許してあげる

 

  最初に逢った時は、あたしはサイファーの事をまだ好きだった。

彼に頼ってる子供のままのあたしがいた。

君を見つけたのはダンス・パーティーの夜だった。

人ごみの中でも、あたしにはすぐ解った。何かが違って見えた。

なんて言うのかな、君の周りだけ空気が違って見えたってのかな。

とにかく、すぐわかったの。あぁっ、あたしは君に逢うのが運命だったんだって。

 学園長を探すのなんて、一人ででも出来る事。サイファーだって探せば

どっかにいたし、他の女の子に聞けば良かった。でも、あの夜君と踊りたかったんだ。

きっと君となら、極上のステップで夢見るようなダンスを。

君の腕の中ならこんなあたしでも、とびっきりのレディに見えるんじゃないかってね。

 ほらね、狙いは当たってたでしょう。回る影絵のようなスゥィング・ダンス。

言葉なんて交わさなくったって、あたしは一目で君に恋をした。

でもね、まさか君の心の中にもう決めた人がいたなんて。

これは計算外だった。だって、相手があの・・・だったなんて。

彼はあたしも認めてる奴だから仕方ないんだよね。

いい奴なんだもの、泣けるけどね、参っちゃったな。

だって、絶対君はあたしを好きになるって言う運命の星の下に生まれてきてたはず。

あたしの勘は外れた事なかったのにな。今まで。

 あたしも、みんなと同じ所で暮らしていたら良かったな。

ふふっ、そしたらあたしの方が絶対君の事を解ってあげれたのに。

あたしのいいとこは、惚れっぽい所と飽きっぽさが同居してるとこ。

だから大丈夫よ。そんな顔してないで、もう行っていいよ。

あたしは唯、こうやって星を見ていたいだけなんだから。



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