後生ウイルス恐るべし 2003・4・22 徳島新聞 

 

 

 「新型コロナ」という文字を見たとき、「おっ、やり手のゴーンさんが今度はライバル会社の名車を復活させたか」と一瞬思った。その後にウイルスが付いているのがすぐ分かったけれど…。電子顕微鏡で見るとそのウイルスには太陽のような突起があり、そして突然変異的な新種だから、そう命名されたとか。

 

 新型コロナウイルスを主原因とする新型肺炎(SARS)が、中国や東南アジアを中心に大流行している。古い流行歌なら無害だが、最近の「上海帰りの○○」は本人も周囲も要注意らしい。感染地域からの旅行帰りの人で、一週間くらいたって38度以上の高熱が出て、悪寒、頭痛、だるさが消えなければSARSの疑いあり、だって。私のように海外帰りでなければ、働きすぎ?と遅めの「智恵熱」かもしれないが。

 

 いや、冗談なんか言っていられない。世界保健機関(WHO)の調べでは、すでに十数カ国で三千名以上の患者が見つかり、死亡者が5%にものぼるそう。消費税もびっくりの高率なのだ。消費税同様、国の経済に与える影響も、素人が考える以上に深刻らしい。

 

シンガポールや香港への来訪者が半減したように、各国の旅行会社はイラク戦争に続く大打撃。もちろん観光産業だけでなく、取引先を回れなくて商談もはかどらないのだから、中国などに生産拠点の多いわが国の企業も大変だろう。すでに、国民総生産(GDP)の成長率予測を大きく下方修正した国がいくつもある。いま景気がいいのは、特定の国の軍需産業くらいかもしれない。

 

 新種ウイルスの予期せぬ猛威というが、それってひょっとしたら人類自身が生み出したのではないかと、私にはそう思えてしかたない。狂牛病(BSE)もそうだが、経済効率と高利潤を追い求めて次々と新たな「化学的薬餌」を動物に与え続けた結果、より進化した、より強いウイルスが生まれているのではないかと。私は男でも、老婆心からそう思う。ここ30年で30以上の新しい感染症が発見されている、なんて聞くと不気味ではないか。

 

 対SARSの検疫体制や、抗ワクチン開発、治療法の確立には、数ヶ月とか数年とか掛かるらしいので、これ以上かからず広げないためには、当面はベトナムでの早期沈静化という経験を学ばねばならない。現地で日本の援助チームも活躍したそうなので期待したい。そしてこのまま収まれば、私財をなげうって厚労省に功労賞を差し上げよう。

 

 とふと思ったが、今月から健康保険が改悪されたので、やめた。

 

目次へ戻る  表紙へ戻る