SOMETHING FOUR    

 

知ってる? 結婚式の日に幸せになる花嫁さんが結婚式の時に身に付ける4つのアイテム。               

花嫁は、永遠の幸せを夢見て願いを懸ける。今日も又、幾組かのカップルが幸せの鐘を鳴らす。

先に待っているのは天国か地獄か、それは神のみぞ知ること。

ほら、ここからも見えるのが、あの一組の結婚式。

 

        四つのSomething

SOMETHING OLD(古い物) 

花嫁のベールは嫁ぎ先代々から伝わるレースのベールで作られた物

SOMETHING BOLLOW(借りた物)   

胸の真珠のブローチは、従妹から借りた物

SOMETHING NEW(新しい物) 

白いサテンの靴はおろし立て

そして、最後の一つだけが、まだ身につけてはいなかった。    

SOMETHING BLUE(青い色の物)  

鏡の前に置かれた、そのブルーサファイヤ のピアスをじっと見下ろした。

 

(小さい頃に、このブルーサファイヤに憧れて、母を困らせたもの

だったわ、今こうして手に入れる瞬間が来たのに、結婚式の時には

私のために、好きな形にしてプレゼントしてくれると約束してくれた母

でも、もうその母もこの世にはいない。見せたかったな、このピアスを付ける日を)

 

「コン、コン」

ドアのノックと共に、係りのメイドが時間を知らせに来る。

一通の電報が渡された。

「誰からかしら? 」

───オメデトウ オシアワセニ ハハヨリ ──

「お母さん? 誰かの悪戯なのかしら?」

突然、舞い込んだ一通の電報。ほのかに甘い香りが背後でした。

(この香り、母がよくつけていた薔薇の香りに似てる)

ゆっくりと振り返った時、窓から白い手が揺れていた。

 

「誰? お母さんなの? 待って、行かないで」

急いで、その手が揺れる先に走り出した。ここは、五階の窓の中。

「えっ?、落ちる・・・」

体はフワッと宙に浮かんでいた、ゆっくりと落ちていく落下速度。

(落ちる、助けて、どうして、こんな日に限って・・・)

 

もうすぐ、地面に叩きつけられるだろう、自分を想像した。ぎゅっと目を閉じる。

「まったく、君って人は・・・」

 下敷きになってくれた人の腕の中で、花嫁は座っていた。

どうやらそこは、結婚式場らしかった。 確か、落ちるはずの落下先は中庭のはず・・・。

 

「花嫁が空中から登場だ、今、迎えが行ったはずだけど?」

「白い手の人? 」

「さぁっ、それはどうかは? みんなが待ってる」

周りには、突然現れた花嫁に花のアーチを作って歓迎してくれている。

どうやらレセプションのひとつだととられたようだった。

こんな奇術の仕掛けなんてどこにもありはしないのに。

 

その中を花婿に連れられて、歩き始める花嫁。

白い手がその中から、一輪の薔薇を差し出してくれた。

そっと、その花を花婿の胸のボタンに刺した。

「今の人、誰? 」 「あなたの知り合いじゃないの? 」

「いや、君のお母さんに似てるね、写真で見たけど、それよりさっきはどうやって現れたの?」

「それはね・・・秘密よ。ほら薔薇の香りがする」

花嫁の耳には、小さなブルーサファイヤのピアスが揺れている。

落ちる瞬間に、花嫁は何か違う誰かに包まれていた。

・・・驚かすつもりはなかったの、ごめんなさい。幸せにね・・・

風の中で、声が消えて行った。優しい薔薇の香りの中に。

花嫁の頬を伝う涙の意味を、知っているのはブルーサファイヤだけ。

 

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