あの恋を覚えてる

 

 「忘れようとして、忘れられるのは本気じゃなかったんだよ」

 記憶の中に残ってるあの子の言った言葉。

そうなのかな。じゃぁ、あたしはもう忘れてるからきっと本気じゃなかったんだ。

 

 そう思った瞬間、心にチクッと痛みが走った。

 それは、本当に気付かないくらいの痛みだったけど、ガラスの欠片みたいに、

 透明な痛みがいつまでも残った。心にそのまま突き刺さったまま溶けていく痛み。

 

 どんな風に笑ったのかも、本当はまだ覚えてる。

くしゃくしゃにした髪を掻き揚げる仕草が好きだった。

遠い川向こうの景色を、じっと眺めてた後姿が心にまだ焼き付いてる。

側にいてあげれないのなら、 離れてあげるのが優しさなんだと。

何度も自分に言い聞かせてた。泣くのも我慢してさよならも言ってあげた。

 

 ずるいな、元気ない姿見せるなんて。

思い出の中のように笑っていてくれないと駄目だよ。

ずっと、話を聞いていてあげたかった。 

ずっと・・・ずっと・・・いられると思ってたんだ。ほんとはね。

  

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