17歳のオルゴール 2001.10.11 徳島新聞

 

 

「御三家コンサート」が人気を呼んでいる。私は橋幸夫・西郷輝彦・舟木一夫をカラオケで歌うことはほとんど無いが、やはりとても懐かしい。「高校三年生」がはやったのは高校二年生のとき。「17才のこの胸に〜」と口ずさんだのは16才だった。

 

そのころはずっと、何度目かの初恋?をしながら草野球に明け暮れていた。後にイチローでなく二浪になった友人もいた。私も生来の暢気さだろう、進路について何の不安も悩みも無く、無頓着だった。最大の関心事は友情と恋愛で、その楽しい日々がいつまでも続くような気がしていた。20才の大学生はかなり大人に見えたし、30才の社会人はみんなオジサンに見えた。まだまだ私は「こども」だったのだ。

 

そのころ、周囲では、障害をもつ同級生をなぜか見かけなった。今、振り返って思うのは、もし級友に障害者がいたらどういう接し方をしただろうか、ということだ。自慢じゃないが、ずっと「心優しい子」だった私なので、決して差別したり偏見を持ったりということはなかっただろう。だけど、やはりどこかに「同情心」を秘めた交友になった気がする…。

 

それが「大人」になるにつれ、さまざまなケースを見聞する中で、関心が深まり問題意識が醸成されてきた。障害者の恋愛や結婚がテーマの映画や演劇にも多く接し、そのたび心を揺さぶられた。昨年、徳島工業高校の演劇鑑賞会で取り上げられた「十七歳のオルゴール」(青年劇場公演)もその一つ。同校の青春真っ只中の生徒、教諭やPTAのみなさんに深い感銘を与えた舞台だったが、残念ながら学校行事ゆえ一般市民は鑑賞できなかった。

 

待てば海路の日よりあり。その作品が、来月1日に徳島県郷土文化会館で再演されることになった。演劇愛好者有志の主催で県や市の教育委員会はじめ多くの団体が後援している。

 

生後三ヶ月で脳性小児まひになった女子高校生が主人公だ。多感な17歳の気持ちをつづった日記が原作になっている。彼女や家族のかっとう、介助ボランティアの優等生や退学寸前の男子生徒らとの交流が描かれ、淡い初恋や夢が語られる。時代や環境、障害の有無を越えて共通する「17才」の胸の内が、ストレートに観客の心に届くのだ。

 

結末を明かすのは邪道だ。でも、この最後のせりふは書きたい。「お母さん、生んでくれてありがとう。…命をありがとう」

 

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