| 離れられない理由
海が見たくなったから、電車に飛び乗ってガタガタと揺られる。 空は青く、透明で何もかもが綺麗に見える季節。 誰に会うのも億劫で、つい行きそびれた同窓会。 一番逢いたかった君が来るのも知ってたのにね。 勝手に傷付いたりするのが間違っているんだから、いつまでも気には していてはいけない事を、何度も頭の中で言い聞かす。 私が君に恋をして、勝手に想いを寄せていたとしてもそれは、誰にも 言わない秘密で置いていたかった。 君が連れてるあの娘の事は、私が一番知っているから。 知られちゃいけない恋心、永遠に葬るはずだった想い。
あの日、一緒に歩いたよね、海までのほんの少しの歩道。 君は、あの娘と待ち合わせしてて、日焼けした肌がまぶしかった。 私は、近所に住んでいるから、本当に偶然の出会いだったよね。 初めて並んだ君の背は、私より10CM高くて意外だったな。 照れて笑う顔を横目で見ながら、あの娘の話を聞かせてあげた。 もうすぐ、あの角の向うにあの娘の姿が見えてくるはず。 笑って、手を振って駆けて行く後姿をずっと見ていた夏の午後。
あれから、あの娘と歩く君を何度も見かけた。 あの娘の薬指の銀のリング、光に反射して綺麗だった。 私が誰といても、君には関係のない話だから、すれ違っても知らぬふり。 唯の顔見知りにさえなれないなんてね。 いつも、背中が君を追っていたのは内緒にしておくね。
すっぽかしちゃった同窓会。 優しい笑顔とかすれた声と、困った時に髪の毛をかきあげる仕草。 今も君は、あの日のままで心の中で変わらないけど。 今でも君を好きかと問われても、解らないよとしか答えれないよ。 だって君は遠すぎる、いつも近くにいてくれないから。 私の弱さを包んでくれる海のような人が私は一番好き。 君は私の海になれる自信はある?
だから私は、海が一番好き。泣き言も全部静かに聞いてくれる。 私に話しかけるように何度も打ち寄せてくる波の声。 私の想いが何処にあるのかを、唯一知っているようで。 例え、どんなに遠く離れていても、想いは永遠に色褪せないもの。 だから言えない真実だってある事を。 今だけは、このままで、私に話しかけてきて。 君が遠くの街にいるから、私はここから離れられない。 だって、ここは君の生まれた街だから、いつかまた逢えるかもしれない。 君がこの風景を忘れない限りは、ずっとここにいるから。
言えば良かったのかな?たった一言を。 一度も君に聞かなかったね、君の心の中について。 あの日の自分に後悔してるなんて…情けなくて泣けてくる。 だって君は、私の初恋の人だったから、 ずっとそのままなんだよ。 |