| 誕生日
今日くらいはあいつと一日一緒にいてやりたかった。 なのに、何故かこんな日に限って俺は遠い街へ治安維持のため飛ばされてた。 早く、戻らないとあいつの誕生日が終わっちまう。 ぎりぎりの時間まで、引き止められて慌てて俺は電車に飛び乗る。 「昨日の内に帰ってれば良かった。ったく…」 非頃の行いのせいなのか、何かの陰謀なのか。 一人で、ぼやいたところで時間は戻らないし、過ぎていくばかり。 それでも、午前中の内に学園長からの支持通りの任務は終えた。 流れていく景色を、上の空で見ながら俺は時計ばかり気にしてた。 ポケットの中には、あいつのために買った包みが入っている。 それを、掌で確かめながら、俺はぼんやりとあいつの事を考えてた。 今日は、あいつの誕生日。やっと俺と同い年になる事をあいつは喜んでた。 「サイファーの誕生日までのこの数ヶ月の間は同じなんだから、 俺を子供扱いすんなよな」 少し、怒ったような口ぶりでしゃべるスコール。 前髪に指を絡ませながらしゃべる。どう見たって子供ぽく見えてしようが無かった。 そんな事を言われたって苦笑しながら仕方なく 「誰もそんな事してないだろう?」 「そうだけどさ…まっ、もうすぐ同じ年になるんだから」 異常に同じ年ってのに拘っているのが手に取れて可笑しかった。 電車がゆっくりとスピードを落としていく。 もうすぐ、お前のいる街に着くのをアナウンスが告げる。 俺は慌てて、荷物を取り扉が開くのを待っていた。 駅に降り立つと、ベンチにスコールが座ってるのが見えた。 「スコール? なんで時間なんて知らせてなかったのに?」 「おかえり、サイファー」 嬉しそうに立ち上がって、俺の方に歩いてくる。 「あっ…ただいま。暑いのにこんな所で待たなくったって」 「今、来たばかりだから、暑いのには馴れてるし、それに…」 「んっ?」 「一人で寮にいるのも退屈だったから、さっ、帰ろう」 サッサと先を歩き始めるスコール。慌てて俺は追いかける。 誕生日のお祝いの言葉を言いそびれた俺は、切り出す言葉を考えていた。 今は夏休み、ガーデンの寮も一般生徒の一部しか残っていなかった。 寮の俺の部屋に着いた。ドアを開けると夏の蒸せかえる熱気に襲われる。 窓を開けながら、エアコンのスイッチを入れる。 ベッドに腰掛けると、スコールもぎこちなさそうに座った。 「あのさ、これお前にと思って」 ポケットの中から、握り締めていた包みを取り出す。 「誕生日、おめでとう。スコール、遅くなったけど」 「開けていい? 」 小さな箱の中には、普段身に着けていられるようにぺリドットの ペンダント・トップが入っている。小さなクロスの形をしている。 「これって…」 「気に入らないか?」 「いやっ、お前の瞳の色に似てる…って思ったんだ。ありがとう、サイファー」 8月の誕生石、ぺリドット、秘められた言葉は幸福。 なにげなく見ていたら、店の店員に教えられた。 やっと部屋の温度も、落ち着いて涼しくなってきたので、俺は窓を閉めた。 そっとその肩に手を触れた瞬間、ビクッとした反応を示すスコール。 「なんか、ドキドキするな。」 照れたように笑うスコールに、そっと頬にキスを一つ。 「俺もだよ、お前といる時はいつだってそうだった」 吸い込まれそうな瞳を見つめながらどちらからともなく触れる唇。 逢えない時間が増えると、想いはどんどん積み重なっていく。 何処までこの想いは深くなるのか、俺は時々確かめてみたくなる。 俺の想いとスコールの俺への想い、どちらが深いのか 形に出来れば どんなに楽になれるか。この想いを、ぶつけてしまえたら。 どれくらいの想いを抱えているのかを、知ったらお前はどう思うのか。 自分の中の想いに時々どうしようもなくて苦しくなる。 スコール、お前もそうなのか? |
