ユウチョーでない話 2001・6・7 徳島新聞 

 

 

「三平ちゃん」という友人がいる(本名=榧野(かやの)明)。彼は、舞台道具専門のトラック運転手で、越路吹雪さんや宇野重吉さんにかわいがられた。特に宇野さんは、しょっちゅう「三平号」に同乗し旅公演をしていた。

 

全国の演劇鑑賞会やプロ劇団で、彼の、ニキビ面のまま大人になったような浅黒い顔を知らない人は、ほとんどいないだろう。また、彼が全国津々浦々の異なる郵便局で毎日!貯金をしていることも、よく知っていることだろう。

 

6月7日だと607円、12月31日は1231円というやり方だ。徳島県内でも簡易郵便局まで足を運んでいる。その子供名義の通帳は、彼らが成人したときにプレゼントしたそうだ。ほほえましいエピソードだ。彼ほど、郵便局を利用している人はそういないと思う。

 

ただ、日替わり貯金ができるのは、郵貯だからこそだ。郵便局は、辺地や離島まで網羅して全国すべての市町村にある。これは世界に誇れる貴重な国民共有の財産だと思う。

 

貯金も配達も保険も含めて、これほど身近で便利で安全確実な金融機関や宅配会社は無い。Eメールの普及で手紙やはがきが減ったとはいえ、一日平均の郵便配達は3千万通も。大手のクロネコヤマトでさえ20万ほどというから、郵便局の役割は抜群に大きい。

 

だのに小泉首相は、何年も前から「株式会社にして最も大きな売却益が出るのは郵政3事業だ。民営化しよう」と言い続けている。首相になってからは特に、「期待感による」支持率の高さから持論の郵政民営化に自信を深めているようにみえる。全国銀行協会も、「郵便貯金がなければもっと預金が集まる」と歓迎している。それは至極当然だし、「大蔵族」の小泉さんがそう主張するのも理解はできる。しかし、私は反対だ。

 

国民があまり知らない間に郵政省は無くなった。今の総務省・郵政事業庁も2003年には「郵政公社」になるという。その後は、「国鉄発・JR着」と同じレールを走るのだろうか。

 

郵政公社から「UK」とかいう民間会社にでもなれば全国一律の安い料金制は崩れるだろうし、国民の貯蓄も株式市場に流されリスクが大きくなるのだ。郵貯は優貯と、悠長には構えておれないよ、三平ちゃん。

 

 

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