冷淡化と温暖化 2002・1・21 徳島新聞 

 

 

幾度かの結婚式の祝辞の中で、われながら気に入った「結び」はこうだ。「新居を訪ねたときは、ぜひ温かい笑顔と冷たいビールを出してください。間違っても、温かいビールと冷たい笑顔は出さないように」。

 

温かくあるべきものと冷たいほどよいものとを間違ってはいけない。いつだって人の心や政治は温かくあるべきだと思う。ところが、いつのころからかそれが逆方向に進んできたように感じるのだ。阪神・淡路大震災から七年経ったが、地元新聞のアンケートで「復興いまだし」というのが七割もある。

 

華やかなイルミネーションとは裏腹に、「取り残されている部分が多い」ということだろう。被災者に冷たい県政市政への不満や恨みの声が聞こえる。「復興住宅で暮らす年寄りが次々死んでいるのに、行政はウンともスンともいわへん。知事も市長もほんまに薄情や…」。

 

苦境に追い討ちをかけているのが「小泉不況」だ。失業率は神戸がダントツだが、全国でもバタバタ倒産し失業者があふれてきた。それでも首相は、「不良債権」の処理など構造改革が進んできたからで喜ばしい、という認識なのだ。それを支持している人もまた七割いるのが私には不思議でならない。弱い他人は切り捨てていい、自分だけは痛みに耐えられるとでも思っているのだろうか。

 

どうも歴史の流れがチグハグだ。政治の冷淡化が進む一方で、皮肉にも地球は温暖化しているのだ。氷河期も困るが、いま差し迫っているのが温暖化現象。確かに「冬」が昔より暖かくなっている。子供たちは水溜りが凍った所をわざとバリバリ踏みながら通学したし、軒先のツララを折っては遊んだ。300年前の12月の赤穂浪士の討ち入りテロも、140年前の3月の井伊大老暗殺テロも、66年前の2月クーデター事件も大雪だった(ようだ)。

 

話がそれたが、地球温暖化とは、二酸化炭素などの「温室効果ガス」による気温上昇のこと。排出量が世界で一位・二位の日米両国の態度が世界で問題になっており、いまの進行状況では今後100年で地球の平均気温が6度上がり、陸と海の氷が溶け続けて水没する島国が出るとか。「国ごと難民」を生み、生態系の異変でかなりの生物が絶滅し、洪水や干ばつで深刻な食料不足を招き、熱射病やアレルギー症も激増するという。われ関せず、と放置していては子孫に悪いヨ。

 

英知をもってなすべき施策が「おざなり」で、地球や人への思いやりという基本的な視点が「なおざり」にされている気がしてならない昨今。

 

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