饅頭は恐くないが 2002.7.徳島新聞夕刊
浦島太郎の歌だったっけ? 「帰ってみればコワイカニ〜」というフレーズがある。子供たちは、巨大な「恐い蟹」を想像しながら声を張り上げながら歌ったものだ。昔はあかりが暗かったこともあり、私も幼少の頃は並みの恐がりやだった。しかし、大人になるにつれ「達観」した。「どんな怪奇現象にもきっと原因があるサ」「原因不明の現象は、まだ説明がつくまでに科学や物理学が進歩してないだけ」とひとりごち、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」などとつぶやき、「恨めしや〜」って「裏の食堂かい?」なんてせせら笑うほどになった。幽霊や妖怪変化は存在せず、それらは恐らく弱者の復仇願望や民衆の徳育奨励から生まれたものだろう。ということで、私にはいま「山の神」はもとより恐いものは無い。
と言い切って、ふと思った。待てよ、そうだ人間だ、人間が一番恐いに違いないゾ。野生の猛獣も飢えた時以外に殺りくはしない。だのに人間は、侵略戦争のみならず保険金目当てや鬱憤のはけ口としてでさえ、人を傷つけ殺すではないか。そんな目で新聞を見たら恐いものが有るわ有るわ。
イスラエル兵士が石を投げたパレスチナ難民の6才の少年を射殺、には憤激。米国高官の小型核兵器開発・先制使用明言にもゾゾ〜ッ。さすがに、来る8月9日の長崎平和宣言でも初めてアメリカを名指しで批判するようだ。当然だろう。
キナ臭さでいえば、有事立法も恐い。廃案を望む。この悪法を推進する中心省庁による個人情報リスト作成はプライバシーを踏みにじったが、インターネットでの情報流出も負けていない。京都・宇治市では21万人分もの住民票データ流出があった。住民基本台帳を国家が一元管理するネットワーク・システムの始動も近い。便利なこともあるが、不気味ではある。
要注意の動きは多い。注意しようが無くて誰もが巻き込まれる恐れのある航空機事故、手をこまねくしかない一触即発のインド・パキスタン情勢、と恐怖目白押し。韓国と北朝鮮艦艇の銃砲撃戦には、恐さとともに、失望を感じたものだ。二年前に、金大統領・金総書記(二人の金さん)のにこやかな会談に賞賛と期待の拍手を送ったばかりなのに、また軍人が元気づき南北の平和的統一は夢の夢。品の無い悪罵・デマ・誹謗中傷などには辟易する。「遠山の金さん」の名裁きは所詮TVドラマの中だけか…。
異常気象や食中毒、国民一人当たり500万円近い日本の負債、輸入野菜の残留農薬、歩きタバコ…恐いものを羅列してたら空想癖が頭をもたげた。「頭が二つあるヒトラー」や「塩に強いナメクジ」がいたら恐いよ〜。「足のある蛇」もかなり恐いよ〜。おっと、これは蛇足。