのだ。本当のうどん通はこのトータルバランスで評価するという。地元に人気というのは納得だ。そういう意味で第1回に紹介した「寒川」と似ている。毎日食べても全く飽きないうどん、それが木村のうどんだろう。先にも述べたが私の中では「寒川系」と名付けたい。ということで私の評価は。寒川を超える評価だが、久しぶりにいいうどん屋に巡り会えた。近くにいれば毎日にでもきたい。とにかく旨かった。
 あと、各種ある天ぷらもぜひいただいてみよう!出口ではみんな満足した顔で帰っていたお客さんの表情が印象的だった。  (2002.2)


第12回 前場製麺所(綾歌郡綾歌町)

 R32から少し西へ入った所にある前場。大きな看板が特徴的。製麺所タイプでセルフのお手本みたいな所である。3番札所。入り口に3番札所の看板もあり観光客も意識した様子。

 残念なことに前場に到着したのは13:30。常連客もいない静かな時間になってしまった。いやな予感がする。この時間では麺は死んでいるのだ!そんな不安も持ちつつ早速かけをいただく。出汁にこれといった特徴はない。しかしなぜか安心できる味だ。格別旨い!とはいえないものの、非常に標準的な出来で地元では歓迎されるだろう。
 麺をいただいてみた。う~ん・・・、やっぱり時間が悪かった。麺が死んでる。こしはあるものの麺の表面は全くだめだ。これでは私のコメントはできない。後日また挑戦したい。 

 そこで後日もう一度やってきた。時刻は11:30。常連もいる最高の時間。
 出汁は、結構薄目だが、コクあり、甘さも感じられる。非常に奥深い味だ。一方、麺はいかにも手打ちの自然な印象であった。こしというよりも弾力性のある麺でもちもち感のする上品な印象が感じられた。しかしそれ以外私の印象には残らなかった。旨味はあるが、インパクトは少なかった。ということで私の評価は。店の雰囲気はよかっただけに残念であった。しかし、地元には人気があるだけにこちらも好みが分かれるのだろう。それと訪れるときは時間に注意。いくらいいお店でも時間には勝てない・・・。  (2002.4)


第13回 あたりや(高松市上天神町)

 高松市の上天神町は現在、高松自動車道の延長に伴って高速道路
の建設が進んでいる。したがって、工事に伴う交通渋滞も相当のもので
ある。そんな上天神前交差点のすぐそば、R11バイパスのパチンコ店
の裏にある、あたりや。36番札所。最近テレビでも取り上げられすごい
人気である。店の前にはごらんの通り行列ができる。パチンコ店の裏と
いうディープ度の高い場所ではあるがこの行列。これだけの行列、山越
以来だ。見るからに旨そうなうどん屋だ。
 私があたりやに今まで訪れていなかったのは、いろいろな噂を聞いて
いたからだ。これだけの人気店、当然、あたりやファン、アンチあたりや
がいても不思議ではない。今回、自分の舌で評価しようと乗り込んだ。
 あたりやといえばご存じ「宮武系」これで宮武系を制覇した。さてさて
いかがなものか。30分後、ようやく店内へ、宮武系といえばメニューは
シンプル。今回は「ひやひや」をいただく。
 さっそくいただいてみた。半信半疑であったが麺を一口食べて衝撃が
走った。旨い!旨すぎる!!どこがどう旨いのか表現できないがとにか
くすべてが旨い!!完全にはまってしまった。私好みのうどん屋を見つ
けた!!そんな感じだ。宮武系では一番ではないだろうか。やや薄目
の出汁と何ともいえない麺のこし、つるつる感に、一気にいける喉ごしど
れを取っても最高だ!これは何杯でもいける。天ぷらもいらない。とにか
く旨い!!
 ところが、にこにこ顔の私の隣で、地元の友人は顔をしかめる。「そん
なに旨いか?」という。どうやら友人の好みとは違うようだ。地元にはあ
まり評判がよくないのかな?でもいい。私にとっては久々に衝撃が走っ
たうまいうどん屋だったから・・・。ということで私の評価は10。満点だ。
1位ではないが1位に値する評価となった。誰が何といおうとあたりや最
高!!また行きます。  (2002.8)  


NEW第14回 彦江(坂出市横津町)


 入り組んだ住宅街に行列が連なる彦江。見つけるのは難しいとされていた彦江であったが,意外とすんなりたどり着いた。カーナビも進化したものだ。駐車場はないので,悪いとは思いながらも,土手沿いにいったん駐車。お店に急ぐ。
 彦江は,第1回巡礼の47番札所。今でも巡礼マップを持って来店する巡礼者を目にすることができる。
 さっそく店内へ。まだお昼前とあって店内は結構すいている。とはいっても席数は20席ほどのため,長居はできない。まずはどんぶりをとる。後は玉数を言うだけ。あとは温めるなり,トッピングなりすべてセルフだ。会計も自己申告。冷たい出汁は,冷蔵庫にあった。かけを注文。そのままでいただく。とっぴんぐなし,シンプルそのもの。麺は,角がけっこうシャープ。季節によって太さが変わるらしいが,比べたことがないのではっきりとはわからない。格別,太くとも細くとも感じられない。その見た目通り,コシはしっかりとある。固いだけではなく,しっかりと麺の主張を感じる。ほどよい舌触りと喉ごし,私の好きな麺だ。出汁はこだわりのイリコだし。これがいい!一気に飲み干す。この出汁なら何杯でもいけそうだ。飽きのこない高品質のスタンダード出汁(ちょっとわかりにくいが・・・)。格別特徴があるわけではないが,普通なのに旨い!地元にうける理由はここだと思う。
 高レベルで普通に旨い!この言葉がぴったりの彦江。毎日食べても飽きないうどん。ということで私の評価は。旨いけどもうひとつ特徴がほしかった。  (2002.9) 



NEW第15回 田村(綾歌郡綾南町)


 

 R32から県道を走ること数分。路駐の行列が並ぶ。その先には小さな看板のうどん屋,「田村」が見える。路駐がなければ見落としそうだ。
 第1回巡礼の7番札所。「うどん通をもうならす田村の麺」。これが田村の生命線である。かつては通好みのうどん屋として名高い田村だったが,最近では,巡礼者も多く訪れる。
 すでに店内は行列でいっぱいである。製麺所タイプだが,格別なディープ度は感じさせない。店内は狭く、麺は厨房の中でいただく,至ってオーソドックス?なタイプだった。他の客の動きを見ていれば戸惑うことはない。
 一方で,印象的だったのは,親父さんだった。麺を打つ,茹でる,どんぶりへ盛る,会計まで黙々と,また慣れた手つきで淡々と進む。まさに職人技だ。例のごとく「かけ」をそのままでいただく。出汁,トッピングは奥でとる。勘定はすべて自己申告制。値段も安い!
 まずは,出汁から。う~ん,ちょっと塩からいかも・・・。風味は十分だが,ちょっと主張の強すぎる出汁と思われた。麺をいただく。こちらはいい!コシ・のど越し十分だ。咬んだあとにほのかに残るやわらかさ。たまりません。癖になりそうな麺だ。ただ,こちらも少し塩辛い。おそらく茹で汁を変えていないので,塩が十分にできっていないのかもしれないが。

 今や,讃岐うどん有数の名店,田村。やはり好みはさまざまだと感じた。残念ながら,私には評判とおりの評価はできなかった。ということで私の評価は。ちょっと麺と出汁のバランスが悪かったかも・・・。ただ,これだけの人気店,もう一度挑戦したいと思う。次に期待しよう。
   (2002.10)



NEW第16回 久保(高松市十河東町)


 「久保」といえばあの名店,番町の「久保」を思い出す。私も学生時代よくお世話になった。初めて食べた讃岐うどんが,番町の「久保」だったように記憶している。あっさりした出汁に引き締まった麺。最高でした。そんな番町の「久保」は数年前に,惜しまれながら閉店。幻となってしまった。ところが,香川県内には他にも「久保」があったのだ。ひとつは香西北町,そして十河東町の「久保」だ。今回はそんな「久保」のメームバリューと駐車場の行列から,ふと立ち止まったことから始まった。ちなみにこれらの「久保」は,すべて番町の「久保」とは関係ないのであしからず。

 店内は込み合っている。地元率高し!普通のセルフタイプ。メニューもいろいろある。これが人気の秘密なのか?今回は釜玉な気分だったので,釜玉小に挑戦。
 まず,小でありながらボリュームは満点。見た目の美しさもいい感じ。早速いただいてみる。麺はかなり柔らかめ,コシはいまいちだった。フワフワしてこれでは,讃岐うどんとはいえない。全く口に合わなかった。出汁も中途半端。卵との相性もいまいち。山越の釜玉には程遠い。ついでに嫁さんが注文した「かけ」もいただく。正直ダメでした。ひとそれぞれとはいうが,これがいつもの出来とすれば,全くオススメできない。とはいえ,地元にこの人気・・・。納得いかない・・・。どこがいいのだろうか?逆にこれはもう少し調査しなくてはいけないだろう。ということで私の評価は,。地元には人気があるので,いいところがあると思う。それとも私の舌がおかしいのか?よくわからない今回の訪問となった。結果的には「久保伝説」が崩れてしまったことに違いはない。

 最後に辛口評価で,久保ファンの方,お店の方失礼しました。評価が変わり次第,書き直します。
   (2003.3)



NEW第17回 馬淵(高松市太田下町)



 農林大臣賞受賞のうどん屋「馬淵」。これが今回訪れた馬淵の肩書きであることは,有名だ。第1回巡礼の31番札所。新しく開通したサンフラワー通りの太田下町から西へ結構いい道を進めばすぐ。細くなる道の手前なのでわかりやすい。ところがR193方面の西からのアクセスは,最悪。住宅街の細道を進むことになる。壁で1カ所は車に傷を付けるくらいの覚悟でどーぞ。

 香川県には,長尾の「入谷」もそうだが,農林大臣賞受賞のうどん屋というのが何軒かある。農林大臣賞受賞とあって,その味はお墨付きだが,意外と知られていないのが,受賞の基準。農林大臣賞は,単に味を競うのではなく,「店でゆでてきた麺を審査員が一筋か二筋食べて点数を付ける」のだそうだ。2~3時間たって一番美味しい麺を選ぶ品評会なのである。したがって,ゆで上がりをすぐいただく私たちの評価とは,根本的に異なるのである。とはいえ,「入谷」でその旨さを実感した私にとって馬淵は,非常に魅力的にうつる。

 早速店内へ。愛想のよい親父さんがいる。それ以外は普通の製麺所タイプだ。地元率は非常に高い。お持ち帰りも多い。シンプルにかけを頂く。農林大臣賞受賞の実力はいかに。・・・麺が柔らかいぞ!コシがないぞ!これが第一印象。「入谷」もそうだが,農林大臣賞はあまりコシをよしとしないのか,コシの弱い麺が多い。(入谷はそのコシの加減が好きなのだが)確かに徳島のうどん屋みたいに,コシだけにとらわれた「固いだけの麺」は勘弁してほしいが,馬淵のコシはなさすぎる!バランスのとれた出汁と旨い天ぷらが台無しだ。ちょっと好みとはかけ離れていて,残念だった。ただ,強いコシが苦手な人にはオススメかもしれない。そんな第1印象だったが,食べているうちに次第に旨さが広がってきた。柔らかいだけの麺かと思いきや,麺が生き生きとしているのだ。柔らかさの中にも主張を感じる麺。このあたりが農林大臣賞受賞の実力といったところだ。柔らかいだけの「死に麺」とは訳が違う。「讃岐うどんにはこういった麺もあるんだ」と讃岐うどんの奥深さを知った。「馬淵旨し!」と言う人もいる。賛否両論分かれる究極の麺。馬淵に脱帽。
 私の麺の好みとは異なり,私の評価は,。出汁,天ぷらは良かっただけにもったいなかった。ちなみにこちらのご近所には,LEONEさんのご自宅があることも付け加えておきます。LEONEさんは,最近では余り行かなくなったみたいです。   (2003.8)


第18回 もりや(香川郡香川町)



第19回 やまげん(綾歌郡綾上町)



第20回 ふじよし(香川郡香川町)