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宇宙の蜃気楼
宇宙の神が溜め息を1つつくたびに ちきゅうに風が吹きました。
宇宙の神が涙を一粒流すたびに 地球に雨がふりました。
宇宙の神が微笑みを浮かべると ちきゅうに光が射してきました。
そして、たくさんの植物が生まれ、歴史は作られていくのです。
それはちいさな星の始まりでしかないけれど
青い透明なその星のために、神様は月を1つそばに浮かべたのです。
地球が淋しがらないように。地球が間違ってしまわないように
これが、宇宙なんだ・・・
目の前に広がるのは、数え切れないほどの光の大洪水だった。
突然、放りだされた空間の中を、フワフワと回りながら、
僕の頭の後ろで起こっている
星の動きが全て目に入ってくるのに驚き、
今にも消えてしまいそうに発光を続ける蛍のともし火のような閃光が幾すじも。
「これは、私があなたの頭の中に映像を送っているのですよ」
たくさんの星が生まれ、消えていく様を僕はスクリーンが流れる
ように見つめ、 自分の手の中で、銀河系が踊るのをつかの間楽しんだ。
疑似体験とでも言えば良いのだろうか。
神の目の位置と表現すればいいのだろうか。
それは、多分ビッグバンからの宇宙の始まりからの記憶なのだろう。
「こうやって、星が生まれて消えていくのですよ」
形のない、優しい感情が心の中に滑り込んでくる。
何に対しての感情なのだろうか、生きとし生ける者全てに
深い感謝すら覚えた。それは人間個々では決して浮かばないであろう
全人類、全宇宙全ての総帥者の視線を感じとっていると言えばいいのか。
「神様…? 」
「また、新しくこの星は生まれ変わるのですから」
地球の最後の日に、僕は夢を見ているのかもしれない。
不思議なくらいに、落ち着いている時間。
もう誰1人残っていないこの星なのに一呼吸するその瞬間にすら、
僕はこの星を愛している事に気付かされる。
無力感を深く思い知らされながら。
どこで人は間違ってしまったのだろう?
分岐点を間違えてしまったのはどの瞬間だったろう?
もう、誰も答えてはくれないけれど。
人々は今は皆、眠っている。繰り返される星の誕生を夢見ながら。
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