ケイソツ? 1999.9.16 徳島新聞夕刊「視点」 

 

 

 「まさか」とは思わず、「またか」と思った。各地警察の不祥事や犯罪が連日報道されている。警視庁での痴漢、京都府警での覚せい剤汚染など、多種多様だ。

 中でも、神奈川県警は深刻さでダントツ。川崎署で、酒に酔っての無券乗車をとがめられ車掌らに暴行。相模原南署では、押収した写真ネガに写っていた女子大生に買取と関係強要…。

 さらにひどいのが、厚木署での集団暴行事件だ。これは、今年の春、警ら隊の分隊長らが、部下に手錠をかけて殴ったり蹴ったり、下着を脱がせて体毛をライターで焼き、写真を撮ったりしたというもの。聞くだけでもおぞましい。被害者の警官の怒りや屈辱感はいかばかりか。

秘密裏に停職や減給という甘い処分で済ませようとしたのが、マスコミにもれて大きな問題となったものだ。事件そのものを隠ぺいしようとしただけではなく、明るみに出てからの対応のひどさが、火に油を注ぐことになった。

記者会見での本部長の説明が「ウソ」により二転三転。不信感を増幅し、大混乱の様相だ。七百本を越える抗議電話が集中し、日常業務(犯罪捜査や交通取り締まり)にも支障をきたすほどという。

刑事罰に相当する卑劣な行為を厳しく処断するのはなく、ウソをついてまでかばい隠そうとしたのだから罪が重い。これは「身内思い」というよりは、たぶん上層部の管理責任を問われることを恐れての軽率な糊塗策だったのだ。

神奈川県警は、その昔、特高警察がばっこしたころには「カナトク」の高名を馳せたとか。という年配の知人の言を、さもありなん、と聞いた。

「カナトク」が、神奈川と徳島の意味でないのにホッとするが、こうまで警察犯罪が多くの県で繰り返されるのは、戦後の「民主警察」理念と程遠い旧軍隊的な体質(上司への絶対服従、人権軽視の階級社会)が、今も広く根強く残っているからではないか。

だとすれば、利己・保身を図り責任逃れをする上層部への不平不満が、一般の真面目な正義感や使命感を持った警官の間にも多くうっ積しているはずだ。一連の事件が白日のもとにさらされたのは、おそらく、そういう不満と無念の思いからの「内部告発」があったからに違いない。

今後、浮かばれない彼らが、正論も異論も申し立てできる制度や、第三者による批判と監視のシステムが、どうしても必要だろう。

国民から強権をゆだねられ正義の味方であるべき警察は、いつだって「ケイソツだった」ではすまないのだから。

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2004年の春は、「捜査報償費」の流用が問題になっています。どこまで続くぬかるみぞ。

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