「視点」の視点 1999.1.6 徳島新聞 

 

 

 徳島新聞夕刊で最初に見るのは、一面左下の「阿波なまり」。次に全体の大きな見出し順に目を通すのだが、後ろの「ちょっとええ話」と、この「視点」欄には必ず目が行く。

 

手前味噌ながら、私の知人にもそういう通読パターンが多いようだ。読者からの反響を見聞きするたびにけっこう「視点」が読まれていると、執筆メンバーの一人として喜んでいる。

 

 そんな私がいつも思い起こすのが、先に数年間執筆されたある方のアドバイスだ。身辺雑記のつもりで気楽に書けばいいが、ただの事象スケッチではなく、社会と人間の動きに敏感であること、権威とかに遠慮せずに率直な自分の意見を吐露すること。そんなご忠告だった。

 

 そのおかげで、いつも「気軽に」書かせてもらっている。だから私なりに心がけているスタイルは、いい意味での「軽薄短小」。文字通り「重厚長大」の反対で、ちょっとしたユーモア、「遊び心」も味付けしたい。とっつきやすい文章を気軽に楽しんでもらえれば、クスッと笑ってもらえれば、それで本望。今年もどうぞご愛読をよろしく。

 

 ところで、昨年を象徴する文字のトップは、さすがに「遊」ではなく、「毒」だったとか。市長の逮捕など何かと注目された和歌山の、例のカレー事件を象徴しているのだろう。これら軽薄短小・重厚長大・毒・遊など、あらゆる要素を含む作品ぞろいで人気が高い作家に、井上ひさしさんがいる。彼の演劇には、遊びと毒がいっぱいだ。

 

 そういえば、「遊」=PLAYには、「演劇」の意味もある。そこで、井上さんをもっともっと軽く薄くばかばかしいほど楽しくしたような短小の舞台を新年早々にご紹介しよう。劇団四季や俳優座、文学座などとは比較にならない小劇団だが、最新ニュースを素材にした爆笑諷刺コントを連発しているプロ集団、その名も「新聞」ならぬ「ザ・ニュースペーパー」。

 

 結成した経緯から特徴的で、昭和天皇重病のころ、歌舞音曲の禁止、じゃないが自粛ムードの中、仕事を相次いでキャンセルされた若手の役者や漫才師が集まった。

 

 以来十年、政治や世相に笑いの斧を振るい続け、公演のたびにファンを増やしている。元総理の村山さんをはじめ、筑紫哲也・永六輔・黒田清さんなどがゲスト出演したのも話題になった。徳島公演では、「第十堰」も俎上に乗るはずだ。

 

 「軽薄短小+遊+毒」をもつコントの連発になるであろう1/29・青少年センターの舞台が楽しみだ。か細い「蟷螂(とうろう)の斧」ながら、タブーをつく彼らの舞台。そこにも鮮明な「視点」の視点がある。

 

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