cogito, ergo sum

 

   ──コギト・エルゴ・スム ──

 何か考え事をし始めた僕の心の中に浮かんでる言葉。

ある哲学者の言葉をラテン語読みした物。どこか不思議なその言葉の響きが

僕の心の奥深くにゆっくりと沈んでいった。 

  「コーギトー・エルゴー・スム  」

正しくはそう発音するらしい。 僕は哲学者ではない。断じてそう言いきれる。

だけど、僕は僕の内にあるいろんな思考を引っ張り出しては錯誤させ、出ては消えていく

答えを打ち消しては、また思考するを繰り返してる。

 そうやって暇な時間を弄んでいた。 

学校と言う大きな社会が、僕ら子供を押しつぶしていく。 教育と言う押し付けが、

僕らを何処かに導いていく。 

 

 図書館に行って、昔の人の思考を紐解くのが好きだ。

とりわけ、もう閲覧室から取り除けられ、司書に問いあわせないと目にする事が出来ない

古書と化した物をパソコン相手に探し出すのが僕の日常の楽しみ。

すぐ、手に届くとこにある物はとりあえず後回し。それが僕の欠点なのかもしれない。

欠点のない人間なんて何処にもいないから、僕は数えればきりのない自分の欠点には目を

つぶってある。 本当は「急がば回れ・・・・」が正しいんだろうけど。

 

 僕が探してるのは、きっともうこの世に形として残ってはいない物なんだろう。

もう記憶の欠片としか残ってない、それを上手く言葉には表せなくなってきた、

夢の中でははっきりと見えてるのに、覚醒するともう欠片でしかない。

     

     そして今日もまた一冊、探し物を見つけた。遠つ国の古文。   

 

     ── 胡蝶の夢 ── 

 誰かが見てる夢なのかもしれないな、覚醒している間の僕の生活なんて。

遠い国言葉で書かれたページをめくりながら思った。

ひらひらと舞う美しい蝶。振り向いた図書館の隅、窓から入りこんだ光の中に乱舞

するその燐紛をふりまきながら、僕を夢に誘い込むように。

「幻?」

いるはずのない蝶の姿を、目では捉えながらも夢うつつな気持ちで立ち尽くす。

青い瑠璃揚羽。 手を伸ばし損ねて、そのまま空に溶け込んでいく。

 遠い現実、誰かの意識の中、僕は行ったり来たりを繰り返す。

   

 

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