げっこうの夏 1999.8.16徳島新聞「視点」掲載
♪春を愛する人は酒の好きな人、桜の花の下で酒を酌み交わす〜
♪夏を愛する人はビールの好きな人、ビ〜ルの屋上でジョッキを積み上げる〜
♪秋を愛する人はウイスキーの好きな人、酒はアキたといいながらアキ瓶また増えた〜
♪冬を愛する人は焼酎の好きな人、雪見酒とシャレながらアル中でユキだおれ〜
これは「四季の歌」の替え歌で「酒季の歌」。知られざる銘曲だ。入学式や卒業式では歌えないが、飲み会での合唱やカラオケ独唱には使えるだろう。ワインこそ出てこないが、ま、よかろう。アルコール類で特に好きというのは、私にはないからだ。でも、季節でいえば、夏生まれのせいか、暑い夏が好き。
しかし、八月の「ヒロシマ・ナガサキ・敗戦」を体験した人たちにとってはそうはいくまい。言語に絶する辛い過去がよみがえるだろうから…。
どの季節が好きかはどうあれ、やはり夏は、戦前戦中の蛮行や悲劇を思い起こし、未来に向けて不戦・平和への誓いを新たにする季節だと思う。なのに、皮肉にもこの夏の国会では、平和や民主主義をないがしろにする大変な悪法がところてん式に成立した。
昔の首相・吉田茂が「触れるな議論するな」と言い続けたそうな「日の丸・君が代」もあっさり法制化された。与党と周辺議員らは、千載一遇の好機到来と、大量の汗を流したことだろう。このうえは、数千万の人々が涙を流し血を流す時代が来ないことを祈るばかりだ。いや、神仏に祈るだけではなく、今後、怖い法律の群れがキバをむかないよう、良識ある国民的な監視運動を広げてゆかねば、と思う。
この夏、私の周辺にも「自自公」の爆走ぶりに悲憤慷慨している人がかなりいる。まさに「激昂の夏」だ。そういう人ら多くのみなさんに、まもなく上演されるタイムリーで激しい感動の残る舞台を紹介しておこう。
以前、その映画が評判を呼び、こんど作者自らの筆で舞台劇になった。太平洋戦争末期、学徒動員された特攻兵が、生きた証しにと小学校のピアノを弾かせてもらい出撃する。生きて帰れないはずだった若者は、飛行機の故障で引き返した。そして、ここからさらなる悲劇が始まる…。
私もこの作品で初めて知ったのだが、そういう「死にぞこない」を隔離・軟禁する施設があったそうだ。その「振武寮」の秘話や、母たちの慟哭がドラマティックに描かれる。
もうお分かりだろう。この演劇のタイトルは、激昂の夏ならぬ『月光の夏』(劇団東演)。