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If…
誰に対しても…優しいのは残酷な事なんだよ。 時間の流れは誰の上にでも、平等に過ぎていく。 だから時間は残酷で綺麗なんだよ。 どんな傷跡だって治してくれる、不思議な特効薬、それが時間。 去る者は追わず来る者は拒まず、それは優しさじゃないよ、勘違いしないで。 真実はいつだって心の中にしまったままで封印されていくだけ。 別れを重ねる毎に、心の奥の引き出しの数が増えていく。 上手く表現出来ない自分の不器用さに、唇を噛む回数が重なる。
「あのね」 「何? 」 「これ、部屋から出てきたから」 そう言って、差し出したのは二人で行った海辺の写真。 誰の姿も捉えていない一枚の風景写真。泣けるような青い空と深い何処までも続く海が あの日の二人を知っている。写真の中に閉じ込められてるのは風景だけじゃない事も。 「あっ、これ」 砂浜の影に重なるシャッターを押したあの日の影が重なっていた。 唯、それだけなのに涙が出てきた。 それは唯の感傷、重荷に感じる想いじゃないから。 「切り取られちゃったね」 最後に見せる少し歪んだ笑顔があなたらしかった。
言葉少なに過ぎていくだけの束の間。 もう二度とこんな時間を共有する事はなくなるんだ。 そう思ったら少しだけ胸が痛んだ。奥の方がヒリヒリと焼け付いた。 「じゃっまたね」 「そうだね」 いつか…なんて、約束は叶えられた事はない。でも…。
心の何処かに── If ──を残して。 |