がんばって県警 2002・10・2 徳島新聞 

 

 

 先日の新聞に徳島県警本部長が頭を下げている写真が載った。職員の不祥事に対しての陳謝で、上司は大変だなとは思ったが、まあしかたない。しかし、そんな不祥事は日常茶飯事とは言わないまでも前代未聞ではないから、私は「他のこと」を期待している。

 

 「圓藤マネー」の流れの解明だ。昨年9月の知事選で二億円使ったそうだから、選挙運動収支報告書に記載されていない「裏のカネ」もかなりのものだろう。夜陰に乗じてか白昼の路上でか県庁内でかは知らないが、多数の県議や首長が「圓藤マネー」受け取りを認めたと、先に徳島新聞がスッパ抜いた。春の大スクープには、正義感と良識を備えた記者魂を強烈に感じた。公表に至るまでの地道な取材と揺るぎない自信も見て取れ、快哉を叫ぶ思いだった。

 

 規模こそ違えども、三十年前の米国・ウォーターゲート事件が浮かんだほど。大統領選挙戦にからむ盗聴犯罪を明るみに出したのは二人の記者だ。彼らの記事を引き金に全米を揺るがす大事件となり、史上初めての大統領弾劾に続く最高権力者ニクソンの辞任、政府高官への厳罰に至ったのだった。この世紀の特ダネは、アメリカ民主主義の健在ぶりと共にいつまでも記憶されるだろう。

 

 徳島でも、勇気ある報道が県民有志による二つの告発に結びついた。なかなか受理されなかったものの、このほどようやく県警も重い腰を上げたと聞く。選挙には付き物の必要悪で誰もがやってるからと、軽い気持ちで告白した県議たちは、いま恐らく戦々恐々ではないか。折りしも、徳島新聞では、「資金提供問題のその後」に関する「社会の木鐸」的連載が始まった。それは県庁内に留まらず全県に、タイトルどおりの「波紋」をジリジリ広げている。

 

ここから試されるのが、県民世論の健全さと、県警の姿勢と力だ。二つの告発の行方が気にかかる。複数の被告発者は氏名不詳ながら、そこらの通り魔事件ではない。やりやすい捜査と思う。立件されたら最悪の場合は、県議会の一時的な機能不全もありうるが、この際すべての膿みを出してほしい。臭いものに蓋をしてはいけない。県警がその組織力と捜査能力を発揮し、多くが納得する幕引きをしてほしい。そうすれば、本部長も頭を下げずに胸を張れる。でもまだ捜査は不十分。県議の嫌疑を十分に晴らせるか起訴に至るか、注目!

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★期待に反して、そして予想通りに、20046月、徳島県警はこれらの県議を不起訴にした…。

 

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