─夢くらい─   貘

 

 … … もう僕、お腹いっぱいなんだよ… … だから、ごめんね、君の夢、

  今はもう食べれないんだ。 変だよね、貘のくせに…

 僕が食べないとさ、世界の夢が悪夢だらけになっちゃうんだよね。

 でも、もうお腹いっぱいなんだ。キリがない夢が多すぎてさ、

 休まないと僕、パンクしちゃうよ。

  だから、ごめん。君の分、ちょっと待っててよ。すぐ、お腹空かすから… …

 

 この世の中が、あまりにも悲しい出来事が多すぎるから、せめて夢だけでも、

願い事をかなえて欲しかった。なのに、出てくる事は、昨日あった現実の続き、

繰り返される忘れたい日常。 何故、夢の中までコントロールされなきゃいけない?

せめて、ねぇ…  …

 

 頭に来るような昨日の出来事、悪いのは全部が向こう。そう俺の訳ないじゃないか。

憂さを晴らすために、繰り出す夜の繁華街。何倍酔えば、あいつを忘れれるんだろう。

高い酒も、俺を酔わせてくれやしない。そう、あいつの一言だけを待っている俺を。

 

 なんで、あんな馬鹿な事言っちゃったりしたんだろう。

駄目なのは解ってるのに、お願いだから時間を巻き戻して。

傷つけるつもりなんて、全然なかった。あんな言葉言うつもりなんか。

なんで、こんな事に…? もう一度、名前を呼んでよ。 そしたら、謝るから。

 

真夜中の午前三時。眠れない人の心が泣いてる。誰かに呼びかけてる声が聞こえる。

朝日が昇るまで、あと数時間。世界は沈黙したまま待っている。

夢の中でうずくまってる小さな意識を。

 

   

 

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