三割は一流の証明? 20032・15 徳島新聞夕刊 

 

 

子供のころから大相撲とプロ野球の大ファンだった。電器店や友達の家で、栃若の優勝争いに興奮の日々。手に汗握る、という高揚気分はあの時に初めて体験した気がする。野球の方は、今でこそアンチ巨人でも当時は「猫や杓子」の一員で川上ジャイアンツ一辺倒。試験勉強中もラジオのナイター中継にかじりつき、昼間しかなかった日本シリーズでは授業中に携帯ラジオとイヤホンのお世話になった。打率三割の名打者がごろごろしていたよき時代…。

 

私なんか草野球でもなかなか三割を維持できなかったのに、話は飛んでイチローはすごい。だから今度注目されるのは、ヤンキース入りした松井だ。ホームランをどれだけ打てるかに関心が集まっているようだが、私が注目しているのは「三割」だ。内角打ちで一流を証明してほしい。

 

枕が長くなったが…一流とは思えない小泉内閣も「三割」を狙っている。支持率なら許せても、健康保険改悪は絶対ダメ。国保はとっくに三割負担にされ、見る見るうちに大幅な受診抑制が進んだ。これが、もっと弱者である老人の場合はさらに深刻。昨年10月に二割負担になったとたん、例えば年間11万人が受けている呼吸不全や心不全の「在宅酸素療法」では、自己負担が十倍にも上がった。在宅で酸素吸入ができれば生活がしやすくなり寿命も伸びるのが明らかなのに、収入の少ないお年寄りの多くがこの療法をあきらめて命を縮めている。現実を見れば、以前よく流布した「病院は老人の社交場」といった類の悪宣伝など恥ずべきことと思う。

 

酷い痛みに耐える老人の次は、サラリーマンがターゲットだ。ただでさえタダ働き(サービス残業)が多く、賃金カットやリストラ解雇が待ちうけ、セクハラやパワハラ(上司などからの嫌がらせ)にまみれる現役世代は、半健康人の率がかなり高い。これも「三割」は固いだろう。つい最近も私の若い友人が肝硬変になった。私ならきっと酒の飲みすぎ・運動不足と女房さえ同情してくれないかも知れないが、酒を飲まない彼なんか、主原因は過労とストレスに違いない。

 

こうして現代では、いつ病院とお近づきになるかも知れないのだ。誰だって好き好んで病院通いなどしない。だからこそ、ちょっとした変調に気付いた時に気軽に診療してもらうのが大切だし、軽症で治癒させるほど長期患者も減少して医療費も少なくなるのは、医師会だけでなく子供でもわかる。

 

イチローと違い松井にはイチマツの不安があるが、医療費負担だけはせめて新庄なみに抑えて欲しい心情…。手に汗握って「三割」には反対したい。

 

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