オモイヤリ 2000・02・07 徳島新聞
「イチローよ、お前もか」と、ちょっと爽やかな印象が薄れたが、どうして彼らは、あれほど豪勢な家を造るのだろうか?
高校生の頃から「城を築く」願望を持っていた友人も少しはいたけど、あんまり欲の無い私には理解できない。
「起きて半畳、寝て一畳」という言葉が好きだから、寝室や浴室が10いくつといった御殿や御邸宅にはあきれる思いだ。
しかしまあ、自分で稼いだ金をどう使おうと自由だから、どうぞご勝手にという感じ。
しかし、こればかりは税金の浪費だけに見過ごせない。 駐留米軍のために政府が建築する住宅だ。
必要以上の寝室や浴室に加えて、もちろん広いプール付き。
そればかりかゴルフ場などのレクリエーション施設やショッピングセンターまで至れり尽くせりだ。
日米安保条約による地位協定に基づき、全国各地にある米軍基地は、
その施設借り上げ料や補償費用だけを日本が負担すると定められていたものの、
それ以外の、基地で働く日本人の労務費や米軍関係の水道光熱費、訓練での移動費は米国負担と決まっていた。
それが今では、100%丸抱えなのだ。「金、丸抱え」もそのはず、これを始めたのは、当時の防衛庁長官「金丸」さんだった。
今とは逆に、円高・ドル安と基地経費の増大に呻吟していたアメリカをおもんばかった彼の一声。
「条約にも反して道理のないことかもしれないが、思いやりですよ、思いやり」。 それは、22年前のことだった。
その後、「仏の顔も三度」どころか、いくたびかの協定協議でどんどん膨張を続けてきた「思いやり予算」は、
来年度には3千億円近く、当初の62億円の47倍とか。
現協定が来年3月で期限切れになるため、改定協議が本格化しようとしている今、ここらできっぱり廃止すべきではないか。
ただでさえ、大不況・税収激減で世界一の借金国(4人家族で2千万円)になった日本と、貧富の差が増大しつつも空前の好況を続けている米国だ。思いやってもらいたいのは、むしろこちらでは、と言いたくなる。
でも、よほど毅然としないとズルズルと押し切られるだろう。
10日前に15分だけ時間を取ってもらった河野外相・クリントン会談では、「思いやり予算」を話題にしたものの一蹴されている。
大統領に打診・進言と報道されたが、帰国した外相はそれを否定し、
「安保条約の重要性はよく認識しており、経費削減はムリャムニャ…」と閣議で報告。 煮え切らない。 カッコ悪い。
本来、ほとんどの人は「思いやり」という言葉が好きで、大切に思っている。私だって人後に落ちない。
でも、米軍駐留経費だけは、私の耳にはどうしても、「重い槍」と聞こえる。 (修)