大人の年齢 2000.6.19 徳島新聞夕刊「視点」
自分でも信じられない気がするのだが、私が初めてビールとやらを口にしたのは、なんと高校卒業式の夜だった。けっこう放任主義の子煩悩だった父なのに、酒・タバコに関しては「ハタチになるまでイカン!」と結構うるさかったからかもしれない。
おかげでノン・アルコールとノー・スモーキングの高校生活だったけど、決して琥珀色や灰色でなかったのは、「未成年」の楽しみがいっぱいあったからだろう。それでも、卒業式の夜、父が「一杯飲め」とビールをついでくれたのを、はっきり覚えている。まだ18歳ながら、ちょっと「大人」の気分になったものだ。あの一杯が今の「いっぱい!」につながったと思うと楽しく懐かしい。
一杯のビールで大人の気分はひととき味わったものの、あのころは、まったく「政治」などには無知で「子供」だったと思う。その後、徐々に社会の仕組みや動きに関心を抱くにつれて、なぜ「大人」はハタチからなんだろうと、時々思うようになった。
オトナになる昔の儀式「元服」が11〜17歳だったのだから、現代の成人年齢がハタチというのは根拠が薄い。まして今は18歳だと納税義務があるし、自分の意志で結婚もできるのだから、その年齢で選挙権があっても不思議ではなかろう。
国会図書館が調べた168カ国のうち、90%近くが「18歳かそれ以下の選挙権」を実施しているそうだ。誰しも「成長」するにつれ、自分の生き方や死に方を誰かにどこかで勝手に決められるのは、「未成年」でも、もう納得できまい。世界史的にみても、そんな時代は終わっている。
昨今、大きな問題になっている未成年の凶悪犯罪についても、「18歳選挙権」とセットで、時代遅れの「少年法」を改正することから対処したらどうだろう。当面は18歳から社会を構成する「大人」として扱い、権利と義務を明確にすればいい。参政権拡大とあわせて、10代の犯罪でも相応の刑事責任を負うことにするのだ。これなら、すべての政党が合意できるに違いない。それが実現すれば私などは、「少年犯罪に厳罰」ということより、悪政への「18歳の抵抗」の方が、とても楽しみになるのだが…。
しかし、とりあえずは、いま貴重な「大人の証し」である選挙権を持つ者が、賢明にその権利を行使しなければならない。国の未来を担う「未成年」たちのためにも、これ以上の税金ムダ使い工事や、公約抜き消費税アップに私も反対を続けよう。最も近い国政選挙は、いよいよ25日。ン10代の責任は重大だ。