熱い阿波から しんぶん赤旗(文化面) 2000.8.8
ずいぶん前だが、大阪での街頭インタビューがテレビで放映されていた。四国四県の名を言えますか、というものだった。ポピュラーな坂本竜馬の人気もあって、高知の知名度はさすがに高い。「坊ちゃん」の愛媛に続き、香川までは六割の人が正答したが、悔しいことに、わが徳島県の名と位置を正しく言える人はなんと四割程度。「日本地図、見たことあるんで?」と言いたかった。
近い大阪でこれだから、東京や東北では今でももっと知られていないかも。しかし珍しく今年の春に一躍、全国版・トップニュースになったことがある。吉野川の可動堰問題だ。
江戸時代から二百年も働いてきた「第十の堰」。これを取り壊し、一千億円以上かけて鉄とコンクリート製「可動堰」をつくる計画が県民をゆさぶってきた。推進派は、主に「150年に一度の洪水に備えて」と言う。付近住民の生命と財産を守るため、と言う。建設省のPR文書でも、洪水の怖さを強調するものが目についた。「助けて〜と最後の声を残しておばあさんは濁流に消えていった…」といった感じだ。もちろん昔は吉野川も暴れ川で、田畑・家屋・住民に多大の損害を与えたことだろう。しかし今では上流にダムもできて、水不足に悩まされることがあっても、大洪水を「迫りくる危機」と考える人は、ごく少ない。
壮大なムダ遣いをして自然を壊すなんてとんでもない、シジミや鮎や河口の動植物を痛めつけるヘドロ川にしてはならない、という声が圧倒的多数だ。老朽化には補修強化で対応すればよい、と思うのが道理だ。そんなに危ないのなら今すぐ補強工事をしてよ、と思うのが当然。なのになぜか、不要不急の「金食い工事」をやりたがる。
その是非を問う徳島市住民投票では周知のとおり、90%以上が反対と出た。予想どおりの結果だったが、その道のりは険しかった。「住民投票はするが可動堰は推進」という公明党が、投票率50%を越えないと開票せずと言い出したからだ。住民投票を求めて活動してきた市民団体は、その陰湿な妨害意図を感じ憤ったが、市議会でキャスティングボートを握られていたため、共産党なども大きく譲歩、ようやく実現したものだ。難産だった。
いま建設省は、元大臣の逮捕などもあり大いに揺れている。自民党・亀井静香政調会長の静かな一言「中止もありうる大型工事総点検」が徳島にも波紋を広げた。可動堰中止が決まれば、またきっと徳島県人の意気が全国に流れるはずだ。
鳴門の渦とワカメと鯛、刺身や焼酎に重宝なスダチ、近頃は徳島ラーメンも…。でも、そればかりが阿波名物じゃないんだよ、って。そうそう、僕らも踊る「阿波踊り」は、いよいよ12日から四日間。夏はやっぱりこれが一番か?
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その後、可動堰を推進してきた圓藤知事が収賄で逮捕され辞任。続く知事選で、革新系の大田正さんが当選しました。
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その後、一年たらずで自公連合に敗れはしましたが、「汚職問題調査団」など県政改革のいい芽が残りました。
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「しんぶん赤旗」を読んだ元俳優座のベテラン女優・中村美代子さんから感想と激励のハガキをいただきました。