オレオレ詐欺 2003.11.25掲載 徳島新聞
我ながら「天才だ!」と思った。 小学一年生の頃だったか、「カバ」を繰り返していたら「ばか、ばか」と聞こえてくるのに気付いたのだ。 こういう「大発見」を繰り返しながら、「天才・神童」もほとんどが「ただの人」になっていくのだろう。
「オレオレ」を「レオレオ」と聞き違えても実害は無いが、その電話を息子や孫の声と思い込んだら、とんでもないカモになるかも。 流行語大賞になりそうな「オレオレ詐欺」とかの被害がますます広がっている。 主として独り暮らしの高齢者がターゲットだ。
ある日突然の電話。「ばあちゃん、オレオレ」。 とっさにはわからないが聞き覚えのあるような気がして、遠く離れて住んでいる数人の孫の顔が浮かぶ。 切羽詰った声なので、何事かと思う。ここで「○○かい?」とでも言おうものなら、半分ひっかかったようなもの。
「そう、○○。実はね、ばあちゃん、オレ、事故やってね」と驚かせる。 「うん、怪我は無かったんだけど、相手の車を壊してね、それが暴力団なんだ。明日までに130万払わないと何をされるかわからないんだ」とたたみかけ、そこで泣きそうな声になって「ばあちゃん、助けて。130万円貸して」と懇願。 この後、振込先をメモさせて送金を急がせる。 「親父やおふくろには内緒にしといてね」などと付け加えるのも忘れない。これで、一丁あがりだ。
この詐欺にはさまざまな応用篇があって、オレでなく私や僕を名乗ったり、無心の口実も「保証人問題」であったり、「中絶費用」だったりする。 たいていが複数犯で、「監禁・誘拐」を装うケースまで出ているから悪質だ。
徳島でも今年10月までに、このサギ被害が13件、1500万円。全国では3800件、22億円というから相当なもの。
サギをカラスと言いくるめるような口巧者で、演技上手な知能犯だから、決して「騙される方が悪い」なんて言えない。 「定期解約・即送金」を不審に思った金融機関窓口の機転で、未遂に終わらせたものも何件か報道されている。
「本当に孫だったら可哀想だから、騙されてもいいから送ってやって」と困らせるお年寄りもいたと聞くと、その「無償の愛」が切なくて涙が出そうになる。
そして、印鑑・壺・多宝塔の霊感商法や、寝具などの催眠商法に対するのと同じような怒りを覚えるのだ。 不安感や善意を食い物にするのは許せない。
ところで私は、「その時」はこう答えようと心の準備をしている。レオレオ、レオレオと聞こえるので、「森本さん?」と。