日本の面影 2001.7.24 徳島新聞夕刊

 

 

 

10代とか70代以上の人は、キョンキョンこと小泉今日子は知らないかもしれない。

「怪談」の著者としてかなり有名な小泉八雲だって、知名度ではいまやあの小泉さんにかなうまい。

 

首相の超人気タレントぶりをテレビで目にするたびに、私などは、間単に一色にそまることの不気味さを感じてしょうがない。

口を開けば「改革、カイカク」だから、何かを変えようとしているのはよくわかり、そこへの期待感で支持を集めているのだが、

問題は何をどう改革しようとしているのか、「我慢せよ」という痛みは弱者も耐えられる痛みなのか、ということだ。

「欲しがりません、勝つまでは」という戦中の標語や「角を矯めて牛を殺す」ということわざがすぐ浮かぶ。

 

徳島にも数回来演した「ニュースペーパー」という劇団が、さっそく小泉首相を取り上げた。

かつて社会党本部ビルで同党風刺劇をやったほどだから、今のテレビのような「小泉・真紀子」現象への媚びや遠慮が無く、

痛快だ。そっくりさんのものまね演説が爆笑と喝采を取っている。

「野党は、具体的なものが何も見えないと批判する。当たり前じゃないか! 具体的なものがないんだから!」

 

ところで、「小泉さん」を描いた芝居が、来月、県内でも上演される。風間杜夫主演だよ〜。

人気・実力のある彼だが…首相の役ではない。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの主役だ。

来日した1890年から53歳で没するまでの生涯を、愛妻セツとの情愛を中心にユーモアをまじえて描く。

山田太一・作、木村光一・演出。演技派・三田和代や山本亘らの共演陣が光っている。

カイカク、じゃなくカイダンの劇中劇(雪女や耳なし芳一など)もふんだんにあり楽しい。

 

私は数年前に観たが、まれに見る優れた舞台だった。

『日本の面影』というタイトルは、彼の著書「知られざる日本の面影」から取られたもので、

外国に日本の良さを紹介したハーンは、自然の美や細やかな人情が失われつつあることを日本人以上に嘆くのだ。

 

天使や妖精に興味が深かったハーンのことだから、今の日本に生きていたら、日本名をヤクモじゃなく小泉アクマにしたかも…。

いえ、これは、アクマで駄じゃれ。

 

 目次へ戻る   表紙へ戻る