透明なペンギン

 

 四角い正方形の中に閉じ込められたペンギン。

もちろん本物のペンギンの訳はなく、よくあるお土産用のために造られた物。

それは、クリスタルで出来た1、5cm四方の正方形。

真上から見ても、何処の方向から見ても透明なペンギンの姿が見える。

 それを見つけたのは、都内の観光地の屋上。

手に取られるのをジッと待っているかのように、そこに存在している。

冷たくない氷のように透明で、じっと握っていると体温さえ帯びてくる。

何度眺めても飽きない美しさに惹かれて、自分用のお土産に。

 

 部屋の中で小さな光を放っている。外からの日差しを浴びて少し七色さえ含んで、

遠い最果ての南極を夢見ているような瞳と羽ばたく事のないその翼。

四角いクリスタルに閉じ込められている物は?

感情のない唯のクリスタルって解ってはいても。

一瞬光の加減で、透明な翼を広げて消えてしまうのかと思った。

 帰れないペンギンを象ったクリスタルと、帰れる場所を探している自分がだぶった。




 



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