輝く新市長 2002.11.30徳島新聞夕刊 

 

「兵庫」国体の混合マラソンに男女二人の坊さんが出場しました。さて、どちらが早かったでしょう? こんなナゾナゾがあったとしたら、答は「尼が先」。

 

しょうもないマクラで申し訳ないが、主題は尼崎でのすばらしい女性パワーのこと。二週間ほど前の尼崎市長選で、全国最年少・42歳の女性がみごとに当選した。新市長は、新聞の写真や短い記事だけからでも、さっそう・さわやか・才色兼備ぶりがストレートに伝わってくるほどだから、かなり魅力的な人なのだろう。周囲の友人の多くが「きっと私だって彼女に投票したよ」なんて口にするくらいなので、今の市民感覚に合致していたのだと思う。

 

悪友たちの素人政治談義を聞くにつけ、どの選挙でも候補者には政治家としての資質はもちろん、大衆的な魅力をかなり必要とされることを改めて感じた。俗っぽく言えば「タマ」の良し悪しだ。玉石混交の首長の中で新市長の彼女は、一段と輝いている。スチュワーデス=当節言うところのフライトアテンダントとして働いた後、人材育成コンサルタントや市議二期を努めた。そういう中で、尼崎っ子の正義の血潮が騒ぎ、市政変革のために出馬したようだ。その意気と公約や良し。ムダなダムや「兵庫国体」での百億円プール見直し、女性幹部の登用、天下り廃止、国保料引き下げなどは、多くの市民が熱望し賛同することだ。市長の高額退職金を「職員規定」水準に変え八割カットすることも好感を持たれた。

 

ところで先に女性パワーと書いたが、正確には「市民パワー・無党派パワー」とすべきだろう。自覚的な支援グループや勝手連的な有志市民が大きな力を発揮したのだから。なにせ、既製政党で支援に回ったのは共産党だけ。対する75歳現職には自民・公明・民主・自由・保守の、いつもながらの五党相乗りで、前回参議院選挙での得票数では、なんと1対6。共産党と多くの無党派市民との協力・共同なくしては、とても勝ち目はなかった。圧倒的優位だったはずだけに負けた側は、ガ〜ン!ショック!で、特に公明党は幹事長の地盤だったため顔色なしだ。

 

国会などを見てると、この国はいつまでも変わらない、どんなに生活が苦しくても酷い痛みを強いられても我慢する…と失望しがちだが、常識的な市民感覚が結集すれば政治は変えられることを劇的に示した。

 

先の熊本市長選も同じ様相と結果で、冬の時代の中での小春日和の感。大山鳴動して鼠一匹に終わらず、山よ動け、と願う。

 

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