欠片

  何かに出会って、それがたとえば初めて手に、または目にした物であるのにかかわらず

懐かしいとか思ったりするのは、きっと記憶の片隅の破片が

時折、風に吹かれて見え隠れしたりしてるのかもしれないね。

存在してるその時間の中、もう何度、いいえ、何千回もそんな気持ちになってた。

そのたび、少し幸せで、訳もない焦燥感にかられたり、

何度も絶望のふちに立たされたりを繰り返し。

もう、戻るはずのない時を、何が悲しいのかすらも思い出せないのに。  

 雨が窓を叩く、その水滴の流れ落ちる様子をじっと、瞬きもせず見つめていた。

 「何が面白いの? 」 

 「時間が過ぎていくのを見てるだけ」

答えなど、ありもしないのになんとなくの言葉で返す。

退屈な時間を、ぎゅっと握り締めるかのように、その雨を掴もうとする。

触れる事は出来ても、決して留めておけないものを。

 

  その束の間の刹那を生きていかなきゃね… …   

 

もう、それが誰だったのかも思い出せないのに。

記憶の壁を塗り替えるたびに、何かを失って。

諦めなければ、何だって叶うから。

同じ欠片を見つけるまで。

… … もう、見つけれた? 

 

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