弁明のカイなし 2002・3・8徳島新聞夕刊
お金に関する文字のほとんどに「貝」という部首が使われている。
購入の購、財産の財、預貯金、賠償、貧民、貪欲…と貝だらけ。売買の売だって昔は賣だった。
それというのも、昔々は美しく珍しい貝殻が貨幣の役割をしていたからだと、真偽は確かめていないが、子供の頃に教えられて納得した。
時代劇の悪代官や現代の政治家からは賄賂の賄の字を教わった。
よく目にする「貝」付き文字から目が離せないなと最近痛感したのは、衝撃的な「圓」藤知事の収「賄」逮捕劇だ。
代議士元秘書のコンサルタント会社取締役が公共工事受注工作で逮捕されたのは知っていたが、関東地方を舞台にした「口利き」事件が徳島へ飛び火してくるとは予想だにせず、急展開には驚いた。
でも、10日ほど前に浮上した収賄疑惑への知事の弁明には胡散臭さを感じていた。
昨年秋の知事選の前に「カネづる」と会うよう自分の後援会幹部に指示したことや、
県議会で「自分は1年半も会ってない」と虚偽の答弁をしたことが判明して、県民の不信感を募らせていた。
運輸官僚時代に知り合って20年、「エンちゃん」「オーちゃん」と呼び合う仲なのに、
つい昨年の少人数「同窓会」で会った「記憶がありません」なんていうのにも片腹痛い思いだった。
「口利き人」と最近口を利いた覚えがないなんてシャレにもならない。
最初の報道のころから私の賢明な?友人たちは「きっと知事や後援者の逮捕までいくよ」と酒のサカナにしていたが、
無責任ふう論評と予想が見事に当たってしまった。
私たち善良な!庶民にはまったくエンドーい巨額賄賂事件だ。
今日も県内各地で「収賄だ贈賄だ」とワイワイ、井戸端会議が開かれていることだろう。
ただ一部に、政治家は誰でもやっているとか、圓藤さんは運が悪かっただけ、という声があるのはいただけない。
三度もこの知事を選んだ有権者や、彼を支えてきた与党はもっと恥や責任を感じるべきだろう。
貝が腐ったような悪臭を吹き飛ばすため、「天地神明に誓って」の公明正大な検察操作で全容が明らかになることを期待している。
天網恢々粗にしてもらさず、秋霜烈日であらねばならない。
それに続く県民に課せられた大仕事は、真の意味での県政リストラだ(再構築)だ。
次の知事選をその第一歩にしよう。
圓藤さんには、8年5ヶ月のお勤めの間にどこからいくら受け取ったのか、早く記憶を呼び覚まし目も覚ましてほしい。
貝ヘンにかかわる話で変に貝になられては、県民は不快極まる。