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それは暑い夏の日の出来事…忙しいガーデンにも夏休みが訪れた。 ほんの短い休日を楽しもうと、それぞれの計画で賑わうガーデン内。 「ったく…みんな、ウカレテやがんの」 俺は、窓からざわついた雰囲気のそいつらを見ていた。 「いいんじゃないか、みんな楽しそうでさ」 横で、テーブルにひじをついてグラスの氷を…カラン…と涼しげな 音を出しては、ぼんやりと見ていたスコールの声。 「みんなさ、たまには休まなきゃ駄目になっちゃうよ」 「こうやってウカレル事でか?」 「シードだけが、忙しい訳じゃないさ」 この所、たて続けに起こった騒動でガーデン内は苛ついていたから。 少し、疲れたような目でぼんやりとした表情。 「お前はどうするんだ?」 「何が? どうって…」 「休みだよ、まさかずっとここでいるって訳じゃ…」 「サイファーはどうする?俺は、ここにいるよ、なんかダルイんだ」 「疲れが溜まってるんだろう、お前は…無理ばっかりするから」 相変わらず細い、その腕をグイッと引き寄せた。 「熱があるじゃないか、いつから?」 「さぁっ、この所、あんまり寝てなくて」 「俺が、ここにいない間か…?」 昨日、遠い街の実戦から帰ってきたばかりだった。 「忙しかったんだよ、あんたの顔見たらなんか安心しちゃって…さ」 「来いよ、立てるか?俺は、自分の管理が出来ない奴は嫌いだ」 フラッとしたスコールの腰に、手を回して抱き上げる。 そのまま、ベッドまで連れて行って寝かせると大人しくされるままに だるそうな表情で一言。 「靴履いてる、脱がせてよ、サイファー」 甘えたような声に、ちょっとムッとなりながら感情を抑える。 …こいつは、いつだってそうだ、勝手に人の心配ばかりして、 自分の事は、構わないからいつだって… 「サイファー? 何、怒ってるの?」 「別に…さっさと寝ろよ」 「添い寝してくんないの?」 「馬鹿か、そばにいてやるから寝ろよ」 「俺が寝るまで?いてくれんの?」 「ああっ、いるから、さっさと寝ろ」 「じゃぁっ、寝ないで起きてる」 「なっ…!!」 「だって、寝たらあんたいなくなるんだろう」 「スコール…」 俺は、あきれて口も聞けなくなってしまっていたと同時に、 普段は絶対に甘えてきたりしないスコールが、 こんな時に甘えてくれるのが嬉しくもあった。 「お前、淋しかったのか?俺が居ない間」 熱が上がってきたのか、ぼんやりとした目がゆっくりと俺をとらえる。 「逢いたかったよ…サイファー」 「俺もだよ。悪かったな、そばにいなくて」 熱い指の先が、俺の頬に辿りついた。 ゆっくりと引き寄せられて熱いキスを一つ。 「風邪、移っちゃうね」 「いいさ、黙ってろよ、もう、ずっといてやるから」 「うん、寝る。サイファー…」 「なんだ」 「あんたがいてくれて良かったよ、俺に」 「馬鹿言ってないで、寝ろよ、そんな事は元気な時に言ってくれよ」 「なんで?」 ニヤリと笑って、スコールの唇から指を首筋にずらす。 「さあなっ」 「好きだよ、サイファー」 伸ばされた手の先に存在出来て、そばに居れて良かった。 小さな寝息を立て始めるスコールを見ながら、 …こんな休暇もあっていいか… 読みかけていた本を、棚から手に取る。 時折、スコールの顔を見ながら、静かに時間は過ぎていく。
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