クーベルタンも嘆く1999.2.6徳島新聞 

 

 

 オリンピックを誘致するときもやはり、♪こっちの水は甘いぞ〜なんて歌うのだろうか。その地が、ソルトレーク(しょっぱい湖?)シティーというのが、何とも皮肉だ。いま、伝統ある「スポーツと平和の祭典」が揺れている…。

 

 夏冬五輪の開催都市決定など絶大な権限をもつIOC(国際オリンピック委員会)の不祥事・腐敗を見ていると「スポーツ金まみれ」という意味で、「サッカーくじ」に類する不快感を持つのだ。スポーツというものはすべからく、フェアプレー精神、さわやかさが持ち味で、あくどさとは無縁であってほしい。そこに少しでも邪心やズルさを感じたら、たちまち興ざめするもの。

 

 思えば、幼いころからの巨人ファンだった私をアンチにしたのが、ずいぶん前の「江川入団」での密約や謀議だった。だから、観客に爽快感を与えるイチロー人気の高さや、昨年の大リーグでのホームラン競争の興奮ぶりは、とても納得できるのだ。

 

 政治家や官僚の汚職、近いところで、徳島市職員の互助会や体育公社事件などの醜悪さには、好きな酒もまずくなる。スポーツの世界だけは、そういった打算とは無縁のものであってほしいと願うのは、至極当然のことだろう。

 

 だのに、オリンピックよ、お前もか、というのはちょっと辛い。先のソルトレークシティ(2002年冬)大会の招致活動も汚い金にまみれていた。開催地競争に勝つために一億円の買収資金が使われたとか。その中味も金品贈与だけでなく、ぜいたくな観光ツアー接待から息子の就職あっせんや学費援助、生活費と多岐にわたる。IOC委員の一割が追放などの処分を受けたのだが、その中には、東京五輪で日本を破ったにっくき(でもなかった)柔道家の名もあった。

 

 それにまして残念なのは、まだ感動を覚えている長野冬季五輪も調査対象になったということ。立候補した10年前から開催決定までの二年間で20億も使ったとか。高級温泉や料亭での芸者つき宴会など過剰接待も明らかにされた。

 

 五輪景気への期待は分からないこともないが、そんなにしてまで誘致せずとも…というのが、私などの正直な気持ちだ。視察委員の多くは長野市内でのオリンピックセンター見学程度だったというから、厚顔無恥な委員は少数派だったようだが、たとえ一部であってもIOCって「お・い・し・い」役職なのだと思われる。ここは、今回処分される委員の多くの選出に関わったサマランチ会長も責を負い、正しく身を処すべきだろう。

 

 ぜひともクリーンさを取り戻して、オリンピック精神「ゴリンじゅう」なんてことは絶対にさけてほしい。

 

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