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ある独白
『 開けてもナニモ入ってないと、解っていても人は秘密を知りたがる。 知らないままでいた方がイイ事だってあるのにね。 あなたの過去に何かが起こって、その何かがあなたを縛りつけているとしたら? その何かからあなたを解放してあげたかった。 人の心の奥深くにアル物は、誰にも触れれないから。 狂気の入った瞳で何を見ているの? 白い壁にもたれて、ズットうずくまったままで。』
誰もいない部屋の中で一人だったんだ。 誰も僕に喋りかけない、言葉を発する事を教えられなかったんだ。 時折誰かが、食べ物と着替えを持ってきてくれる。 入浴も誰かがバス・ルームで静かに洗ってくれた。 でも、僕の周りには音がナイんだ。部屋の中にはベッドだけ。 外は、どこまでも続く砂漠。風の音すら聞こえてこない。 僕は一人、壁にもたれて静かな時間を聞いていた。 知ってる?何も音がナイ世界でも、シーン…って聞こえるはずのない音が 聞こえるんだ。僕が生まれてからズット聞いてたんだ。
言葉を教えられずに育ったから、この世がどんな世界なのか 知らずに僕は大きくなった。これが、大人になると云う事ならね。 無表情な顔で育てられた子供はどんな表情をすればいいのか どうやって学ぶと思う? 声の出し方を知らない子供は、何を喋るの? 何処の国の言葉を喋るのかな? この前、君が読んでくれた本の中にあったよね。 こんな話、もう忘れちゃったかな?確かエジプトの男の子の話。 誰が教えた訳でもないのに、彼が初めて発した言葉は彼の国の言葉だった。 彼の記憶の奥に刻まれていた物は何だったのかな? 生まれてくる前の記憶が、彼に言葉を教えたのか? 僕は、その男の子に聞いてみたくてショウガナインダ。 同じように生きてる僕がいるって事を。
うん、冗談だよ。イヤだな、本気にしたの。 僕が、そんな者ではないって事は君が一番知っているじゃないか。 だから、安心して君は笑っていてよ。僕を安心させてよ。 今、こうしている時が現実だって事を。 |